2歳になっても発語がない息子。小児発達専門保健師の母が実践した、ことばの発達を促す関わり方【体験談】

小児発達専門保健師の佐々木みかさんには、知的障がいの15歳の男の子がいます。息子さんは、2歳になっても発語がなく、佐々木さんはことばの発達を促すためにさまざまな取り組みをしたそうです。乳幼児期に、特に大切にしていた関わり方について教えてもらいました。

2歳になっても発語がほとんどなかった

――お子さんは2歳半で知的障がいと診断されたそうですが、乳児期の様子を教えてください。

佐々木さん 息子は生まれたときから障害があり、出産した病院では「成長に伴い、運動機能に遅れが出る」と言われていました。

赤ちゃんのころは、よく泣くし、泣き方も激しいんです。抱っこしてあやそうとすると、反り返りが強くて抱っこもしづらくて…。哺乳量も少なく、授乳に1時間ぐらいかかっていて…。私自身の体調も優れずに、当時は子育てが本当につらかったです。

※画像はイメージです

――ことばの発達はどうでしたか?

佐々木さん 2歳になっても「ママ」「まんま」などの発語がなく、「あー」などの喃語が中心でした。指差しはしましたが、バイバイと手を振るなど、大人のまねをすることはありませんでした。

3歳から自宅で、ことばの療育をスタート

――ことばの療育には通われていたのでしょうか。

佐々木さん 10年以上前のことですが、子どもをみる言語聴覚士が少なくて、なかなかことばの療育につながらなかったんです。申し込んでも、空きがないと言われました。3歳になってやっとたどり着いたのが、民間の言語療法と家庭療育です。家庭療育は心理学のABA(応用行動分析)を専門にする先生が来てくれました。市のことばの療育に通えたのは5歳になってからです。

子どもの視線や指差し、表情を見てコミュニケーション

――ことばの発達を促すために、佐々木さん自身は、お子さんとどのように関わったのでしょうか?

佐々木さん いろいろなことに挑戦しました。その中で、私が最も大切にしていたのは、「今、何を感じて、何を伝えようとしているのかな?」という視点をもって息子の様子を見ることです。息子の視線や指差し、表情、「あー」「うー」といった声を聞きながら、「わんわんいたね」「ブーブー来たね」と、息子と会話をしました。

また息子は、ゾウが好きなので動物園にもよく行きました。好きな物や興味がある物は、息子もイキイキと反応してくれるのでコミュニケーションが取りやすいんです。

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先回りしないで、子どもからの発信を待とう

――それはいいアイデアですね! ほかに心がけていたことはありますか。

佐々木さん 「〇〇して!」「△△をちょうだい!」など、してほしいことを自分から発信できるように、私は先回りしないことを心がけていました。息子が冷蔵庫を見たり、指を差したりしてから「お茶、いる?」と聞くような感じです。親が先回りしすぎると、子どもから発信する機会は減ってしまうと思います。

また「おはよう」「いただきます」「靴、履くよ」「外に行こう」「お風呂だよ」など、毎日の生活の中で同じことばを繰り返し伝えました。息子の場合は、ことばで「靴、履くよ」と伝えるだけでなく、実際に靴を見せたほうが理解しやすいので、視覚的サポートも取り入れました。「おはよう」と言ってハグするなど、スキンシップもいっぱいしました。

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冷蔵庫に絵カードを貼って、子どもから「ちょうだい!」が伝えられるように

――お子さんとコミュニケーションを取るために、支援グッズなどは使われましたか。

佐々木さん 私は、PECSという絵カードを取り入れていました。PECSは、例えば子ども自身が「ジュースが飲みたい」と思ったときに、自分からカードを手に取って、相手に渡すことで要求を伝えられる絵カードです。子どもの「伝えたい!」という気持ちを、行動につなげていきます。

PECS以外には、我が家は、冷蔵庫に「ジュース」「お菓子」「水」などの絵カードをマグネットで貼って、子どもから「ちょうだい!」と伝えられるようにしました。

1日の予定を絵カードで示して、不安を軽減

――絵カードは、ほかにどのような場面で使いましたか。

佐々木さん 息子は見通しがもてないと不安になりやすいので、ボードに絵カードを面テープで貼って、「保育園」→「ことばの療育」→「おうちに帰る」などの1日の流れがわかるようにしました。

小学生になってからは、1日の流れではなく、1週間の予定がわかるようにしました。目で見て予定が確認できると、安心して行動できるようです。

ことばの発達には、全身や指先を使うあそびも大切

――いろいろな取り組みが参考になります。振り返ると、「実は、これも大切だった!」と思うものはありますか。

佐々木さん ことばの発達がゆっくりだと、ことばを促すことにフォーカスしがちですが、全身遊びやブロックなど手指を使う遊び、粘土、水、絵の具、砂など、いろいろな感触に触れることも、実は大切です。ことばの発達には、さまざまな要素が密接につながっているんです。

1人で悩みを抱え込まず、保健センターや保育園の先生などに相談

――ことばの発達に悩んだとき、佐々木さんは誰に相談されていましたか。

佐々木さん 私自身も子育てに悩んでいた時期があります。子どもが保育園に通っていたころは、ファミリーサポートを頼んでいて、担当の方に子育ての話などを聞いてもらい、心の支えになってもらいました。核家族なので、頼れる人が身近にいなかったんです。

「サポート受けたい」「子育てがつらい」などの悩みは、地域の保健センターで相談もできます。

ことばの発達がゆっくりだと、つい周りの子と比べてしまうこともあるでしょうが、「1~2カ月前よりも指差しで教えてくれることが増えた」など、その子自身の成長を見てほしいと思います。不安なときは、保育園・幼稚園の先生や療育の担当者など、子どもと関わりが深い人に聞いてみましょう。ママ・パパが気づかなかった、子どもの成長を教えてくれるかもしれません。

また医師の許可が必要ですが、訪問看護でサポートを受けられるケースもあります。

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「早く話せるように!」と焦らないで!

――ママ・パパだけで、悩みを抱え込まないことが大切ですね。最後に佐々木さんの経験から、子どものことばの発達に悩んでいるママ・パパにメッセージをお願いします。

佐々木さん 私自身も不安でいっぱいで、乳幼児期は「ことばの発達を促すために、もっと何かしないと!」と焦ったり、周りの子と比べて落ち込んだりしていました。振り返ると、「早く話せるように!」と、焦りすぎていました。「早く話せるように!」「語彙を増やそう」と練習モードになると、ママ・パパも、子どもも追い込まれてしまいます。

ママ・パパに大切にしてほしいのは、「ことばを介さなくても視線や指差し、表情から、ぼく(私)の思いは伝わる!」「伝わるって楽しい!」という経験を増やすことです。そうした積み重ねが、ことばやコミュニケーションを育む土台になっていくと思います。

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お話を伺ったのは

佐々木みか ケニー訪問看護ステーション代表

小児発達専門保健師、看護師。「障がいや発達が気がかりな子の発達相談」、「発達に遅れや不安があるお子さんとお母さんの親子教室」などを運営。

またケニー訪問看護ステーション(名古屋市)の代表を務め、訪問看護で産前・産後の母子サポートや知的障がい・発達障がい・不登校対応などを行う。

この記事を書いたのは

麻生珠恵 ライター

子育てや子どもの病気、事故を中心に取材・執筆を行う。情報発信によって、病気の予防・早期発見、事故予防につながる記事作りを心がけています。2 人の子どもがいます。

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