【夏の外あそび】「暑いからNG」はもったいない! 睡眠・食欲・目にも影響。専門家に教わる屋外のメリットと、猛暑日の室内あそびの工夫

毎年のように「危険な暑さ」が続く夏。2025年には、群馬県伊勢崎市で41.8℃という記録的な暑さも観測されました。「熱中症が心配だから外あそびは控えたほうがいい?」「でも、家の中で過ごしてばかりでいいのだろうか」――そんなふうに迷う保護者の方も多いのではないでしょうか。

猛暑の時代に、子どもの外あそびとどう向き合えばよいのでしょう。特定非営利活動法人子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会(略称:NPO法人外あそび推進の会)の代表理事・前橋明先生に、外あそびが子どもの成長にもたらす大切な役割や、暑い日こそ意識したい室内での過ごしかたについて伺いました。

子どもの外あそびは「毎日たっぷり」から「短時間で調整」へ

――最近の日本の夏は厳しい暑さが続きます。近年の猛暑を経て、子どもたちの外あそびにはどのような変化がみられるのでしょうか?

前橋先生:最近は、夏の外あそびが「毎日たっぷり遊ぶ」から、「時間帯や場所、暑さ指数(WBGT)を見ながら、短時間で工夫して遊ぶ」というスタイルへ大きく変わってきています。

2023年から2025年にかけて、日本の夏の平均気温は、3年連続で過去最高水準を更新しました。近年の猛暑によって、子どもたちが外で思い切り遊べる環境は以前より限られています。
実際に、子どもの外あそび時間は、この35年間で30%以上減少したというデータもあります。安全に遊べる時間帯や環境を見極めながら、上手に外あそびを取り入れていくことが大切な時代になっています。

真夏でも子どもに外あそびは必要? 太陽の光が支える“心と体の土台”

――猛暑が続くと、「外に出ないほうがいいのか、それとも少しは遊ばせたほうがいいのか」と迷う保護者も多いようです。真夏でも、子どもにとって外あそびは必要なのでしょうか。

前橋先生真夏であっても、子どもにとって外あそびは大切です。ただし、長時間外に出る必要はありません。比較的涼しい時間帯を選んで、短時間でも十分です。日陰でこまめに休憩をとったり、水分を補給したりしながら、安全に配慮して楽しむことが大切ですね。

外あそびの時間は、子どもの心と体、そして社会性を育む大切な土台になります。太陽の光や風、水、土に触れ、友だちと笑い合い、時には失敗しながら遊ぶ時間の中で、子どもたちはさまざまなことを感じ、学んでいきます。こうした日々の積み重ねが、すこやかな成長につながるのです。

外あそびは「睡眠・食事・排便」の好循環をつくる

――外あそびには、具体的にどのようなメリットがありますか。

前橋先生:外で自然光を浴び、体を動かすことは、子どもの生活リズムを整える大切な役割を果たしています。

みなさんも、海や公園で過ごした日は、心地よく疲れて、いつもより早く眠れた経験があるのではないでしょうか。外で自然光を浴びて体を動かすことで、夜はよく眠れ、朝は気持ちよく目覚める。また、朝食がおいしく食べられて、排便のリズムも整っていくのです。

こうして睡眠、食事、排便、運動がよい循環でまわっていくのです。

――外に出る機会が減ると、子どもの生活にもマイナスの影響が出るのでしょうか?

前橋先生:そうですね。夜更かしをして朝起きられず、朝食も食べないまま登園・登校すると、排便のリズムも乱れやすくなります。日中に元気いっぱい体を動かすことが難しくなり、ぼんやりしたり、気持ちが不安定になったりすることもあるかもしれません。

「走る」「跳ぶ」「登る」――外あそびが運動能力の土台を育てる

――身体面では、外あそびによってどのような力が育まれるのでしょうか。

前橋先生:外あそびでは、走る、跳ぶ、登る、投げる、ぶら下がる、バランスをとるなど、全身を使ったさまざまな動きを経験できます。公園を思い切り走ったり、斜面を登ったり、ボールを遠くへ投げたりする中で、腕や脚、背中など全身の筋肉をバランスよく使う力が育まれていくのです。

とくに幼児期前半は、自分の体を支え、移動し、姿勢を保つ力の基礎を育む大切な時期です。よちよち歩きの頃から、かたさや傾斜の違う地面を歩く、しゃがむ、立ち上がるといった経験を重ねることが、将来の運動能力の土台になります。

前橋先生:さらに、外あそびは子どもの近視予防にも役立つことが分かってきました。屋外で明るい自然光を浴びることで、眼球が前後に伸びすぎるのを抑える働きがあるとされ、「外で過ごす時間が長い子どもほど、近視になりにくい」という研究も報告されています。

また、外では足元から遠くの景色まで、さまざまな距離に自然と視線を向けます。スマートフォンやタブレットなどを近くで見続ける時間が減ることもあり、目にやさしい環境といえるでしょう。

猛暑日こそ実践したい! プロが教える「室内アクティあそび」のアイデア

――どうしても暑さ指数(WBGT)が危険領域に達し、外に出られない日もあります。そんなとき、室内あそびで外あそびの要素を補うことはできるのでしょうか?

