「観察」の正しい意味とは?「親の背中を見て子は育つ」は心理学でも証明されていた!

子育てにおいて、見ること(=観察すること)はとても大切だと言われています。子どもは親を見て育ちますし、親も子どもを観察しながら、「見ているよ」という安心感を与えたいですよね。そこで今回は、子育てにおける「観察」の大切さをまとめました。

観察の正しい意味は?

子育てにおける観察を学ぶ前に、そもそも観察という言葉は、どういった意味が含まれているのでしょうか。

観察・監察・鑑札の違い

「かんさつ」という言葉には、同じ読み方で「監察」「鑑札」などの言葉もあります。小学館『大辞泉』によれば「監察」は

<取り締まり、調べること>(『大辞泉』より引用)

とありますから、立場の強い者が支配下にある誰かの悪事を見定めるいった意味合いです。学研『漢字源』にも、「監」という字には、上から物をしげしげと見下ろして見定める意味があると書かれています。

「鑑札」については「札」という言葉があるように、何かの証票です。「鑑」は鏡の類語。姿を映して自分の戒めにするという意味があります。そこから戒めの手本、前例の意味が生まれ、前例を踏まえて良しあしを考えるといった意味が生まれたそう。総合すると、

<ある種の営業や行為に許可を与えたことを証するために行政庁が交付する証票。現在はふつう免許証・許可証の語を用いる>(小学館『大辞泉』より引用)

という意味になるのですね。では、肝心の「観察」についてはどうでしょうか。辞書には、

<物事の状態や変化を客観的に注意深く見ること>(小学館『大辞泉』より引用)

と書かれています。さらに漢字辞典『漢字源』で成り立ちを見ると、「観」とはもともと旧字で「觀」と書いたと分かります。旧字の中には、「口」が2つ並んでいます。

この2つの口は「草場で口をそろえて鳴く水鳥」を意味するそう。さらに「見」が加わると、口をそろえて鳴く水鳥を全体で見渡すという意味になるのだとか。要するに、何かと何かを並べ、全体を見ながら、両者の違いや共通点を注意深く客観的に見定めるという意味になるのですね。

「観察」の子育てにおける意味

もし語源の通りに考えるのならば、子育てで必要な観察とは、どういった行動になるのでしょうか。

例えば、きょうだいを客観的に見比べたり、「現状のわが子」「最近のわが子」など、同じ子どもの状態や変化を見比べたりする行為が考えられるはずです。「普段のわが子」と「最近のわが子」の変化を客観的に注意深く見守れば、いじめや問題行動のサインにいち早く気付ける場面も出てくるかもしれません。

この場合の見比べとはもちろん、主観的な願いや思いをもとに、わが子と周りの子どもを比べて焦ったり、うらやんだりするような行為とは、意味が決定的に違います。

一方で子どもも「普段の親」と「今日の親」の状態や変化、違いを日々敏感に察しているはずです。もちろん、「自分の親」と「友達の親」を並べて、その状態や変化、違いを注意深く見ています。

まずはパパ・ママが「観察」の意味をしっかりと理解して、子どもを見守る、あるいは子どもに見られる場面で、その心得を生かしたいですね。

英語だと「観察」は何ていう?

日本語では分かりましたが、英語では「観察」を何と言うのでしょうか。日英辞典を調べると、すぐに「Watch」や「Observation」という言葉が出てきます。「Observation」はちょっと難しい言葉ですが、英英辞典『Macmillan English Dictionary』には、

<the process of watching someone or something carefully>(『Macmillan English Dictionary』より引用)

とあります。意味は「誰か、または何かを注意深く見る一連の行為」といった感じ。「観=觀」の語源を考えると、全体を見渡すという意味が含まれる「Surveillance」も悪くないのかもしれません。

「sur-」はもともとラテン語で「over」という意味、「veiller」もラテン語で「watch」という意味を持ちます。ただ、「Surveillance」を英英辞典『Macmillan English Dictionary』で調べると、

<the process of carefully watching a person or place that may be involved in a criminal activity>(『Macmillan English Dictionary』より引用)

と書かれています。日本語では「注意深く人物や場所を見る行為で、中でも犯罪行為にかかわっている人や場所を注意深く見る一連の行為」といった意味です。少し犯罪寄りという意味では、現状の「Surveillance」は「監察」のほうが近いかもしれません。

心理学における「観察」とは

観察という言葉を辞書的に考えてきました。心理学では、どのような定義がされているのでしょうか。

「親の背中を見て子どもは育つ」は本当?

