壁いっぱいの緑! シンガポールのエコなホテルたち
屋上にちょこんと植栽、という日本でよく見る規模とはまるで違い、ビル全体がまるで森のよう! シンガポールでは思わず立ち止まって見上げてしまうような緑に覆われた建物をあちこちで目にします。シンガポールが国の戦略に掲げる「シティ・イン・ネイチャー(自然の中の都市)」という思想が、街の景色そのものに表れているのです。

遠くからでも目を引いたのが、壁いっぱい緑でおおわれた「オアシア・ホテル・ダウンタウン」。さらに歩いていると、各階のテラスから緑が滝のように流れ落ちる「パンパシフィック・オーチャード」にも出くわしました。

大きく張り出したテラスに空中庭園が何層にも重なる「パークロイヤル・コレクション・ピッカリング」も圧巻です。これらはいずれも、シンガポールの建築事務所WOHAが手がけたもの。シンガポールでは緑は単なる飾りではなく、街の暑さをやわらげ、鳥や虫を呼び戻すための工夫でもあります。ちなみに日本ではなかなか見かけない大胆なデザインが多いのは、大きな地震が起きにくい土地であることも背景のようです。
埋め立て地に広がる巨大庭園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」

「シティ・イン・ネイチャー」をいちばん体感できる場所が、ウォーターフロントにある「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」。埋立地に造られた巨大な公園です。
シンボルはスーパーツリーと呼ばれる高さ25〜50mの人工の巨木。コンクリートと鉄骨の構造物ですが、幹は本物のランやシダなどの植物にびっしりおおわれていて、遠くから見るとまるで本物の巨木が生えているよう。しかも、てっぺんのソーラーパネルで発電し、雨水を集めて園内の植物に届け、ドームの空気や園内の発電所のガスを排気するという役割もあり、ふるまいまで本物の木そっくりなのです。

屋外エリアは基本的に無料で、早朝にはランニングを楽しむ地元の人の姿もありました。園内にはいろいろなテーマの庭があり、なかでも面白いのが、ヘリテージ・ガーデン。中国系、マレー系、インド系という3つの民族の庭に、イギリス統治時代をたどる庭を加えた一画です。インドの庭には米粉で地面に模様を描く伝統文化「コーラム」の解説があり、イギリス統治時代の庭にはクローブやナツメグが植えられていて、かつて香辛料貿易で栄えた歴史を伝えていました。庭ごとに雰囲気が変わるので、親子で歩けば歴史や文化にも自然と興味が広がっていきそうです。

園内には、アート作品も点在していて、ちょっとした野外美術館のような楽しみもあります。

子連れにうれしいのが、無料で遊べるチルドレンズ・ガーデン。動きに反応して水が噴き出す水遊びエリアや、森のアスレチック、木々のなかのツリーハウスまであり、地元の子どもたちが大はしゃぎで遊んでいました。

もともと海を埋め立てた土地なので、園内の池もすべて人の手でつくったもの。見た目の美しさだけでなく、池の植物が雨水をろ過して街の貯水池へ送る役割も担っているそうです。
スーパーツリーの間を歩く「OCBCスカイウェイ」

ここからは有料エリアです。まず上がりたいのが、2本のスーパーツリーをつなぐ空中回廊「OCBCスカイウェイ」。高さ22メートルの回廊に出ると、下から見上げていたスーパーツリーが目の高さに迫ってきます。

展望台からは庭園の緑や水辺など360度の景色を一望できます。ちなみに展望フロアには、シンガポールの人気パティシエ、ジャニス・ウォンのカフェがあり、スーパーツリーをモチーフにしたかわいい限定スイーツも食べられます。
エコな仕掛けで涼しい「フラワードーム」「クラウドフォレスト」

2つの大きなドームも必見です。世界中の花が咲きそろう「フラワードーム」と熱帯雨林を再現した「クラウドフォレスト」。外は30度を超える暑さでも、一歩中に入るとひんやり。
実はこの涼しさも、よく考えられています。ドームの屋根は熱を抑える特殊なガラスで、暑くなると日よけが自動でせり出す仕組み。冷気はドーム全体ではなく、人のいる低い場所に送ることで、使うエネルギーを抑えています。また、冷房はシンガポール各地から集めた剪定枝や園芸ごみを園内で燃やしてつくった電気が元になっており、園内のスーパーツリーがその煙突を兼ねています。といっても煙がもくもく出ているわけではなく、排気はきれいに処理されていて、言われなければ煙突だとはまず気づきません。

クラウドフォレストは今、映画『ジュラシック・ワールド』とコラボした展示で子どもたちに大人気。

シダやソテツなど古くから変わらない植物が実際に育つ中に、恐竜が現れ、迫力満点です。
太陽の力で輝く夜のショー「ガーデン・ラプソディ」

スーパーツリーは、昼に見上げても壮観ですが、本領を発揮するのは夜。ソーラーパネルでためられた太陽の光で美しくライトアップされます。さらに19:45と20:45の2回、音楽に合わせて光が色を変える無料のショー「ガーデン・ラプソディ」がスタート。昼間の植物園とは別世界の雰囲気で、ファミリーもたくさん観に来ていました。
モールの中に運河が!「マリーナベイ・サンズ」

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイのすぐ隣にそびえるのが、3本の塔の上に船を乗せたような「マリーナベイ・サンズ」。ホテルやモール、劇場などが入った巨大な複合施設です。館内のモールでは運河を赤いボート「サンパン」がゆっくり進んでいます。

天井にあたる場所に大きな透明の器「レイン・オクルス」にも注目です。実は、ここで集めた雨水がサンパンが浮かぶ運河の水にも再利用されているそうで、こんなところにもさりげなく環境への配慮が。面白いのが、この器の対角線上に立つと、反対側の人の声がはっきり届くこと。お椀の形が音を集めて運ぶためで、子どもと「聞こえる?」と声を飛ばし合うと盛り上がります。
光と水のショー「スペクトラ」

モールを抜けてマリーナ湾のほとりに出ると、海のような水面が広がっています。でも実はこれ、海ではありません。大きな川や十分な地下水のないシンガポールは、長く水を隣国からの輸入に頼ってきました。そこで湾の出口を「マリーナ・バラージ」という堰でふさぎ、雨水を蓄えて巨大な貯水池にしたのです。たまった水は浄水処理されて、街の水源になっています。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイの池の水も実はここに流れ込むように設計されています。

ここでは毎晩、光と水のショー「スペクトラ」が行われています(毎晩20:00、21:00の2回、金・土は22:00も)。レーザーや噴水が音楽に合わせて踊るように動く15分間。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイのガーデン・ラプソディとハシゴすれば、一晩で2つの無料ショーを楽しめます。
子どもと歩いて気づく、街と自然の距離の近さ

都会なのに自然が近く、まさに「シティ・イン・ネイチャー」だと歩くほどに実感できるシンガポール。歩いているだけで「すごい!」や「どうして?」が次々湧いてくるので、親子の会話も弾みそう。帰国後も「サステナブル」がぐっと身近になりそうです。
取材協力:シンガポール政府観光局
子連れシンガポール旅行のレポートはこちら
この記事を書いたのは
通信会社に約6年間勤務した後、ライターに転身。旅行、IT、