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チーズひとつで不安になった妊娠期間
――出産おめでとうございます。妊娠中はどんなふうに過ごしていましたか?
西野:ありがとうございます。妊娠中のつわりは軽いほうで、ずっと車酔いみたいな感覚でしたが、仕事をしてるとつわりを忘れられました。それよりも「赤ちゃんがちゃんと育っているか」という不安が常にあって、毎回の検診に早く行きたかったですね。
たとえば食べ物も、ちょっとしたことで不安になってしまって…。チーズがかかっているポテトを食べたときは「あれ、今のはちゃんと加熱処理されたチーズだったかな?」と心配したり、レストランで少し赤いステーキが出てきたときに、なんとなくその場の空気で残せずに食べてしまったことがあり、次の健診まで不安だったり…。

――不安をどう乗り越えたのですか?
西野:SNSに助けられましたね。悩みを投稿すると、コメントやDMをくれるんです。みんな似たことで悩んでいると思って救われたし、心を落ち着かせることができました。
――妊娠をきっかけに、山本さんとの関係性に変化はありましたか?
西野:妊娠中は私だけが盛り上がってる感じでしたね(笑)。山本さんはベビーグッズにも興味がないし、健診の日も何も聞かれないし…。一緒に盛り上がってくれないことに落ち込みました。
でも、期待するだけ疲れるなと思って割り切りました。コメントで「旦那さんがわかってくれるのは、子どもが2歳ぐらいになってから」と言ってくれた人がいて、みんなそうなんだなと。
今の若い世代は育児に積極的な男性が多い気がしますが、山本さんは56歳。その年代の考え方を、若者と同じように変えるのには無理がある気がして。イライラするのは無駄だし、ストレスも妊婦にはよくないと思って期待するのをやめました。
それに、山本さんが私に合わせて折れてる部分もあると思うんです。子どもがほしいとか、結婚式がしたいとか、私の希望にも寄り添ってくれています。夫婦間の価値観のズレって、どちらかが折れないとうまくいかないことが多いと思うんです。カップルなら別れが選択肢にあるけど、夫婦は円満に過ごすために折れることも大事だなって学びました。
出産の瞬間を動画で残した理由
――出産の様子をYouTubeに投稿されては話題になりました。
西野:妊娠中からたくさんの人に応援してもらったので、ちゃんと見せたかったんですよね。私自身、妊娠中はいろんな人のコンテンツを参考にしていたので、自分の体験も誰かの安心材料になればいいなと。
無痛分娩だったんですけど、麻酔の前は死ぬほど痛くて、そこは撮れてないです(笑)。そのときは「もう一生こんな痛みは味わいたくない」と思ったのに、不思議と忘れてしまいました。動画の反響は大きくて、「リアルで感動した」という声を聞くと、公開してよかったなと思いますね。
生まれた瞬間はバッタバタでした。普通なら「おめでとうございます」ってお母さんが赤ちゃんを抱かせてもらえるのに、にこちゃんの呼吸が浅かったので、すぐ処置で連れて行かれてしまって。山本さんも仕事の時間が迫ってて「俺行かなきゃ」と言うから、とりあえず写真だけ撮って。感動に浸る暇もなかったです(笑)。
新生児が本当に何もできないことに驚いた
――子育てのスタートは順調でしたか?
西野:産んだ後も不安はあって、落としちゃったらどうしようとか、乳幼児突然死症候群が怖いとか。一番つらかったのは何度も乳腺炎になったこと。母乳は痩せると聞いてて、入院中からあげまくっていたら出過ぎちゃって。それなのに飲みが悪かったりすると、胸はカチカチになってしまうし熱も出るし、重い風邪をひいたような症状になってしまって、これが一番きつかったです。
でもメンタルは安定していたと思います。友だちが遊びに来てくれることが多かったので、息抜きもできたし、孤独感もなかったですね。
あとは、赤ちゃんってほんとに何もできないんだって驚きました。もう少し意志疎通みたいなものができると思っていたんですけど、目も合わないし、笑わないし、寝転がってるだけ(笑)。
でも私は母性が強いほうで、産んだ瞬間から思考のすべてが“子どものため”になりました。愛おしすぎて、病室で夜中に寝顔を見ながら泣いていたくらい。仕事のモチベーションも、今は自分がやりたいことより子どもの将来のために、という気持ちですね。
7カ月になって感じる成長と新たな挑戦
――離乳食も始まったり、ハイハイもしたり、成長が見えて新たなかわいさがある頃ですよね。
西野:そうですね。最近は後追いも始まって、ママを認識してるとわかってうれしいです。パパだと泣いちゃうことが多いので、山本さんは落ち込んでますけど(笑)。
離乳食は個人的にはすごく楽しみにしていて、妊娠中に離乳食アドバイザーの資格まで取ったんですけど、実際やってみると大変すぎて……。頑張って作っても、その日の気分で食べてくれないこともあるし。少量だとブレンダーではうまくつぶれないから、結局裏ごししなくちゃいけなかったり。
小さい離乳食用のブレンダーがあればいいなあと思っているので、いつかプロデュースしてみたいです。自分もダイエットで悩んだ時期があったので、暴飲暴食をせず、健康的なご飯が好きな子どもになってくれたら、と思って作っています。
恋人から家族へ、変化した夫婦のかたち
――にこちゃんが生まれてから、山本さんとの関係性はどう変わりましたか?
西野:私は「180度変わった」って山本さんに言われました。にこちゃんファーストになって、山本さんに甘えることもなくなって、多分すごい厳しくなっちゃったと思います。今までは「好きな人」という感覚だったのが、今は「家族で大切な人」になった感じです。
だから、自分に何かしてくれることより、娘に対して愛情を持ってくれることが何よりうれしい。それで娘のために一生懸命なところが好きという感じです。山本さんもそれを理解し始めてくれて、だいぶパパになってきたと思います。

