これからの「頭のいい子」は料理上手、オタク?東大・ハーバード・開成で教えてわかった結論

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頭のいい、優秀な子に育ってほしい…。世間のパパ・ママは誰もがそう願うもの。そのための教育論やメソッドなどが氾濫するなかで、『ハーバード・東大・開成で教えてわかった 「頭がいい子」の親がしている60のこと』の著者・柳沢幸雄先生は、斬新かつ明快な子育て論を提唱されています。

コロナ禍・IT化・国際社会など、これからの時代を生きる子たちのために「親はどう考え、何をすべきか」、お話をうかがいました。

子育て感覚を更新して、“本当に優秀な子”に育てよう

学校の成績が頭のよさを決めるのではない

“頭のいい子”に育てたいけれど、学期ごとの成績表を見れば、「ムリ…」。もっと予習も復習もさせなくちゃ、と焦ってしまいます。が、元・開成中学・高校の校長(現・北鎌倉女子学園学園長)の柳沢幸雄先生は、断言します。

「学校の成績で、頭がいいかどうかを決めなくていい!」

 開成といえば、中学受験の最難関男子校として名をはせています。

卒業生の東大入学者では毎年1位を誇り、このコロナ禍でも万全の体勢で勉強をし「多分今年度も1位を継続するでしょうね」と、柳沢先生も予想します。

なのに、その先生が主張するのは、

「学校の成績より、いかに自己肯定感と自信を育てられるかです。2020年は、これまでに経験したことのない事態が、次々に起こりました。新型コロナウイルスの感染拡大、学校休校にパパママのリモート勤務、オンライン授業などの自学自習……。そのたびに大きな判断を迫られたでしょう? これから先だって、思わぬことがたくさん起こり、瞬時に自信を持って判断することが求められます。子どもたちは、そんな社会を生きていくのです」

世界中から集めた知識や技術を使って「判断」する力が重要

たしかに、そう言われてみればそうです。しかし、なんだか、雲をつかむような話……。

やっぱり、学校ではテストで満点を取る子、成績がいい子が求められていませんか?

 「いやいや、学校だって変わってきているんですよ。2020年度から始まった新学習指導要領も、『思考力・判断力・表現力を育て、生きていく力を養う』ことが目標です。
は、単元の中のひとつがわからないだけで、右往左往しなくていいと思っています。もっと大きな判断力をつけ人間を、学校でも家庭でも育てるべきですし、社会はそういう“頭がいい子”を求めていますよ」

 でも、どうやって判断力や決断力を身につけたらいいのでしょうか? 家庭でできることはあるの? むしろ漢字の書き取りや計算の予習復習をさせるほうが簡単かも……。

 すると、柳沢先生が「今すぐ家庭でできる“頭がいい子を育てる方法”」をいくつか教えてくれました。
えっ!? それですか??

 1. 料理が上手にできる子に育てる

料理上手が“頭がいい子”とどうつながるの?

「家庭経営がうまくできるってことは、ビジネス社会でリーダーになることと、すごく似てるんですよ」

と、柳沢先生。柳沢先生がすすめるのは、

「まずは、料理。料理は家事の基本ですし、特に和食を作れるようになると、どの国に行って料理を披露しても喜ばれる。世界の人と仲良くなれるチャンスを作ります」。

それも、親が用意した食材を、レシピどおりに調理するビギナーの段階から、献立を考え、買い物リストを作り、買い物に行って調理し、片付けるところまでを“任せる”ことが大事だと。

「この一連の作業は、仕事で企画書を作って事業をまとめあげる事業経営と似ています。最初から最後まで自分でやることで、大きな達成感と自信を得ます」

 料理に取り組むとき、口出しはなるべくしない

親がすべきことは、

「黙って見ていること。質問されたら最小限答え、ケガや火事などの危険があるときだけ声をかける。小学校34年生ならなんとかできるでしょう。火を使うのが心配なら、電子レンジで調理するのもいいと思いますよ」。

