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食品メーカー5社協同で「食物アレルギー」の副読本を発行!
食物アレルギー配慮商品を販売する食品メーカー5社(オタフクソース・ケンミン食品・永谷園・日本ハム・ハウス食品*五十音順)が協同する「プロジェクトA」から小学生向けの食物アレルギーに関する副読本『知ろう! 学ぼう! 食物アレルギー~みんなでいっしょにおいしく食べよう~』(B5判・16ページ)が発行されました。
小学校5、6年生を対象に、家庭科や保健、総合学習など、さまざまな授業での活用を想定しているという副読本、製作の背景や内容について参画企業のひとつであるオタフクソース株式会社・広報担当の田淵亜希子さんに伺いました。
2018年に始まった「食物アレルギー配慮商品」を持つメーカー5社による活動「プロジェクトA」
--食品メーカー5社で取り組まれている「プロジェクトA」(プロジェクトエー)。きっかけはなんでしょう?
2018年8月に、各社の食物アレルギーの担当者が知り合ったことから、2018年9月に、オタフクソース、永谷園、日本ハム、ハウス食品の4社で、食物アレルギーに関して何かできることがあるか取り組みの検討を開始したことが活動のはじまりです。2021年1月にはケンミン食品が参画し、現在5社で活動しています。
「プロジェクトA」のAは、「Allergy(アレルギー)」と「All」のA。食物アレルギー配慮商品を持つメーカーとして、各社共通する使命感や課題感を持っていたことを背景に、プロジェクトAは『食物アレルギーの有無にかかわらず、みんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現』に貢献することを活動理念として掲げています。
協同開発された、50を超える食物アレルギー配慮レシピ
--これまで、どのような活動をされてきたのでしょうか
活動としては、まず、2019年1月を皮切りにこれまで7つのテーマで50以上の食物アレルギー配慮レシピを協同開発しました。お客様の声でも、「食物アレルギーに配慮した食事を作る際には、使用する食材が限られるため、メニューの数やレパートリーを増やすことが大変」というものが多くあります。このレシピ開発は、各社商品を一緒に使用することで広がるメニューのバリエーションと、調理の利便性をご提供することを目的として行っています。開発したレシピは、プロジェクトAのウェブページでご覧いただくことができます。また、2,020年2月に発行したレシピブックもダウンロードしていただけます。
また2019年には、大阪と広島で管理栄養士・栄養士の方向けの食物アレルギーに関する講演会を実施したり、2020年は食品アレルギー表示に関わる展示企画に協力したりするなど、情報発信や普及活動に取り組んでいます。
「食物アレルギー」について学ぶ機会が少ない小学生に関心を
--今回、学校現場向けの副読本を発行された経緯をおしえてください。
食物アレルギーの症状は、大人よりも子どもに現れる傾向がありますが、子どもの頃に食物アレルギーについて学ぶ機会は多くないのが現状です。食物アレルギーは人にうつらないことや好き嫌いとは違うことを知らない子も多いそうです。
そこで、学校で情報に触れる機会を提供することにより、子どもの頃から食物アレルギーについて関心をもってもらえるのではないかと考え、このたびの副読本という形での発行に至りました。
この副読本が、ただ学ぶだけでなく、実際に自分でできることを考えて行動するきっかけとなり、食物アレルギーの有無に関わらず、みんなで一緒に食事をおいしく楽しんでいただける未来に繋がることを願っています
『知ろう!学ぼう!食物アレルギー』は、小学生にイメージしやすく、伝わりやすさを考えたマンガ構成
--副読本『知ろう!学ぼう!食物アレルギー』の作成で、こだわったポイントはありますか?
食物アレルギーについてまったく知らない子どもたちも多いと考え、“食物アレルギーとは何か”というところから取り上げました。食物アレルギーの症状は人それぞれであることや食物アレルギーの原因となる食べ物について解説しています。
小学生がイメージしやすいように、同年代のキャラクターが登場するマンガを取り入れ、給食の時間や、放課後の公園など、小学生にとって日常的な場面を通して伝える展開となっています。
例えば、「さがしてみよう給食の工夫」というテーマでは、食物アレルギーのある子が食べられるように、メニューや材料に工夫がされていることを伝えます。献立表での違いや、通常の給食と間違えないように食器やトレイの色を変えるなど、食物アレルギー対応の工夫について事例を交えて説明しています。
食品メーカーならでは商品情報を活かした「食物アレルギー表示」の見方や、レシピも
また、食物アレルギーの原因となる食べ物を確認するために大切な、食品表示の見方や、食物アレルギー配慮レシピなどを、食品メーカーならではの身近な商品などの情報を活かして、わかりやすく紹介しています。最後に、食物アレルギーについて確認したり、工夫したりすることで、食物アレルギーがあってもなくても一緒に食事を楽しめることもメッセージとして伝えています。
アレルギー専門医が監修。食物アレルギーをもつ子に、先生や友だちが手を差し伸べるきっかけに
--学校向けに無料で配布とうかがいました。学校現場の先生方の反応はいかがですか?
学習の理解度が高まる高学年を主な対象として、家庭科や保健、総合学習の授業で活用いただくことを想定して、東京・大阪・兵庫・広島を中心にご案内し、お申し込みいただいた学校に順次配布をしています。
本格的に活用いただくのはこれからですが、食物アレルギーの児童が年々増えているなかで、うまく説明できるものがあってありがたいという声をいただいています。また、一般の方からも学校で活用してほしい、理解が広まることを期待しているといった反響があります。“みんないっしょに”という姿勢に共感していただいているのではないでしょうか。
監修には、食物アレルギーの専門医である昭和大学医学部の今井孝成先生にご協力いただいています。今井先生からも、「『みんなでいっしょにおいしく食べる』ことが容易なことではない食物アレルギーの子どもたちに、友達や先生が手を差し伸べられたら、どんなに安心できることでしょう。この副読本は、そうした思いを込めて作られました。『みんなでいっしょにおいしく食べる』ことが当たり前のように実現しますように!」というメッセージをいただいています。
--これからの「プロジェクトA」の活動をお聞かせください
まず、この副読本『知ろう!学ぼう!食物アレルギー』を活用した活動を検討しています。このほかにも、これまで継続したレシピの開発などを含め、各社の商品や特性を活かして協同することにより、可能性の幅を広げ、食物アレルギーに関する情報発信や啓発活動、商品の普及活動などに取り組みます。
「プロジェクトA」の活動は、食物アレルギーについての悩みも多い中、少しでも役立てることを目指しています。これからも食物アレルギーがあってもなくても、みんなが笑顔で囲める食卓に貢献できるよう、継続して活動していきます。
食物アレルギー協同取り組み「プロジェクトA」
参画企業(*左上から五十音順)
食物アレルギー配慮商品をもつ食品メーカー5社による『食物アレルギーの有無にかかわらず、みんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現』に貢献することを活動理念としたプロジェクト。
食物アレルギーに関する情報発信や啓発活動、商品の普及活動などに協同して取り組んでいる。
「プロジェクトA(プロジェクトエー)」
取材・構成/池田純子