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生徒たちが口を揃えて言う「自由」。その根底にある共感的コミュニケーシ ョンとは
ーーまず初めに、かえつ有明中学校の教育理念や、大事にされている方針についてお聞かせいただけますか。
内山先生:はい。私たちがかえつのことを語る時、なるべく生徒の声をそのまま伝えようと思っています。生徒に「かえつってどんな学校?」と聞くと、一番多く出てくるの が「自由」という言葉なんです。
特にこの5年ほど、生徒に聞くと「自由」というキーワードがよく出てくるようになりました。ただ、我々が「自由な学校を目指そう」と掲げたことはあまりないんです。
では、なぜ生徒たちがそう感じるのか。私たちなりに分析して思ったのが、「NVC(ノン バイオレント・コミュニケーション)」の存在です。
ーーNVC とは?
内山先生:はい。「非暴力コミュニケーション」と訳されますが、かえつでは「共感的コミ ュニケーション」という言葉を使っています。NVCを学び、実践を重ねていた教員たちを中心に、10年ほど前から取り入れ始めました。
具体的には、生徒と話す際に、相手を優しく温かく受け止めようということを大切にしています。例えば、生徒が「先生が嫌だ」と言ったとします。昔の感覚なら 「そんなことを言ってはいけない」と叱りそうですが、私たちはなるべく頭ごなしに押さえつけないように心がけています。
言葉そのものよりも、その言葉を発している子の心の内側にあるもの、例えば「自分の思いを聞いてもらえなかった」といった感情をきちんと見つめ、受け止めようと努めています。
そうすると、生徒たちも「自分の言葉を聞いてもらえる」という安心感や満足感につながります。抑圧されたり、頭ごなしに否定されたりしない。この感覚が、生徒たちの言う「自由さ」につながっているのだと思います。
生徒の言葉を尊重するのは大変な面もあります。ですが、その結果として、生徒たちと対話しながら校則を変えることもありました。かつては男子の髪型に厳しいルールがありましたが、対話を経てそのルールがなくなったり。自分たちの声を聞いてもらえる、という実感が生徒たちのエネルギーを引き出し、生き生きとした姿につながっているのだと感じています。
週3回のオリジナル科目「サイエンス科」で、探究の基礎を育む
ーーかえつ有明ならではの教育内容の特徴や、実際の取り組みについて教えていただけますか。
内山先生:重要な役割を果たしているものとして、オリジナル科目の「サイエンス科」があります。これは国語や社会と同じように時間割に組み込まれていて、週に3回もあります。
ーー週3回はかなり多いですね。
内山先生:はい。この時間では、学び方を学んだり、考えたり、探究活動のベースになるようなスキルを身につけます。情報収集の仕方や、人と協力して学ぶためのコミュニケーション活動など、多岐にわたります。ここで身につけたスキルを、各教科の授業でも役立てていこうという発想です。
例えば、中学1年生では「未来デザインプロジェクト」という活動で、プラスチックごみなどの環境問題について学びました。そして、自分たちに何ができるかを考え、アイデアを発表するのです。この活動から、万博会場で発表する生徒も出てきました。
ーーそういった活動に対して、少し苦手意識を持つ生徒さんもいるかと思います。先生方はどのようにサポートされているのでしょうか。
内山先生:まず、入学してくる生徒たちが「かえつはプロジェクト活動やコミュニケーションを重視する学校だ」ということを理解してくれているのが大きいですね。その上で、 私たちが信じているのは、探究やプロジェクトは、トレーニングをすれば誰でもある程度のレベルまで到達できるスキルだということです。
ですから、苦手な子にも「大丈夫だよ」と声をかけながら、ハードルを低く設定することから始めます。いきなり大人数で議論するのではなく、まずは2人組で話す。テーマも「今日の朝ごはんは何を食べた?」ぐらい簡単なものからスタートします。 誰でも取り組めるところから始めることを大切にしています。