産後間もないころは、帰宅すると寝てるのに、「かわいい~」「遊ぼうよ」なんて起こそうとすることもあって、私は「やめてよ! リビング行って」と怒っていました(笑)。でも最近は、にこちゃんのペースに合わせないとうまくいかないことをわかってくれてる。スマホの待ち受け画面も、にこちゃんと私の写真にしてくれているんですよ。
――ちなみに、家事や育児の分担はどうしていますか?
西野:特に決めてなくて、気づいたほうがやる感じです。育児は基本的に私がやっていて、お風呂も私が入れて山本さんは受け取る係。でも家事は山本さんもできるので、洗濯もしてくれるし、にこちゃんが生まれてから山本さんが料理を作ってくれることも多くて助かっています。
これからの人生で大切にしたいこと
――今後の夢や目標はありますか?
西野:プライベートだと、山本さんの健康ですかね(笑)。最近太りすぎちゃって心配で。
――そういえば、食生活アドバイザーをはじめ、食に関する資格をたくさん取られていますよね。
西野:最初は自分のダイエットがきっかけ。AKB時代に暴飲暴食で悩んでたんですけど、栄養バランスを整えたらリバウンドしなくなって。結婚後は山本さんの健康のために生活習慣病予防アドバイザーも取りました。
でも今は山本さんのご飯まで見てられなくて。以前は食べ過ぎるのが心配で、山本さんの好物の天かすを隠したりしてたけど、今は「お腹に溜まるならいいよ、食べて」みたいな感じになっちゃって(笑)。
仕事面では、にこちゃんが物心ついたときに恥のない、胸を張れる仕事の仕方をしたいです。それが今の私の基準になってるかな。先ほど話した離乳食用ブレンダーのような、何かの商品をプロデュースするのは以前からの夢なのでいつか叶えたいですね。
あとはYouTubeで子育て中のファンの方も増えたので、みんなで悩みを共有できる場を作りたいです。過去にファンイベントで、「ママ友がいない」という人同士が友だちになったのを見て、「こういう場を作れてよかった」とうれしかったので、もっと広げていきたいです。

――最後に、にこちゃんには、どんなふうに育ってほしいですか?
西野:自由に生きてほしいです。でも正直、学力の大切さも感じていて。私自身が、もっとちゃんと勉強しとけばよかったって思うことがあるんです。だから勉強が嫌いと言われたら、「いいよ、やらなくて」って言いたいけど、言い切れないかもしれません。
でも基本的には、にこちゃんが自分でやりたいことを見つけてくれたらいいなって思ってます。まだ教育方針も「これがいい!」という強い意志もないから、周りの話も聞きながら、その時々で何が一番この子のためになるのかを考えていきたいと思っています。
西野未姫さん|タレント
AKB48の14期⽣としてデビュー。現在は多数のバラエティ番組で活躍中。YouTubeではダイエットやお片付け方法が好評。2022年11月22日に極楽とんぼ山本圭壱さんと結婚、2024年に第1子のにこりちゃんを出産。
取材・文/古屋江美子 撮影/黒石あみ