前橋先生:室内あそびでも、外あそびの要素を補うことはできます。暑さ指数(WBGT)が高い日は、無理に外へ出る必要はありません。ただし、屋外と室内では、自然に生まれる動きや刺激が少し異なるので、外あそびで得られる経験を意識しながら、あそび方を工夫していくことが大切です。

持久力や空間認知、危険回避能力などは、室内だけでは育ちにくいことも。不足しやすい動きを意識してあそびに取り入れるのがおすすめ。提供:NPO法人外あそび推進の会

――室内あそびだけでは、不足しやすい動きもあるのですね。

前橋先生: そうですね。だからこそ、室内では、走る・くぐる(移動)、バランスをとる(平衡)、投げたりつかんだりする(操作)、体を支える(支持)といった動きに加え、リズムあそび、人とのかかわりを意識するとよいでしょう。

たとえば、マット運動やトンネルくぐり、新聞紙あそび、タオル引き、風船あそび、リズム運動、親子ふれあい体操などがおすすめです。あそびの中で自然と体を動かせるような工夫を取り入れることが大切ですね。

――室内あそびならではのメリットもあるのでしょうか。

前橋先生:もちろんあります。限られた空間では、手先を使う細かな動きや、制作あそびにも集中できるため、手先の器用さも養われます。そうした時間は安心感や集中力を育み、情緒の安定にもつながるのです。
また、少人数でルールのあるあそびを楽しめば、人とのかかわりも深まります。室内ならではのよさもたくさんあります。

「暑いから外あそびゼロ」はもったいない! 夏こそ自然とふれあう時間を

――暑い夏だからこそ、保護者が大切にしたいことはなんでしょうか。

前橋先生:大切なのは、その日の暑さや子どもの様子に合わせて、「今日は外へ出られる日か」「今は控えたほうがいい時間か」を大人が見極めることです。暑いからといって、夏の外あそびをゼロにしてしまうのはもったいないです。

外へ出られる日は、涼しい時間帯や日陰を選んで、短い時間でも楽しく過ごす。難しい日は、室内で外あそびに必要な動きを補う。ぜひ柔軟に考えてほしいと思います。

――短時間でも、外あそびには大切な意味があるのですね!

前橋先生:はい。外へ出ると、子どもは大人が気づかないことをたくさん見つけます。「ここの土は冷たい」「この時間は影ができる」「土の下に虫がいる」そうした小さな気づきの積み重ねが、自然への興味や知識を育み、子どもたちの成長にもつながっていくのです。

長い時間でなくてもかまいません。ほんの少しの時間でも、光や風に触れ、自然を感じる経験には大きな意味があるのです。暑さが厳しい時代だからこそ、外あそびをゼロにするのではなく、安全に楽しむ方法を大人も一緒に考えていけたらいいですね。

***

気候や子どもの様子に合わせて、外あそびと室内あそびを上手に使い分けながら、子どもが外で過ごせる機会を守っていきたいですね。

次回は、暑さ指数(WBGT)の見方や外あそびにおすすめの時間帯、熱中症・やけど対策など、夏の外あそびを安全に楽しむためのポイントを前橋先生に伺います!

後編はこちら

https://hugkum.sho.jp/801130

お話を伺ったのは

前橋明 NPO法人外あそび推進の会 代表理事

子どもの健康福祉研究所所長。医学博士。早稲田大学名誉教授。「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会」代表理事。子どもの生活習慣や体力、運動、心身の健康を専門に研究し、外あそびの重要性を広く発信している。著書に『子どもの健全な成長のための 外あそび推進ガイド』(ミネルヴァ書房)など。

◆NPO法人子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会HPはこちら

この記事を書いたのは

牧野未衣菜 ライター

子育てや教育分野を中心に取材・執筆。また、認定NPO法人で、不登校やさまざまな困難を抱える子どもたちと関わっています。2児の母としての子育ての実感も重ねながら、日々の悩みや、子育てのリアルな声を丁寧にすくい上げ、やさしく伝える記事づくりを心がけています。

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