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「読んで聞かせる」から「一緒におしゃべりする」へ
「絵本の読み聞かせはことばの発達にいい」とよく言われますが、では、どんな絵本を、どう読めばいいのでしょうか。今回は言語聴覚士の視点から、0歳から就学前までの年齢別に、ことばの発達の専門家である言語聴覚士の私がおすすめする絵本を6冊ご紹介します。あわせて、家にある絵本にも応用できる「選び方」と「声のかけ方」をまとめました。
文字を正確に読んであげることにとらわれ過ぎないで
日本では「絵本の読み聞かせ」というと、書かれている文字を正確に読んであげる、というイメージが強いようです。もちろんそれも素敵な時間ですが、ことばの発達を促すという意味では、もう一歩、「絵本をきっかけに会話のやり取りをする」ことを意識してみてください。
理想は、大人が文を読むだけでなく、子どもが大人と同じくらい、あるいはそれ以上にたくさん話している状態です。絵本を真ん中に置いて、一緒におしゃべりをする。そんな読み方を頭の片隅に置いていただければと思います。
子どもとおしゃべりを楽しむ絵本の選び方

今回の6冊は、次の3つの基準で選んでいます。この基準に照らせば、家にある絵本の中からも「おしゃべりしやすい一冊」を見つけられます。
(1)何が描いてあるか、一目でわかること
背景がシンプルで、登場するものがはっきり描かれている絵本は、「トマトだね」と大人が指さしやすく、子どもからもことばが出やすくなります。小さい子ほど、この「わかりやすさ」が大切です。
(2)繰り返しがあり、次が予想できること
同じ展開や決まり文句が繰り返される絵本は、子どもに「次はこうなる」という見通しを持たせてくれます。予想が当たる安心感と、ときどき外れる驚き。この行ったり来たりが、理解を前に進めてくれます。
(3)文は短く、絵にはたっぷり情報があること
文章が長いと、読むだけで手一杯になってしまいます。文は短めで、絵の中に「話題の種」がたくさんある絵本ほど、会話が広がります。
0〜1歳におすすめ~『いないいないばああそび』

0歳の赤ちゃんは、人の「顔」――目・鼻・口の配置に強くひきつけられます。この絵本は顔が大きく、インパクトのある絵が続くので、赤ちゃんがとてもよく反応してくれます。
繰り返し読んでいるうちに、子どもは「次にあれが出てくるぞ」と期待するようになります。この「期待して、待つ」経験が記憶の力を育て、「もっとやって」という、人とコミュニケーションを取りたい意欲につながっていきます。
●声かけのヒント
- ページをめくる前に、たっぷり間をとって「……」と待ってみてください。
- 赤ちゃんが笑ったら、「出てきたね」「びっくりしたね」と気持ちをことばにしてあげましょう。
大きくなったら 2歳ごろになったら、「ばあ」の役を子どもに任せてみてください。読み手と聞き手が入れ替わる、初めての体験になります。
1歳前後におすすめ~『おべんとうバス』

いろいろなキャラクターが1つずつ順番に登場する、小さな子にもわかりやすい展開の絵本です。背景が白く、出てくるものがはっきり描かれているので、大人が声をかけやすく、子どもからもことばが出やすい作りになっています。
●声かけのヒント
- 「トマトさん来たね」「はーい」と、登場するたびに一緒に返事をしてみましょう。
- 「次はだれかな?」と、めくる前にひと呼吸おいてみてください。
- 実際のお弁当を食べるときに、「絵本にいたね」と結びつけてあげると、絵本のことばが生活の場面とつながります。
大きくなったら 3歳ごろには、「好きなものはどれ?」「順番おぼえてる?」と、絵本を閉じてからも話題にできます。
1〜2歳におすすめ~『くらいくらい』

福音館書店
暗闇の中にシルエットの動物が現れ、決まったフレーズが繰り返される絵本です。
子どもの理解は、「パターンの繰り返し」の中で次の展開を予想し、それが当たったり、外れたりすることで進んでいきます。この絵本には、最後に少しだけ予想を裏切る仕掛けがあり、そこが子どもにとって「おっ?」となる楽しいポイントです。
●声かけのヒント
- シルエットを見て、「だれかな?」と当てっこをしてみましょう。
- 決まり文句を、子どもと声を合わせて言ってみてください。
- 最後のページでは、「あれ?」と一緒に驚いてあげましょう。
大きくなったら 3〜4歳なら、「なんで暗いのかな?」「電気をつけたらどうなった?」と、理由や変化をことばにする練習に使えます。
2歳後半〜3歳におすすめ~『おおきなかぶ』