内山先生:もう一つ特徴的なのが、「スパイダーウェブディスカッション」です。円になって話し合い、誰が次に話したかを外から見ている生徒が線で結んでいく。すると、誰がたくさん話しているか、誰が話せていないかが可視化されます。
この活動の目的は、個人の発言量を評価することではありません。「グル ープとして、みんなが参加できる良い話し合いができたか」を確認するためです。声の大きい人だけが話すのではなく、なかなか話せない子の声も拾える議論が良いよね、という意識を育むための仕掛けなんです。
「学校として方向性をあえて決めない」生徒一人ひとりの選択を尊重する進路指導
ーー進路についてもお伺いしたいです。いわゆる一般入試を目指す生徒さんと、総合型選抜などを考える生徒さんのバランスや、学校としての空気感はいかが でしょうか。
内山先生:学校として、進路の方向性をあえて決めない、という点にはこだわりを持っています。私が20年近く前にここへ来た当初は、ホームページに「早慶上理50% GMARCH100%」と大きく掲げられていました。明確な目標があり、一般受験で数を稼いでいく時代でした。
しかし、生徒の心の声を聞くという現在の学校方針とともに、変化してきました。「賢いから東大へ」とか「実績のために一般受験を」というような、学校側の方針による方向付けはしないようにしています。
その結果、この春の卒業生では、総合型選抜で進学する生徒が27%にのぼります。一般選抜は約40%です。プロジェクト活動などに熱心に取り組む生徒が増えているので、その経験を活かせる総合型選抜で難関大学へ進学するチャンスも増えています。
総合型選抜の対策は学校内では難しい面もありますが、予備校任せにするのではなく、卒業生が主体となった「探究ゼミ」という講座を開いています。総合型で大学に進学した卒業生たちが、後輩たちの自己分析から志望理由書の作成まで、 対話を通して丁寧にサポートしてくれています。これは、かえつならではのサポート体制だと思います。
全国優勝のテニス部からミュージカル部まで。生徒の多様性があふれる学校生活

ーー学校生活についてですが、人気の部活動はありますか?
内山先生:テニス部が人気で、全校生徒1200人のうち100人くらいが所属しています。特に男子は強くて、スポーツ推薦などがない中で、数年前には全国大会の団体戦で優勝しました。あとは、グラウンドが充実しているのでサッカー部もとても人気です。
珍しいところでは、ミュージカル部もあって人気です。クオリティも高くて、自慢の部活動の一つですね。

ーー生徒さんの在住エリアに偏りはありますか?
内山先生:学校周辺はマンションが多く、近隣から通う生徒も多いですが、全体の平均通学時間は1時間弱です。1時間以上かけて通う生徒も珍しくありません。特に帰国生は、少し遠くからでも通ってくれていますね。
ーー帰国生も多いと伺いました。何か学校の雰囲気に影響はありますか?
内山先生:はい、1学年200人のうち約30%が海外での居住経験を持っています。その影響もあるのか、学校の雰囲気は非常にフランクですね。先生と生徒の距離感が近いと、見学にいらっしゃった方からもよく言われます。
ーー帰国生だけのクラスを設けている学校もありますが。
内山先生:私たちは、分ける良さよりも「混ぜる良さ」を大事にしているので、ホームルームは一緒にしています。英語の授業など、習熟度別に分ける必要があるものだけ分かれて授業を行っています。
コミュニケーションを大切に、自分の世界の外へ。かえつ有明が求める生徒像
ーー最後に、この記事を読んでいる保護者の方へ向けて、かえつ有明に向いているのはどんなお子さんか、教えていただけますか。
内山先生:そうですね、まずは人と協力したり、コミュニケーションを取ったりすることが好き、あるいは大切にしたいと思っているお子さんですね。
もう一つは、フットワークが軽い子。私たちは自分のコンフォートゾーンから抜け出すような挑戦を応援していて、失敗を恐れずに自分の世界の外へ「ひょい っ」と出られるような子は、かえつでの生活をとても楽しめると思います。うまくいかなくても、そこから何かを学び取れる。そんな気持ちの軽快さを持っている子は向いていると感じます。
ーー貴重なお話をたくさん聞かせていただき、生徒さんの声に耳を傾ける学校の温かさが伝わってきました。本日はありがとうございました。
かえつ有明中学校・高等学校
1903年に嘉悦孝の「女性の経済教育」を実践する学校として創立され、2006年に現在の有明キャンパスに移転し、共学化・校名変更されました。校訓「怒るな働け」に象徴される実践的かつ責任感ある教育を重視し、主体性・協働性・創造性を育む学びを展開しています。 学校行事も生徒主体で、体育祭や合唱コンクール、海外研修などを通じて成長機会を提供。学力面では、6年間のキャリア教育や探究ゼミ、放課後講習などが好評です。
中学入試は、2科と4科の試験に加えて、英語や思考力重視の選考、高校では総合問題・グループワーク・プレゼンテーションなど多面的な方式を採用しています。 国際生も多く、多様な価値観を尊重したグローバルな学びの環境が特色です。
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これを読めば、中学受験の親のすべきサポートがまるわかりの完全ガイドです!
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お話を伺ったのは
かえつ有明中学校・高等学校 ブランディング・広報主任。2007年、かえつ有明中・高等学校に英語科教諭として着任。
聞き手は
構成/HugKum編集部
