目次
発達障害の女の子が性被害に遭いやすいのはなぜ?
発達障害の子は特性としてイメージ力に弱さがある場合が多く、そのためコミュニケーションの問題を抱えることも少なくありません。
さらに特性の一つとして、人との距離の取り方や、人との接触の感覚が意識しづらい場合があります。そのため、小学校高学年になっても、年齢にそぐわない行動がみられるケースがあります。
例えば、必要以上に人にまとわりついたり、身体接触をしたりする子がいます。また、姿勢の保持の弱さや、周囲からどう見られているかを意識することが難しいため、スカートを履いていても平気で足を広げてしまうなど、盗撮や痴漢など性被害のターゲットとなりやすい面は否定できません。
そして、コミュニケーションの苦手さから、社会的に孤立しやすい傾向があり、助けを求めることが難しい傾向があります。さらに、自分の思考や行動を客観的に把握し認識する「メタ認知」が育っていない障害特性も、発達障害の女の子が誤解を招きやすい原因です。
人から自分がどう見られているかイメージができないという特性は、着衣が乱れていても気づかず、下着などを盗撮されたり、それを面白半分にSNSに挙げられたりするケースも少なくなく、性犯罪者にとっては狙いやすいのかもしれません。
性に関する正しい知識を持つことは、自分を守る力になる

性被害に遭った子どもの中には、「どうやって拒否すればよかったのか分からなかった」「断ったら嫌われると思った」「知られたら親に叱られると思った」などと語るケースが多くあります。
しかし、性被害は、信頼している身近な大人から加害されることも珍しくありません。最近報道された盗撮事件は、小学校の男性教師グループによるものでした。
つまり、「どんな人でも加害者になり得る」「誰でも被害に遭う可能性がある」のです。そして、どの場合であっても、悪いのは加害者であり、被害者ではありません。性に関する正しい知識を持つことは、自分を守るためには必要です。
性教育は特別な知識を教えるものではなく、「自分と他人の身体にはそれぞれ権利がある」という認識を育てる基本的人権や自分の権利を学ぶ教育です。
繰り返し子どもに伝えるべき、自分を守るための性教育の3つのポイント
そして、性教育は、特別な場で行うものではなく、日常の中で少しずつ積み重ねていくことが重要です。
まずは「信頼できる大人への相談」を習慣づけることが大切ですが、これだけは伝えてほしいポイントを3つ挙げます。発達特性のある子どもには、状況をできるだけ具体的に想定し、くり返し練習することが効果的です。
・見た目では判断できないが、「性的な目的で身体を見よう・触れようとする人がいる」ことを伝える
・水着で隠す体の部分や、特に女の子の場合、下着も見られたり触られたりしてはいけない「プライベートゾーン」であることを、入浴や着替えのときに伝える

・絵本やぬいぐるみを使ってのロールプレイを取り入れ、「嫌なときの伝え方」「助けを求める練習」「被害に遭ったときに誰に伝えるか」を話し合う。
いつも「あなたを気にかけているよ」という支援を
知的能力の程度や認知特性の表れ方の違いなどにより、一概には言えませんが、発達障害がある女性の判断力の弱さは改善されないので、だまされやすいという面があります。また「寂しさ」から間違いを犯すこともあります。
思春期前半になると、発達障害の女の子の中には、「仲間に入りたくても入れてもらえない。だけど、一人でいるのは寂しい」と、他の女の子について回ることもあります。一人でいられない女の子は、いじめのターゲットになりやすく、からかわれたり、利用されたりすることも少なくありません。そうなると、自己肯定感も低くなりがちで、二次障害につながってしまうケースもあるのです。
そんな「寂しさ」を穴埋めしようと気持ちが異性に向くようになると、今度はそんな気持ちを逆手に取られ、異性に利用されるようになるケースも報告されています。女の子の場合、自分のことを「誰かに気にかけてほしい」という寂しさが、性被害に結びつくことがあるのです。
だからこそ、女の子には寂しい思いをさせないことを大切にしてください。身近な大人が「あなたのことを気にかけているよ」という支援が必要です。
信頼できるホームドクターとしての産婦人科医を見つけましょう
産婦人科医の中には、望まぬ妊娠で中絶を繰り返す女性の中に、発達障害の女性が少なからずいることを指摘する医師もいます。問題が起きてから、いきなり知らないドクターに相談するのは難しいでしょう。歯医者に行くのと同じような感覚で産婦人科に慣れてほしいという思いから、私は、療育に通ってきていた女の子たちには、生理が始まったら母親と一緒に産婦人科を受診することをすすめていました。発達障害の特性があると、生理が日常生活に影響することも多いのです。いざというときに相談することができる、かかりつけの産婦人科医のホームドクターを作っておくことをおすすめします。
こちらの記事もおすすめ
教えてくれたのは
健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

