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「ジェンダーリビール絵本」とは
妊娠後に、お腹の中の赤ちゃんの性別がわかったとき、夫婦間で交わされるサプライズ発表「ジェンダーリビール」。「Gender(性別)」を「Reveal(明らかにする)」という言葉からきており、発祥とされるアメリカでは、夫婦で誕生日や記念日のパーティーのようにお祝いしながら楽しむなど文化があります。
日本でもSNSを中心に知られるようになり、今、特に注目を集めているのが、絵本で性別発表すること。その絵本を手掛けるのが、絵本アーティストのRicacoさんです。
ご自身も赤ちゃんを授かり、ジェンダーリビール絵本で性別発表を行い、最近無事に出産しました。そんなRicacoさんに、ジェンダーリビール絵本の概要や魅力、自身の感想を語ってもらいました。
ジェンダーリビール絵本を作ろうと思ったきっかけ

(以下、Ricacoさん談)ジェンダーリビールのことは、以前からよくSNSで目にしており、性別を知った瞬間のパパの顔を見るたびに胸が熱くなっていました。私も夫のそんな表情が見たくて、子どもを授かった後、「性別がわかったらやろう」と心に決めていました。
ジェンダーリビール文化発祥のアメリカでは、ケーキやバルーンでの演出を多く見かけますが、「私にしかできないサプライズはなんだろう」と考えたときに、大好きな絵本での発表を思いつきました。
「パパとママが森の奥にいる赤ちゃんに会いに行く」という物語も頭に浮かんだので、夫に隠れて、急いで制作に取りかかりました。ちょうど、カッティングマシン(紙やステッカーなどを自動でカットしてくれる機器)のアンバサダーになった時期でもあったので、マシンを活用して仕掛け絵本にするアイデアも考えつき、ジェンダーリビール絵本「赤ちゃんは森の奥に」が完成しました。

自作したジェンダーリビール絵本で夫に発表!
(Ricacoさん:)お腹の中の赤ちゃんの性別がわかった後、実際に、夫と一緒に絵本のページをめくりながら、性別発表を行いました。その一部始終を動画に収め、InstagramやYouTubeで公開しています。
絵本での発表は、ケーキやバルーンと違って派手さはありませんが、ジェンダーリビールという特別なイベントを夫とじっくり噛み締められたのがとても印象的でした。仕掛け部分の木の扉を開けて赤ちゃんのイラストが現れ、性別がわかる仕組みにしていますが、性別がわかった瞬間に、夫がとても喜んでくれて、私も思わずハグしてしまいました。
両親や祖母、姉、甥っ子にもこの絵本で報告しました。家族みんなこのサプライズに驚いてくれたのですが、特に甥っ子の反応が可愛らしく、忘れられない思い出になりました。動物たちのシーンでは前のめりになって見てくれ、木の扉も自ら小さな手で開けて「はろぉ~」と赤ちゃんに挨拶してくれたのが微笑ましかったです。
(Ricacoさん:)結婚式で、自分たちの人生を物語にした絵本を作ったのですが、そのタイトルが「愛おしい日々」でした。赤ちゃんが産まれてから、その言葉が本当にぴったりだなと思っていて、まさに今、毎日が“愛おしい日々”です。
息子は、絵本が本当に好きなようで、毎日、数冊読み聞かせています。もちろん、ジェンダーリビール絵本「赤ちゃんは森の奥に」も読み聞かせをしましたが、真剣な眼差しで聞いてくれました。もう少し大きくなったら、また違った反応を見せてくれるのかなと想像するだけでワクワクします。
たくさんの反響! 感動のメッセージも

(Ricacoさん:)ジェンダーリビール絵本「赤ちゃんは森の奥に」に関する動画は、Instagramで累計450万回ほど再生され、想像をはるかに超える反響がありました。「素晴らしいアイデアに感動しました」「絵本が大好きな娘にこの絵本で性別を伝えたい」「絵もストーリーも素敵です」など、あたたかいコメントもたくさん頂戴しました。
森で道に迷い、ようやく赤ちゃんに出会うストーリーに対して「長い不妊治療中、暗いトンネルの中を夫と手をつないで進んできたこと、いろんな人の応援や力を借りてここまできたことを重ねて、涙が止まりませんでした」というメッセージもいただき、私自身も胸が熱くなりました。
もともとは自分の家族に性別をサプライズで伝えるために作った絵本でしたが、販売希望のコメントやDMを数多くいただき、販売を決意しました。
販売後は、絵本の最後に設けた「生まれてくる赤ちゃんへのお手紙」ページを気に入ってくださる方も多く、「闘病中のおばあちゃんが赤ちゃんに会えないかもしれないので、少しでもそのぬくもりを感じてもらえるよう手紙を書いてもらいたくて購入しました」といったエピソードも届きました。
絵本を通して、赤ちゃんへの愛情がさまざまな形で記録されていくことに、私自身も大きな喜びを感じています。

絵本でジェンダーリビールを行うことの魅力
(Ricacoさん:)絵本で行うジェンダーリビールの魅力は、赤ちゃんが生まれてくる日を楽しみにしながら、何度でも読み返せることだと思います。読み聞かせを通じて、赤ちゃんが生まれる前から家族みんなで会えることを楽しみにしていた気持ちや、お腹に来てくれた喜びを、将来大きくなった子どもにも自然と伝えられます。
また、絵本が好きな上のお子さんがいるご家庭でも一緒に楽しめますし、遠方に住むご両親へも贈ることができます。友人へのプレゼントとして選ばれる方もいらっしゃいます。
私は、絵本をギフトとして贈ったり、アートとして楽しんだりする『大人のための絵本』を作って広めたいという想いで活動しているので、デザインにもこだわっています。そのため、単なる性別発表アイテムとしてではなく、インテリアとしても愛される存在になっていると感じています。マタニティフォトのときに絵本を手に撮影しても、とても可愛い仕上がりになりますよ。
ジェンダーリビール絵本制作についての今後の展望

現在は「森」を舞台に、ブルー・ピンク・イエローの3種類を展開していますが、今後は舞台を変えて「海」や「雪景色」など、季節を感じられるようなバリエーションも作れたらと構想しています。
季節ごとのパターンがあれば、あとから絵本を読み返したときに「この頃はちょうど寒い時期で、パパとママでこんな話をしていたな」など、妊娠中の気持ちやそのときの空気感まで思い出せるのではないかなと思っています。時間が経ってもその瞬間の温度を残せるような、そんな絵本を作っていきたいです。
ジェンダーリビールを取り入れるのに絵本はぴったり
ジェンダーリビールという文化自体、日本人にとっては新鮮に感じますが、絵本での発表はさらに印象的で家族の記憶に残るイベントとなるのではないでしょうか。喜びの瞬間が長く続くアイテムとして活用できそうです。
お話をうかがったのは

1993年、神奈川県湘南生まれ。幻想的でありながら、どこか現実のぬくもりも感じさせる世界を描く。結婚式のオーダーメイド絵本《WEDDING ART BOOK》をはじめ、ペットやアパレルなど、絵本を起点としてさまざまな事業を展開。
文・構成/石原亜香利