道具で発達を応援するネットのお店tobiracoの店主が、発達障害の子の「困り感」を解決する道具をご紹介します。今回は、学習のつまずきを解消するお助けグッズです。
目次
貼るだけでリコーダーが吹けるように。魔法の滑り止めシール「ふえピタ」
「リコーダーの授業があるから学校に行きたくない」
こんな風に思っている子は、意外と多いようです。リコーダーは小学3年生から習います。小さな手と指で音階に合わせて、穴をふさいでいくのは大変ですよね。
指先が器用ではなかったり、目と手の協調運動がうまくできなかったりする発達凸凹さんだと、まずリコーダーをうまく吹くことができません。
こんな悲しい話を聞いたことがあります。
リコーダーを一生懸命練習したのに、学芸会の本番では音が出ないように穴を全部ふさがれていた子がいたというのです。ある特別支援学校の先生が巡回先の小学校で目撃した話です。
でも、聞いてみると「うちもそうでした」というお母さんが何人かいて驚きました。
本番でひとりだけ音を外したら、その子自身もつらい思いをするかもしれません。でも、なんとかならないのかなと思っていたときに知ったのが、「ソプラノリコーダ用演奏補助シール ふえピタ」(通称:ふえピタ)です。
特別支援学校の先生も「これは、いいよ」と大絶賛しました。
半透明の特殊なシールをリコーダーの穴に貼り付けるだけ。指が滑らず、ピタッとフィットします。触るだけで、穴を見なくても位置がわかります。
「ふえピタ」を開発したのはママです。小学3年生(当時)の息子さんがリコーダーを嫌がり「学校に行きたくない」と言ったのがきっかけ。アイディア・パークという会社を立ち上げ、試行錯誤しながら製造にこぎつけました。
ソプラノリコーダ用演奏補助シール ふえピタ
素材 スチレン系エラストマー サイズ1.5cm×2.6cm×0.5~1mm セット内容 8枚 価格 800円(税別) 開発・製造 アイディア・パーク 発売元 (株)tobiraco https://tobiraco.co.jp
鉛筆の持ち方をサポートする「もちかたくん ユビックス」
鉛筆は持ちかたが良くないと、肩に力が入ったり、文字が書きにくかったりします。学校によっては教えてはくれますが、教えられた通りに持ち続けることができない子がほとんどです。
「鉛筆をちゃんと持ちなさい」と注意しても、発達凸凹さんは「ちゃんと」という曖昧な表現は苦手。
鉛筆の持ち方をサポートしてくれる道具があれば、とてもラク。わざわざ「持ち方」を意識しなくても、文字を書くことだけに集中できます。
「書き方教室」から生まれたロングセラー
「もちかたくん ユビックス」は、鉛筆の持ち方補助具として一番のおすすめです。この補助具を開発したのは「児童かきかた研究所」という鉛筆を使った書き方を教える教室の指導者。30年にわたり教えてきた現場から編み出された補助具です。
「もちかたくん ユビックス」の「もちかたくん」は鉛筆に装着します。どちらかというと幼児から小学校低学年向け、「ユビックス」は指と指の間に挟さみ、そこに鉛筆をのせて使います(上の写真参照)。小学校中学年以降向け。この補助具の優れたところは、鉛筆の角度がきちんと定まることです。
「児童かきかた研究所」によると、文字をきれいに書くためには紙と鉛筆の角度がポイントだそうです。その角度とは、紙に対して鉛筆の角度は約60度とのこと。この補助具だと自然と60度の傾きになるというわけです。
もちかたくん ユビックス
素材 もちかたくん:エラストマー、ユビックス:ポリエチレン セット内容 もちかたくん1個 ユビックス1個 価格 350円(税別) *右手用・左手用があります。発売元・問い合わせ先 トンボ鉛筆 問い合わせ先:0120-834-198 https://www.tombow.com
ストレスなく消せる薄型消しゴム「モノスマート」
消しゴムのヘビーユーザーは、間違いなく子どもだと思うのですが、子どもの小さな手に使いやすいものが少ないですよね。
特に力のコントロールが難しい発達凸凹さんには、使いやすい消しゴムを選んでいただきたいと思います。
小さな手に持ちやすいこと、細かなところも消しやすいこと。力を入れなくてもきれいに消せること。このようなことを考え合わせると薄型消しゴムの「モノスマート」がおすすめです。
写真をご覧ください。モノスマートを使って「花」のくさかんむりの一部分をきれいに消しているところです。薄型で紙に触れる部分が少ないので、ピンポイントで消すことができました。