2. オタクをきわめる子に育てる

学校の成績もスポーツも気立てのよさも、何もかも、“平均以上”であってほしい、と親は思いがちですが。柳沢先生は、

「そういう“平均的ないい子”より、オタクのほうがこれからは強いです」。

オタクとは、自分の好きな事柄や興味のある分野に、極端に傾倒する人のことを指します。まあ、どっちかといえば、一般的に悪口ですが…。

「昔は営業や企画や販売や総務と、社内の部署を総なめで渡り歩いてきた人が社長になったでしょう? でも、今は『人事のプロフェッショナル』『ITのエキスパート』がCEOになる。会社の業態に合った人がトップに選ばれ、会社の業態が変われば、トップは別の企業に転職してそこでトップになる時代です」

そういうスペシャリスト資質は、小さい頃から持っていたほうがいい。だから、学校の教科の全部が平均的にできるより、“理科の生物にものすごく詳しい” “歴史オタク”で、その分野をどんどん伸ばしていくほうがいいのだそうです。

「苦手な分野は、最低限クリアして、好きな分野をとことんやらせましょう。生物が好きなら、動物園や水族館にどんどん連れて行ってあげる。歴史が好きなら歴史博物館。その分野の本も好きなだけ買ってあげればいい」

好きな分野を発展させて将来に結びつける

それでいったい何者になれるの? 「サッカーが好きでもJリーガーになれるわけではない」と思うかもしれません。

「サッカーのプレイヤーになれなくても、シューズの開発者、チーム経営スタッフ、スポーツドクターなど、サッカーが好きだからこそできる仕事はたくさんあります。そして、そういう子に別の仕事をむりやりやらせるより、きっといきいきと取り組める。
だから、子どもが今夢中になっていることを、止めないであげてください。とことんやらせて、そこから何に発展していくか、楽しみに見ていましょう」

3. ゲームオタクの子も頭ごなしに叱らない

サッカーオタク、バイオリンオタク、なんていうのはいいけれど、ゲームオタクだけはダメ! と言いたいですよね。でも、柳沢先生は「ゲームオタク、これこそ将来性は確実」と言います。

「これからの世の中、あらゆることにコンピュータが関わります。文章を書くのも計算もすでにそうだし、お金の支払いも買い物も、物の製造も、全部でしょう? これらのすべてにプログラミングが必要なので、プログラミングができる人はますます必要とされ、社会から引く手あまたです。ゲームが得意な子はプログラミングもすぐに理解しますから、きっと食いっぱぐれないですよ」

与えられたゲームを消費するより制作者になろう

子どもがゲームばっかりやっているのは困るけれど、社会に出るための経験としては重要ということ。

「開成の生徒も、ゲーム好きは多いですよ。は『うんとやれ!』と言っていました。ゲームの面白さの真髄をとことん理解しろ、と。ただ、消費者としてただ消費するだけでなく、ゲームの面白さを作り出す制作者になって社会に貢献しろ、とも言いました」

中には、アプリ甲子園で金賞を取る生徒もいたそうです。

「そんな子が、将来、社会に貢献するプログラマーになるんじゃないかなと期待しています」

4. 授業中うるさくてもいい!

授業参観などでは、静かに先生の話を聞いている子が“頭のいい子”と見なされがちです。それは、” 先生が授業をし、生徒が聞く”という受け身の授業のときに、先生の講義を聞き漏らさないように静かに聞く姿勢がよいとされているからです。

「しかし、クラス全体で考えるような授業や、先生が質問をして生徒が挙手して答えるような授業では、生徒はうるさくていい。現に、開成の授業では、『わかった!』『先生、それってこういう意味ですか?』『え、違うんじゃないかな?』など、うるさいですよ。教師もそれを大いによしと、受け入れています」

