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英語の成績はよかったのに、留学初日に挫折

学生時代は英語が得意で、テストでも良い点がとれていたという川﨑さん。18歳でワクワクしながらアメリカ留学へ旅立ったものの、早速行きの機内で挫折を味わったそう。
「英語は得意な方だったのですが、How are you? というあいさつにすら、なんて答えるのが正解!? と考えすぎて言葉に詰まってしまって。たしか、OK, OKみたいに返していたと思うんですけど(笑)」
なぜ、話せなかったのでしょうか。
「今振り返ると、英語を使った経験がなかったから、ということにつきますね。楽器やスポーツ、料理と同じで、やり方を知っているだけではできるようにならない。英語は机上の勉強になりがちですが、話す、聞くという実践をやらないことには、やっぱり話せるようにはならないんですよ」
リスニングテストならアナウンサーのようなきれいな英語が流れてきますが、実際の会話では、日本語の「あざす!(ありがとうございます)」のような崩れた言い方も当たり前に飛び交います。
「留学中、図書館で勉強していたらクラスメイトに『アラキ!』と言われて、誰のこと? と何度も聞き直すと、『I like it』だとわかって(笑)。こんな簡単な英語も聞き取れないのかと落ち込みました。今回の本は初心者の方だけでなく、当時の私のように、単語も文法も知っているのに口から出てこないという方にもぜひ読んでほしくて書いた一冊です」

言語は「知る」「できる」「自動化」の3段階で身に付く
「言語の習得にはもちろんセンスもありますが、それより学び方やモチベーションの影響のほうが大きいと思います」
川﨑さんによると、言語は「知る」「できる」「自動化」の3段階で身に付いていくそうです。
「学校で英語を習うだけだと、いわば『知る』で止まっているんですね。口に出して伝えるという『できる』の経験がない。それなのに、話せないのは『知る』が足りないからだと思って、さらに単語や文法を詰め込んでしまう人が多いんです」
「知る」べきことは意外に少ない
もちろん、「知る」は必要。でも知るべきことは、思っているよりずっと少ないそう。英語は100万語近くあるとも言われますが、語彙研究によると、会話の最大9割はたった721語の繰り返しなのだとか。
そして、単語とあわせて持っておきたいのが、I like~、It’s~のような、すぐに口から出せる簡単な型。いくつか手持ちがあれば、言いたいことをそこに当てはめるだけで話せます。

型のつくり方は、本で「3ます」として紹介しています。「誰が→どうする→何を」か「誰→イコール→何」の3つの空欄に知っている単語を入れるだけで、文になります。たとえば「I→like→coffee.」、「It→is→hot.」などです。
文法は、用語より「イメージ」で覚える
川﨑さんは自身の英語スクールの受講生には、「単語帳と文法書は一回しまってください」と伝えているそう。今回の本でも難しい文法用語は使わず、イメージで説明しています。

たとえば、canは「まる、オッケーくらいのニュアンス」。文法用語で説明されるより、すっと頭に入ります。
「文法用語は言語学者が整理して後から付けたものなので、最初から覚えようとしなくても大丈夫。canなら『まる』というように、その言葉の中心にあるイメージを一つ覚えて、使ってみてください。一つ使えるようになってから、ほかの使い方に広げていけばいいんです」
リスニングは、音のルールを知る
リスニングにも、押さえておきたい音のルールがあります。さきほどの「アラキ!」のように、英語は音がつながったり弱くなったりして、文字通りには聞こえません。ルールを知っておくだけで、ぐっと聞こえやすくなります。
「実はネイティブ同士も、全部聞き取れているわけではないんですよ。話のテーマや文法から脳が勝手に補っているので、一語一句聞き取れなくても大丈夫なんです」
「できる」は、知っている英語を口に出すことから
知るべきことを押さえたら、次は「できる」へ。できる状態に進むには、「実際に言葉に出すこと」。話す相手がいなければ、ひとりごとやAI相手でもOKだそう。
最初の一歩に悩んだら、目に見えたものを単語にするところから始めるのがおすすめ。パソコンならlaptop、コップならcup。それにIt’sを付ければ、It’s a cup. と、もう文になります。
「そんな簡単な英語でいいの? と思うかもしれませんが、たとえばオバマ元大統領のスピーチも、本当にシンプルな言葉ばかりなんですよ。そのほうがわかりやすいし、伝わるんです。逆に難しい単語や文法でガチガチに固めて話すと、文学好きな人なのかな? という印象になってしまうこともあります」
ポイントは、日本語から直訳しないこと
口に出すとき、つい日本語の文を頭に浮かべて英語に訳そうとしがちです。でも川﨑さんによると、それが詰まってしまう原因なのだとか。
「頭に浮かんだ絵を、日本語を挟まずにそのまま英語にする感覚ですね。日本語が浮かんでしまったら、一度イメージに戻ってみてください。たとえば『今日は体が重い』なら、どういう状態かを思い浮かべると、要は『疲れている』。それなら『I’m tired』と中学英語で言えますよ。『会社の体力がない』も、お金がないのか、人が少ないのかをはっきりさせれば、知っている英語で言い換えやすくなります。英語を話せる人は、基本的にそうしていると思います」
聞く練習は、意味のわかる簡単な文章から
聞く練習も、まずはやさしいものから。研究では、出てくる単語の98%を知っている教材を聞くのがいいとされています。
「日本人は難しいものを聞きすぎだとよく言われるんですよ。そもそも意味がわからない文章は、お経と同じで、何度聞いても意味がわかるようにはなりません。また、読むことも大事です。読んだほうが音と意味がつながるので、聞くと読むはぜひ両方やってください」
自分に合うレベルを探しやすいのが、段階別の読み物「Graded Readers」や、やさしい英語のニュースサイト「News in Levels」。生成AIに好きな話題でやさしい英文を作って読み上げてもらうのも一つの方法です。
「自動化」は、同じことの繰り返しでつくる
言えたと思ったのに翌日にはもう出てこないのも、英会話あるある。これは「知る」「できる」の次の段階、考えなくても出てくる「自動化」がまだだから。
「まずは自己紹介をスラスラ言えるようにして、次は趣味、週末の過ごし方、仕事の話……とトピックを増やしてみてください。徐々にコツがつかめて、話せるようになるまでのスピードも上がっていきますよ」
時間は、週末にまとめて2時間より、朝・昼・夜に10分ずつのほうがおすすめだそうです。
「たとえば朝、生成AIに自己紹介を自分の知っている単語で直してもらって、昼にそれを思い出して、夜に子どもに話してみる。これをひたすら繰り返すんですね。朝は単語、昼は文法、夜はリスニング、と次々に新しいことに手を出すより、同じことを繰り返したほうが身に付きます。ピアノと一緒で、次々に新しい曲を弾いても上達しないですよね」
ママパパも間に合う? 親子で英会話を学ぶヒント