「モノスマート」は、低学年向けには見えないかもしれません。でも、手先がそれほど器用ではなく、漢字にも慣れていなくて、小さなところを消したい、そんな低学年にこそ使ってほしい消しゴムです。
モノスマート
素材 PVC樹脂 サイズ W67×H17×D6mm 重さ9g 価格 100円(税別) 発売元・問い合わせ先 (株)トンボ鉛筆 0120-834-198 https://www.tombow.com
文字が読みやすくなる色のフィルター「魔法の定規」
1ページにたくさんの文字が書かれていると、目がチラチラして読みづらいという子がいます。目に飛び込んでくる情報が多すぎるんですよね。情報を絞りましょう。読むところだけにフォーカスできる工夫を。
チラチラして読みづらいのは、色の波長(正確には光に当たったときの色)による場合もあるそうです。波長は色によって違いますが、白はすべての色の波長を反射します。白が眩しいと感じる理由もそれです。
視覚過敏の子は、この眩しさに敏感です。白をカバーして、読みたいところだけ色のついたフィルターを当てるととても読みやすくなります。「魔法の定規」は、色の波長を研究して生まれたリーディングルーラー。5色セットになっています。どの色が見やすいかはその子によって違います。また、その日によって見やすい色が異なる場合もありますので5色セットがおすすめです。
魔法の定規
素材 再生PET サイズW205×H80mm ガイドラインの位置 1cm(1行~2行をフォロー) 価格 基本カラー5枚セット3,000円(税別) 発売元・問い合わせ先 魔法の定規日本正規代理店 CROSSBOW JAPAN http://www.crossbow-japan.com
プリントの文字が見やすくなります「色つきコピー用紙」
白と黒のコントラストが強いと、視覚過敏の子は読むのにとても疲れます。白い紙を色つきのコピー用紙に変えるだけで、読みやすくなります。写真はクリーム色に変えた例です。これまでに見聞きした話ではクリーム色が多かったのですが、子どもによっては水色のコピー用紙が見やすいという場合もあるようです。白と比べてどの色がみやすいか、お子さんに聞いてみるといいと思います。
白い紙だと疲れるという場合、学校でも色つきのコピー用紙にしてもらえるように頼んでみてください。これも「合理的配慮」のひとつ。「合理的配慮」は学校に義務づけられていますので配慮してくれるはずです。
白い用紙と色つき用紙のプリントを半々に用意して、「見やすいほう使っていいよ」と配慮してくれる先生もいるようです。でもまだ少数でしょうね。保護者が働きかけていくと、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。
色つきコピー用紙
カラーのコピー用紙(色上質紙)は、文具店、通販サイトなどで販売。
書き写しがラクになる!視点の流れを変える書見台「ブックメイト」
親しくしている放課後デイサービスで、書見台を使って漢字の練習をしている子を見かけました。聞いてみると、視点の流れを上から下に変えただけで、漢字学習がとてもはかどるそうです。
たしかに、頭と目を左右に動かして書き写すよりも、上から下へ視点を移動させた方が動きが自然で、ラクですね。
左右に目を動かして書き写せないのは、目と手の協調運動がうまくいっていないとか、眼球の動きの問題であるとか、いろいろと理由があるようです。
この「ブックメイト」は、角度を調整することができるのもポイント。ラクに読める角度で学習することができます。書き写しが難しそうな場合、お試しください。
ブックメイト
素材 スチール サイズ w175×H165×D148mm 重さ 330g 機能 角度調節 5段階カラー ブラック、ホワイトの2色 価格 2000円(税別) 発売元・問い合わせ先 株式会社レイメイ藤井 03-3632-1081(代) http://www.raymay.co.jp/bungu/
今回ご紹介したのは、手と目の動きをサポートする道具。学習する上での基本となりますが、意外と見落とされがちです。
発達障害の「困った」、道具であっさり解決しましょう。
次回も素敵な道具たちをご紹介します。
『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集)小学館
トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。