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「思春期」を怖がらないで。2歳のイヤイヤ期よりも付き合いやすい?
――きょうだいで上の子がいない場合は、親にとっても思春期の子どもを受け止めるのは初めてのことです。女の子なら胸がふくらんできたり、男の子ならヒゲらしきものがはえてきたり。無邪気にじゃれ合ってきた子どもたちの変化に、親が受け止めきれないこともありそうです。
リズ先生 変化が大きい時期は、保護者も戸惑いますよね。でも、怖がらずに「楽しい時期」だと思って、喜びいっぱいに迎えていただけたらいいなぁ、と思います。
思い起こせば、2歳くらいのときに、親の言うことに反発する時期がありますね。アメリカでは「Terrible Twos」、おそろしい2歳なんて、ひどい言い方をしますよね(笑)。
2歳頃には身体能力が高くなり、手先も器用になってくる。でも、全部が大人と同じではないからうまくできないこともあるんだけれど、心はどんどん成長して「自分でやる!」気持ちが大きくなり、でもうまくできないと大泣きする、親が手を貸そうとすると全部「イヤ!」と言う。それが発達に重要な時期だって言われますね。体と心、脳の発達がさまざまに起きて、自分でも対処しきれないくらいの時期です。
思春期は、人間の発達で言うと、0~3歳のその時期に次ぐ、ダイナミックな発達の時期です。ただ、この時期は小さい頃と違って、男女それぞれに違う性ホルモンが分泌されることで、それぞれに発達するということです。
まず、体の変化が小学校時代に現れてきますね。「二次性徴」は女子は平均9歳頃から、男子は11歳頃から始まると言われますが、女子のほうが思春期の始まりは男子よりだいたい1.5歳程度早いようで、それは精神面にも関係してきます。この時期、女の子のほうが大人っぽく見えることが多いですね。

思春期の「体の変化が早く始まったら」念のため受診をして
――具体的に言うと、どんな変化が?
リズ先生 女の子の場合、平均初経は12歳くらいと言われ、胸の発達は9、10歳くらいからスタートする子が多いです。男の子はペニスや睾丸が大きくなってきて、射精が始まります。ヒゲらしいものがはえてきたり、声変わりも始まりますよね。この頃には男女ともに脇や陰部に発毛もあります。
ここでちょっと気にとめてほしいのは、女の子では8歳未満で胸の発達が、10歳未満で生理が始まったら、きちんと小児科を受診することなんです。同じく男の子でも9歳未満で性器の発達や発毛があったら受診していただきたいです。
――なぜですか?
リズ先生 思春期の体や心の発達には個人差があって、ぴったり同じ時期ではないですが、早すぎるということは、性ホルモンが早い時期に分泌されるということです。多くは問題がないのですが、身長の伸びと関係することもありますし、まれですけれど中には腫瘍が関係していることもあります。
心配があったら、いつでも小児科医に相談してくださいね。
――未就学のときにはしょっちゅう受診していた小児科も、小学校中高学年になると、あまり行かなくなりますね。まして、風邪や腹痛などの症状がないと受診しづらいと思ってしまいます。
リズ先生 そうですよね。でも、大きくなっても、小児科とは付き合ってほしいんです。「こんなことで受診してもいいのかしら? これ正常かなって聞きたいだけなんだけど」と思うかもしれないけれど、その動機はとっても重要な小児科医とのタッチポイントです。「大丈夫ですよ」ってなにもなくて帰ってきてもいい。安心できることが大切です。
ただ、症状が何もなくて受診すると「健診」ということになり、保険診療にはならないので注意してくださいね。二次性徴の時期は体のニオイも変わってくるので、「急にニオイがするけれど正常ですか?」とか、「胸が成長しているみたいで痛いと言っていますが」など、何らかの症状をもとに受診するといいですね。

思春期の対応は0歳から。男の子にも「ママのナプキン買ってきて」
――思春期の体について、異常を感じなくても、保護者は変化を受け止めて、子どもにも声かけをしていくべきと思いますが、正直なところ、どう対応していいかわからない保護者も多いと思います。
リズ先生 まず、性の成長の話はナイショの話、言いにくい話、というのを徐々に変えていきましょう。私の子ども時代は、月経のことすら、親が子どもにきちんと伝えていなかった。でも、体が変わっていくことを恥ずかしいこと、みたいに思う必要はぜんぜんないですよね。心や体の変化のことを伝える準備を、0歳からスタートして、保育園・幼稚園くらいのときから、頻繁に話しましょう。
女の子の月経の話は、女子同士でしか話さないってなっていることは多いですが、男の子も女性と付き合い、親になっていくのですから、月経のことは知っておかないといけません。月経についての話は男女差をなくしていきましょう。
小学生のうちから、男の子にも、「友達の中で生理になっている子がいたら、やさしくしてあげてね。保健室で休みたいようなら支援してあげて」と。みんなの課題なんだよ、というふうにしたいです。ママにも月経がある、つらいときもある、という話もします。オープンに「生理用のナプキンを買ってきて」とママが男の子に頼んでみるのもいいでしょう。
月経や射精に本人が驚く前に、「保護者が変化を察知」して何度も具体的に説明
リズ先生 女の子の場合は、月経になる前に、お子さんの体の変化を察知しましょう。胸の発達は、初経の2年前くらいからスタートします。9歳、10歳くらいで胸の発達がスタートした時点で、「念のために、ナプキンも持っておこうね」と用意して実物を見せて、使い方も教えておきましょう。
そこから2年後くらいに脇に毛がはえてきた時点で、「あと半年くらいで初めての生理が来るかもね」と話しておきます。洗濯のときにお子さんの下着を見て、おりものがついているとなったら、初経までの期間は短いです。もう一度しっかりと月経の話をしておきましょう。
月経は、始まっても数か月こない、不正出血がある、月経痛があるなど、最初は本人が不安と感じることがいっぱいです。保護者に自然に話せる環境を作りたいですね。最初の頃は、月経の記録をつけておくと、受診の大きな助けになります。今はいろんなアプリがあるから、保護者がアプリを紹介したり、記録を手伝ってあげてもいいですね。
男の子の場合は、10歳から11歳くらいで母親とお風呂に入らなくなってくるかもしれません。でもお父さんとお風呂に入ったときなどによく観察してもらって、「そろそろ朝勃起するのも当然なんだよ、驚かないでね」と先に言っておくことが大切です。
「ときどき射精してパンツが汚れるのは当然のことなんだよ、隠さず言ってね」と、ジェンダー問わずお父さんにもお母さんにも言えるようにしましょう。
――月経や射精の話は親のほうがためらうことが多いですが、それが思春期の子を苦しめる一端にもなるんですね。今のうちから子どもたちとジェンダー問わず、思春期の体の話をしておくことの大切さを教えてもらいました。後編では、リズ先生に思春期の「心」について伺います。
後編はこちら
お話を聞いたのは
アメリカ人の父と日本人の母のもと神戸に生まれ、ハーバード大学で医学、大学院で人類学を学び、学校医に。長くアメリカを拠点に研究者・医師として活動し、ピッツバーグ大学小児科・公衆衛生学名誉教授。2011~2023年、思春期・若年成人医療部長。国立成育医療研究センターでは、24歳までのAYA世代を含む思春期臨床の必要性を提言。また女性の健康をトータルに相談できる女性の健康総合センター開設に向けて尽力している。
この記事を書いたのは
インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)