声を出せば、おのずと頭に入る。先生に質問をすれば、答えてくれて、さらに頭に入る。理解が深くなるのです。

 授業に積極的に取り組むからうるさい

学校でアクティブ・ラーニングの授業が始まりましたが、まさにこうした“声出し”が、授業にアクティブに取り組んでいる姿勢になるわけです。

「もちろん、授業と別のことをおしゃべりしているのはダメですよ。けれど、授業中、積極的に先生の講義に食らいついてしゃべる子には、家に帰ってから『授業に積極的に取り組んでいたね』とほめてあげていいでしょう」

 5. 英語は実年齢より幼い子向けの教材で自宅学習

日本人は大人も子どもも英語コンプレックスが強いもの。いくら学校で勉強しても苦手意識が強く、だから、”しゃべれない”。でも、そんなのはナンセンス、と柳沢先生は言います。

「どんどん声に出したほうがいいんです。それには難しい英語よりも、すらすらしゃべれるほうがいい。となると、実年齢よりも低い子が対象のものがいいんです。小学生なら、幼児向けの絵本や英語の歌。見覚え、聞き覚えのあるものはスイスイ入ってくるし、言葉に出しやすいです」

 絵本と英語の歌はコンプレックスを払拭する

実際に、柳沢先生お子さんが小さい頃に一緒に声に出して読んだのは『エルマーのぼうけん』でした。

「日本語版と英語版を用意して、両方で読み聞かせをしていました。どちらも挿絵は同じなので日本語と英語を自然に比べて、覚えていきました。大人が読むだけでなく、子どもにも必ず音読させましょう。
また、歌なら必ず音読するので、さらに効果的。音源と歌詞を用意して、歌詞を見ながら歌ったり、歌詞を見ないで歌ったりを繰り返していると、そのうちスラスラと歌えるようになります」

 

まだまだたくさんの“頭がよくなる秘訣”を教えてくれる柳沢先生。全部で60の秘訣は、著書『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)に詳しく書かれています。

好きなことから勉強を始めよう!

ここまでのお話をまとめると、

・苦手なことより好きなことから始める
・好きを極めて自信につなげる

ということです。これまでの教育では、「苦手克服」が念頭に置かれ、苦手を引き上げてこそ、優秀なのだと言われてきました。けれど、柳沢先生は、

「苦手なものは、最低レベルこなしていればいい。それより得意なところを伸ばすことが大事」

と言います。

「苦手なことをやっても続かない。好きなことを伸ばして続けていると、その先に広がりがあり、未来がある」

柳沢先生自身、学生時代は「英語はつい後回し、数学ばっかりやっていました」。しかし就職した会社がアメリカ系のコンピュータ会社。英語の分厚い資料と格闘するだけでなく、英会話も必要なりました。

「あわてて英会話学校に通いました。苦手教科だったからつらかったけれど、しゃべれないと仕事にならないので切羽詰まってね、それでなんとか覚えました。社会人の男女がいるクラスは新鮮でしたね

苦手だって、やらなきゃならないと思えばできるもの。だから、好きなものからやればいい。
このポジティブ・シンキングが、“頭のいい子”を育てるキモですね、きっと。

 

作・柳沢幸雄PHP研究所1,540円

論理的に考える力、問題を解決する能力、世界を見据える力、リーダーシップ、そこから生まれる「生きる力」とは。東京大学・ハーバード大学・開成学園そして現在の北鎌倉女子学園の50年近い教員生活、また親としてアメリカでの体験を踏まえ、保護者が子どもとどう関わればよいかをていねいにアドバイスします。

柳沢幸雄

1947年生まれ。東京大学名誉教授、北鎌倉女子学園学園長、前・開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工業科卒業。東京大学、ハーバード大学で教鞭をとり、開成の校長を9年間勤めて現職。主な著書に『母親が知らないとヤバイ「男の子の育て方」』(秀和システム)、『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』(朝日新聞出版)『男の子の「自己肯定感」を高める育て方』(実務教育出版)ほか多数。YouTubeで週1本ずつ子育ての悩みに答える動画も配信中。

構成・文/三輪 泉

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