やることはシンプル。とはいえ、30代、40代から始めて身に付くのでしょうか。
「よく『子どもは遠くまで行ける、大人は早く行ける』と言われます。小さい頃から始めたほうがネイティブに近づきやすいのは確か。でも、大人は理屈で理解できるので、ルールがわかれば使えるようになるのが早い。発音もルールを知ってから練習すると、聞き取りまで伸びやすくなります。それに、仕事や旅行など使う目的がはっきりしていることが多いので、何をやればいいか逆算しやすいんですよ」
子育て中なら、「子どもと一緒に学ぶこと」も目的の一つになりえます。そこから逆算すると、まず覚えたいのは、子どもとの毎日で使えるフレーズ。たとえば「こっちに来て」なら「Come here.」。ジェスチャーつきで2、3回言えば子どもも覚えて、親子で使えるフレーズが少しずつ増えていきます。言い方に迷ったら、生成AIに聞けば音声も出してくれます。
英語学習が続く家庭に共通する3つのこと
英語が続く家庭には、3つの共通点があるそう。1つめは「自分で選べる」こと。2つめは「できた」と感じられること。3つめは「人や文化とのつながり」があること。
「子どもが『自分で選べる』ようにするには、親が教材を決めるのではなく、音の出る絵本や動画、歌などをいくつか置いておいて、手に取って好きなものを選べるようにしてあげるといいですね。『できた』と感じられるようにするには、難しすぎるものは避けて、旅行先でひと言使えた、学校でちょっと通じた、という小さな成功体験を積ませてあげる。『人や文化とのつながり』をつくるには、使えたら褒めてあげたり、海外の人がいそうな場所に出かけてみたり、YouTubeで海外の暮らしに触れたり。子どもはもちろん、大人もこの3つがそろうと続きます」
親の英語は完璧じゃなくていい
英語が苦手なママやパパのなかには、子どもと一緒に学ぶとなると、間違えたらどうしよう、変な発音が移ったらどうしよう、と心配になる人もいるかもしれません。
「間違えても大丈夫です。1日30分程度なら親のアクセントが移ることもそうないですし、わからなければ『一緒に調べてみよう』でいいんです。親が学んでいる姿を見せるのは、子どもにとってもいい学びになりますよ。英語は、親子で一緒に成長するためのツール。難しく考えずに、まずは一緒にやってみてください」
著書をチェック
今回のお話を、さらに詳しく解説しているのが、10月22日発売のこの本。人が第二言語をどう身につけるのかを研究する「第二言語習得研究」をベースに、知っている英語を実際の会話で「使える」ようにする方法をマンガで解説。中学英語の文法をおさらいしながら、「自分なら何と言うか」を考えて口に出すところまで、ひとりで実践できます。
会話の最大9割を占める「721単語」、朝起きてから寝るまで使える「日常フレーズ100」、音がつながる・変化する英語を集めた「英語の音100」をネイティブ音声つきで収録。英語が苦手なママやパパが、子どもと一緒に始める最初の一冊にもおすすめです。
教えてくれたのは
最速英語習得の専門家・株式会社グロバリ代表。文部科学省中央教育審議会専門委員。「第二言語習得論」と「コミュニケーション学」を融合した独自メソッドで10年以上にわたり、5000人以上を指導。18歳でアメリカに留学するも、英会話力ゼロで絶望。この体験をもとに日本人が効率よく英語を習得する方法を追求する。TESOL(英語教授法)修士号取得。
「英語力も人生も揺るぎないものに」をミッションに、英語教育プログラムの開発・監修、教員・英語講師向けの研修など幅広く活躍している。
著書に『英語が日本語みたいに出てくる頭のつくり方 第二言語習得論の専門家が教える「英語の正しい学習法」』(日本実業出版社)、『思ったことを英語にできる 3ます英語』(サンマーク出版)がある。
この記事を書いたのは
通信会社に約6年間勤務した後、ライターに転身。旅行、IT、インタビューなどを中心に執筆。一児の母で、子どもとのおでかけや子連れ旅行の経験も記事づくりに生かしています。出身地・山梨県の「やまなし大使」。現在は川崎市在住。
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