心理学で「観察」、さらに言えば子育ての文脈で覚えておきたい「観察」と言えば、カナダ人の心理学者A・バンデューラの「観察学習」や「モデリング理論」が役に立ちます。

そもそも子どもは、どのように学び、成長していくのでしょうか? 子どもの成長のために、パパ・ママとしてはさまざまな経験をわが子にさせてあげようと思うはずです。そのため、豊かな自然の中に連れ出したり、習い事をさせたりと、直接的に何かの経験をたくさん与えようとします。

もちろんこうした経験は子どもの成長にとても大切なのですが、心理学の世界では「ボボ人形実験」によって、誰か他人の行動を見る(観察する)だけでも、子どもは十分に育つと証明されています。

要するに、「親の背中を見て子どもは育つ」は、心理学的にも証明されているのですね。

人は観察することで育つ

「ボボ人形実験」とは、どういった実験だったのでしょうか。まずカナダ人の心理学者A・バンデューラは、被験者である子どもたちを3つのグループ(A、B、C)に分けます。

  • Aのグループには、空気で膨らませたボボ人形を、大人が殴ったり、蹴ったりしている映像を見せる。
  • Bのグループには、ボボ人形に何も危害を加えない大人の映像を見せる。
  • Cのグループには、ボボ人形の映像そのものを見せない。

 

その後に、ABCのグループの子どもたちに、ボボ人形を含めたおもちゃのある部屋で遊ばせます。すると、Aグループの子どもたちだけが、ボボ人形に対して目立って攻撃的に行動したのですね。

要するに子どもは直接的に何かを体験して学ぶと同時に、大人の行動を観察して、自分の行動のモデルにすると分かったのです。

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観察眼・観察力を鍛えるには

観察の辞書的な意味、心理学的な意味をまとめてきました。

子育てにおいては、パパ・ママが子どもを観察する側でありながら、子どもに観察される側でもあると分かりました。

では、親として子どもを観察する力を養う、あるいは子どものお手本になるためには、どういった点に注意すればいいのでしょうか?

観察眼が鋭いってどういうこと?

観察については、「観察眼」という言葉があります。辞書には、

<物事を観察する能力>(小学館『大辞泉』より引用)

とあります。観察眼については、「観察眼を養う」「鋭い観察眼」などの言葉もありますよね。

そもそも「観察」の語源をひもとくと、「何かと何かを並べ、全体を見渡しながら、その違いや共通点を客観的に見る」という意味になると先に紹介しました。

言い換えると、観察眼が鋭いとは、何かと何かを並べ見渡しながら、その違いや共通点に冷静に気が付く鋭さだと考えられます。

観察力を鍛えるには?

子育てにおいては、並べて客観的に見比べる対象の片側が必ず「わが子」になると思います。普段のわが子と最近のわが子の共通点や違いを客観的に見る場合もあれば、同世代の子どもとたちとわが子を並べて、違いや共通点を客観的に見渡す場面もあるはずです。

その際、思い込みや「こうあってほしい」という親の一方的な願いを先行させるのではなく、あくまでも客観的に見るためには、わが子に関する正確な情報が必要なはずです。

情報をそろえるためには、わが子と色眼鏡なく向き合い、言葉を聞き、表情や行動を見る必要があります。学校の先生や周りの友達たちの言葉を聞く必要もあるはずです。

その姿勢は、自分がわが子の観察の対象になる際にも役立つはず。思い込みではない、主観的な押し付けではない、とらわれない心で、ありのままの子どもと自分自身を見る習慣こそが、観察力を鍛える近道になりそうですね。

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観察は子育ての大切なスキル

以上、子育てにおける観察の大切さを紹介しました。語源や心理学の研究成果から考えても、正しい観察は親にとっても子どもにとっても大切だと分かります。

親としてはわが子の話となると、どうしても主観、思い入れが先行してしまいます。子どものお手本であるべき自分自身を振り返る際にも、やはり客観的にはなりにくいと思います。それでも「客観的に見る」という意識付けを行うだけでも、少しは変わってくるかもしれませんね。

文/坂本正敬 写真/繁延あづさ

 

【参考】

※ バンデューラのモデリング理論とは?心理学で有名なボボ人形実験を紐解く – Katsuiku Education Foundation

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