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「感覚過敏」は病気ではなく“症状”
――「感覚過敏」とはどのような特性なのでしょうか?
加藤さん:感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過敏になり、日常生活で困りごとが生じる状態です。
よく勘違いされるのですが、“感覚過敏”という病名があるわけではありません。発達障害やうつ病、認知症、事故による脳へのダメージなど、様々な要因の“症状”として現れるものです。そのため、病院に行っても感覚過敏と診断されるわけではなく、明確な治療法があるものでもありません。
――感覚過敏の子どもによく見られる行動にはどんなものがありますか?
加藤さん:分かりやすい行動でいうと、音がつらくて耳をふさいだり、食べ物が食べられず偏食のような状態になったり、靴下や肌着を嫌がったりするケースがあります。

加藤さん:例えば、味覚過敏で、食べ物のにおいや食感が苦手な場合、食べると気持ち悪くなってしまうことがあります。でも、子ども自身はその感覚をうまく説明できず、「嫌だ」としか表現できないことも少なくありません。そのため、周囲からは「好き嫌いが多い」「わがまま」と誤解されてしまうこともあります。
「わがまま」「気にしすぎ」と誤解されやすい理由
――感覚過敏の子どもが“わがまま”と誤解されやすいのはなぜでしょうか?
加藤さん:「なんで嫌なの?」と聞かれても、本人がなかなか説明できないことが大きいと思います。子ども自身も、自分の感覚がなぜつらいのか分かっていないケースが多いです。
とくに小さい子どもは、自分の感覚を言葉にして伝えること自体が難しいと思います。「音が刺さる感じがする」「においで気持ち悪くなる」といった感覚は、大人でもうまく説明するのが難しいものです。だからこそ、周囲からは「ただ嫌がっているだけ」のように見えてしまいやすいのだと思います。

――保護者や教師が見落としやすいサインはありますか?
加藤さん:具体例を出すと、教室の中で周囲の話し声やイスを引く音、エアコンの音など、様々な音が同時に入ってくることで、先生の声だけをうまく聞き取れないケースがあります。このようなケースでは、声による指示が通りにくいことがあり、「ちゃんと聞いていない」「集中していない」と誤解されてしまうことも。
また、白い紙や教室の光がまぶしく感じられ、文字が見えづらくなるケースもあります。そうすると文字を読むのが苦手だったり、ノートを書くのに苦労したりします。本人は頑張っているのに、「やる気がない」と思われてしまう可能性があります。感覚の困りごとは外から見えにくいため、周囲が気づきにくいのだと思います。
――“気づきにくさ”も感覚過敏の特徴なのでしょうか?
加藤さん:そうですね。感覚は、生まれたときからずっと当たり前にあるものなので、「みんなも同じように感じている」と思っている人が多いです。例えば、私自身も子どもの頃は、服のタグが当たって痛いことや、特定の場所のにおいがつらいことを「みんなも我慢しているんだ」と思っていました。
だから、自分が“特別困っている”という認識を持ちにくいです。大人になって初めて、「自分がつらいと思っていたことは、みんなにとってはそこまでつらいことではなかったんだ」と気づく方も多いですね。
感覚過敏研究所は、当事者と家族が無料で参加できるオンラインコミュニティ「かびんの森」を運営していますが、そのコミュニティには、「50歳を過ぎて初めて“感覚過敏”という言葉を知り、自分の困りごとに気づいた」という方もいらっしゃいます。
感覚の困りごとは一人ひとり違う。発達障害との関係は?
――いくつか具体例も挙げていただきましたが、感覚過敏にはどのような種類がありますか?
加藤さん:感覚には視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚…とありますが、本当に個人差が大きいです。
例えば視覚過敏でも、太陽の光は平気だけれどLEDの光が苦手な人もいますし、逆に室内照明は平気でも外の光がつらい人もいます。聴覚過敏でも、人の声が苦手な人、食器の音が苦手な人、エアコンの音がつらい人など、それぞれ違います。味覚過敏では、特定の食感やにおいが苦手で食べられないことがありますし、嗅覚過敏では香水や洗剤などのにおいで体調が悪くなることも。触覚過敏では、靴下の縫い目や服のタグが強いストレスになることもあります。
五感以外にも、熱さに敏感すぎる温度過敏や、ブランコや遊園地の乗り物が苦手な平衡過敏なども。
「感覚過敏」と一言でいっても、困りごとは本当に様々で、苦手なものやつらさの感じ方は大きく異なります。また、1つの感覚が過敏な方もいれば、複数の感覚が過敏な方もいます。