繰り返し絵本の王道です。一見すると大人びた絵柄なのですが、子どもたちは不思議なほど夢中になります。
ここでことばを引き出すコツをひとつ。毎回出てくるお決まりのフレーズ(かぶがなかなか抜けない、あの一言)を、子どもの担当にしてみてください。大人が話を進め、決まり文句のところで子どもが声を合わせます。この「役割分担」の読み方は、子どもが自分から声を出すきっかけとして、本当におすすめです。
●声かけのヒント
- 「次はだれを呼ぶ?」と、登場順を予想してもらいましょう。
- 「うんとこしょ」のところでは、一緒に体を引っぱる動きをつけてみてください。
- 読み終わってから、「だれが一番小さかった?」と振り返ってみましょう。
大きくなったら 4〜5歳になったら、登場人物を並べて「はじめに」「次に」「最後に」と順序のことばでお話を再現する遊びに発展させられます。
2歳後半〜3歳におすすめ~『コロちゃんはどこ?』

ドアやベッド、ピアノの下などをめくって、子犬のコロちゃんを探す仕掛け絵本です。部屋の中の身近なものの名前に触れられるほか、「後ろ」「下」「中」といった場所や空間を表すことばに自然に出合えます。
●声かけのヒント
- めくる前に、「だれがいると思う?」とクイズにしてみましょう。
- 見つけたら、「ピアノの下にいたね」と、場所のことばをつけて言い直してあげてください。
- 「ドアの後ろ」「ベッドの下」と、めくった場所を指さしながら確認してみましょう。
大きくなったら 4歳以降は、家の中で実際に「テーブルの下」「カーテンの後ろ」とかくれんぼをして、絵本で出会った位置のことばを体で使ってみてください。
3〜6歳におすすめ~『14ひきのあさごはん』

3歳を過ぎると、繰り返しの要素が少ない、ストーリーのある絵本をじっくり理解できるようになっていきます。そんな時期におすすめなのがこのシリーズです。
文章は短めですが、絵にはとても細かく描き込まれています。文字を読み終えたあとも、絵をきっかけに会話を広げていくと、一冊の中から話題の種がいくつも見つかります。
●声かけのヒント
- 「この子、何してるのかな?」と、絵の中の一匹に注目してみましょう。
- 「眠そうな子がいるね。どうしてかな?」と、理由を想像してもらいましょう。
- 「朝ごはん、何を作ってるんだろう?」と、子ども自身の経験と結びつけてみてください。
大きくなったら 5〜6歳なら、絵の中のねずみたちに名前をつけて、「今日はだれの話にする?」と自分でお話を作ってもらうのも楽しい遊びです。
読み聞かせで避けたい、3つの落とし穴
最後に、ことばを育てるという視点で、つい陥りがちなことを3つ挙げておきます。
「最後まで読み切る」にこだわりすぎないこと
途中で子どもがページを戻したり、一つの絵に釘づけになったりするのは、興味の表れです。お話を進めることより、そこで交わされる会話を優先してかまいません。
子どもの「脱線」を止めないこと
「これ、こうえんにあった!」と絵本から話が飛んだら、それは大成功です。絵本は会話のきっかけであって、ゴールではありません。
文字を指さして読ませようとしないこと
小学校に入る前の絵本の時間は、文字ではなく、絵とお話を楽しむ時間です。読める・読めないは、この時期のことばの育ちとは別の話です。今は「たくさんしゃべった」で十分です。
読み方のイメージを動画で紹介しています
6冊に共通しているのは、どれも「大人が読む」だけでなく「子どもがしゃべりたくなる」仕掛けを持っていることです。年齢はあくまで目安ですので、お子さんの反応を見ながら、気に入った一冊をぜひ何度も一緒に楽しんでみてください。
今回の内容は、動画でも解説しています。実際の絵本の様子や読み方のイメージは、こちらからご覧ください。
教えてくれのは
慶應義塾大学文学部卒。養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務ののち独立し「ことばの相談室ことり」を設立。現在、東京都台東区と熊本市中央区に店舗を構える。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、大人の発音矯正。著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)、『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)がある。