――発達特性との関係はあるのでしょうか?
加藤さん:感覚過敏は発達障害と結びつけて語られることが多いですが、発達障害のある人全員に感覚過敏があるわけではありません。実際には、うつ病や認知症、事故による脳への影響など、様々な要因の症状として現れるものです。
もちろん、自閉症の診断基準に感覚特性の項目があるなど、研究されている部分もあります。ただ、「発達障害だから感覚過敏」「感覚過敏だから発達障害」と単純に結びつけられるものではないと思っています。
――感覚過敏は、成長に伴い治ることも?
加藤さん:治るというか、大人になるにつれて、苦手なものへの対処法を自然と身に付けていく人は多いです。例えば、まぶしさが苦手な人は画面の明るさを調整する、人混みが苦手な人は混雑する時間帯を避けるなど、知らないうちに対策しながら生活しているケースは多いと思います。
家庭でできるサポートとNG対応
――家庭ですぐにできるサポートを教えてください。
加藤さん:まずは「知ること」が大切だと思います。そのうえで、お子さんの苦手に合わせて環境を調整していくことが重要です。
音がつらいのであればイヤーマフを使う、光がまぶしいなら照明を調整する、苦手な食べ物が多ければ食べられるものを優先するなど、できる工夫はたくさんあります。例えば、食べ物についての感覚過敏であれば「栄養バランスを考えなきゃ」と思いすぎるより、まずは“食べられるものを食べる”ことを大切にしてほしいと思います。

――逆に、やってしまいがちなNG対応はありますか?
加藤さん:「我慢しなさい」「慣れれば大丈夫」と強制してしまうことです。感覚過敏のある子にとっては、本当に耐えがたい苦痛を感じている場合があります。無理に我慢させることで、その場所や行動そのものが怖くなってしまうこともあります。
とくに、親に理解されないことは大きな苦痛になります。本来安心できるはずの家が、安心できない場所になってしまうからです。
また、「どうして嫌なの?」と問い詰めるより、「何がつらそうかな?」と一緒に探っていく姿勢が大切だと思います。子ども自身も、自分の感覚をまだ理解できていないことが多いので、親が一緒に考えてくれることが安心感につながります。
実際に感覚過敏コミュニティでも、「親に理解してもらえなかった」「早く一人暮らししたかった」という声を聞くことがあります。「できないこと」だけを見るのではなく、「どうしたら過ごしやすくなるか」を一緒に考えることが大切だと思います。
「安心できる居場所」が子どもの支えになる
――最後に、保護者へメッセージをお願いします

加藤さん:困ったときは、家庭だけで抱え込まず、専門家や感覚過敏コミュニティなどを利用して相談していただきたいです。見えていないだけで、選択肢は必ずあるはず。
子どもにとって大切なのは、「安心できる居場所があること」です。子ども自身が「分かってもらえている」と感じられることが、何より大きな安心につながるのではないかと思います。
“わがまま”と決めつける前に
「わがまま」「気にしすぎ」に見える行動の裏に、実は“感覚のつらさ”が隠れていることもあります。「どうしてできないの?」ではなく、「何がつらいのかな?」と寄り添う視点が、子どもにとっての安心できる居場所づくりにつながるのだと、今回お話をうかがって思いました。
後編では加藤路瑛さんご自身が感覚過敏だった子ども時代の経験や、12歳での起業を選んでからいままでの道のりについてお伺いしました。
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この記事を書いたのは
美容師として働いた後、子育てをきっかけにWEBライターとして活動をスタート。現在は親子向けWEBメディアを中心に、子育て・教育・ライフスタイル分野の記事を執筆している。親子イベントや商品レビュー、専門家インタビューのほか、映画や配信作品のレビュー記事も手がける。