惑星の基礎知識
太陽系とは、銀河系の中にある、太陽を中心とした天体の集合を表します。太陽系にある惑星について、その定義からチェックしていきましょう。
また、惑星以外の天体についても解説します。
太陽系の八つの「惑星」
太陽系には、地球も含めて、八つの惑星が存在します。国際天文学連合による惑星の定義は、以下の通りです。
太陽系の惑星(注1)とは、(a)太陽の周りを回り、(b)十分大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し、(c)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしてしまった天体である。
注1:惑星とは、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の八つである。
出典:質問5-8)惑星の定義とは? | 国立天文台(NAOJ)
この定義は2006(平成18)年に定められ、「水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星」が惑星として認められました。
新たに定義を満たす惑星が見つかる可能性もありますが、惑星の形成には長い時間がかかるため、まだ惑星と呼べる天体はできていないかもしれません。
冥王星は「準惑星」
2006年に惑星の定義が決まったと同時に、国際天文学連合は「冥王星(めいおうせい)」についても新たな決議を採択しました。先述の惑星の定義に反して、自らの軌道内に他の天体が存在していることから、冥王星は惑星ではないと判断されたのです。
それ以前は、はっきりとした惑星の定義が存在せず、学校の教科書などでも冥王星は惑星の仲間として扱われていました。しかし、2005年に冥王星よりも大きな天体「エリス」が発見されたことで議論が起こり、冥王星は準惑星に分類されたのです。
国際天文学連合は、「惑星の定義のうち最初の二つしか満たしておらず、衛星でもない天体」を準惑星と定義しました。準惑星の定義には冥王星のほか、エリスやセレスなど四つの天体が当てはまります。
月は地球の「衛星」
惑星が、恒星である太陽の周りを公転しているように、惑星の周りを周回する天体のことを「衛星(えいせい)」といいます。月は、地球の衛星にあたるので、惑星には数えられないことに注意しましょう。
地球の衛星は月のみですが、火星にはフォボスとデイモスという二つの衛星があるため、月が二つあるともいわれています。
木星の周りには70個以上の衛星が存在し、特に大きな四つの衛星を「ガリレオ衛星」と呼び、それらはガリレオが発見したことでも有名です。
また、冥王星やエリスなどの準惑星にも衛星は存在しています。ただし、惑星の周りにあるリング状の氷やダストは衛星には該当しません。
惑星を比較してみよう
太陽系にある八つの惑星の大きさは、それぞれ異なっています。惑星ごとの大きさや、太陽との距離をチェックしていきましょう。
惑星大きさランキング
太陽系の惑星を大きい順に並べると「木星→土星→天王星→海王星→地球→金星→火星→水星」となります。最も小さい水星の赤道直径が4879kmであるのに対し、木星は14万2984kmです。
太陽の赤道直径は139万2000kmで、木星の10倍もの大きさを誇ります。これは、地球が横に109個並ぶほどの大きさであり、太陽は惑星と比べて、はるかに大きいことが分かります。
なお、準惑星である冥王星の大きさは2370kmです。
太陽との距離の近さランキング
惑星の太陽からの距離を比較すると、近い順に「水星→金星→地球→火星→木星→土星→天王星→海王星」となります。水星と太陽との平均距離は5790万kmである一方、最も太陽から遠い海王星との平均距離は45億440万kmです。
基本的には、太陽からの距離が近いほど惑星の表面温度が高くなりますが、金星は、例外的に水星よりも気温が高くなっています。これは、金星が分厚い二酸化炭素の層に包まれていることが要因です。
二酸化炭素には温室効果があるため、金星は太陽系の中で、最も高温の惑星として知られています。大気があまり存在しない水星は、太陽が当たる昼の部分と夜の部分での温度差が非常に大きいのが特徴です。
惑星の大きさや距離の覚え方
惑星は八つあるため、大きさや太陽からの距離を覚えるのは大変です。それぞれの順番を覚えるためのアイデアや工夫を紹介します。
声に出して覚える
「すいきんちかもくどってんかいめい」という語呂合わせを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
近年は、冥王星が惑星から外れたため「めい」が入りませんが、太陽からの距離を覚えるためのこの語呂合わせは、ポピュラーだといえます。
このように、覚えたいことを「声に出してみる」のも効果的な方法といえます。単に重要な事項を並べて暗記するより、語呂合わせを作ったり、声に出したりする方が印象に残りやすいのです。
惑星の大きさの場合は、同様に頭文字を並べて「もどってかいちきんかす」と覚えましょう。何度も繰り返し口にすることで記憶に残りやすくなります。
図や模型を活用
太陽系や銀河系など、天体の構造はスケールが大きいものです。文字から得られる情報だけではイメージしにくい場合は、視覚的な情報を活用してみましょう。
おすすめは、イラストや模型を利用して視覚的に認識する方法です。紙粘土や発泡スチロールに色を塗ってモビールを作れば、惑星の見た目も分かりやすくなります。
大きさの比率については、果物を使って覚えるのが効果的です。
地球の大きさがブドウ1粒だとすると、木星はグレープフルーツ、土星はオレンジほどの大きさになります。天王星や海王星はレモン程度のサイズになるため、実際にテーブルに並べて比べてみるとおもしろいでしょう。
「地球型惑星」と「木星型惑星」に分類
八つの惑星を一気に覚えるよりも、グループに分類したほうが覚えやすくなります。大きさや表面の状態などに基づき、太陽系の惑星は「地球型」と「木星型」の二つのグループに分けられます。
地球型惑星に当てはまるのは、太陽からの距離が近い水星・金星・地球・火星の四つです。サイズが比較的小さく、表面が固形になっているのが特徴になります。
木星型惑星は、太陽からの距離が遠い木星・土星・天王星・海王星の四つです。直径が非常に大きく、惑星の表面が固体ではない「ガス惑星」が多く見られます。
地球型惑星は直径が小さいものの、惑星の密度は木星型より高くなっています。太陽と距離が近いため、公転周期が短いのも地球型惑星の特徴です。
惑星に関する豆知識
火星や水星のように、惑星には、それぞれ名前が付けられています。名前の由来など、惑星に関する豆知識を見ていきましょう。
惑星の名前の由来は?
日本では太陽系の惑星に、水星、火星などの名前が付けられていますが、これは中国の五行説を基にしています。「火・水・土・木・金」の5要素が世界を形成している、というのが五行説の基本的な考え方です。
当時は望遠鏡がなかったため、惑星の存在は肉眼で見える五つしか知られていませんでした。動きの速い水星は「水」、赤い火星は「火」というように、五つの星に要素を当てはめていったといわれています。
西洋では、星が輝く天上は「神様の世界」だと考えられていました。そのため空を自由に動く惑星にも、ギリシャやローマの神話に登場する神々の名前(ジュピター=木星、ヴィーナス=金星、サターン=土星、マーキュリー=水星、マース=火星、ウラヌス=天王星、ネプチューン=海王星)が付けられています。
惑星に生命が存在できる条件は?
地球には、人間をはじめ、さまざまな生物が存在しています。現在のところ、生命が存在するとされている惑星は、太陽系の中で地球だけです。
生物が生きるためには、適切な温度や酸素、水などの存在が不可欠だといわれています。生命が生存するのに適した環境は「ハビタブルゾーン」と呼ばれており、太陽から近過ぎず遠過ぎない距離にあることが重要です。
太陽からの距離が近過ぎると水が存在せず、遠過ぎると二酸化炭素が凍ってしまいます。また、惑星が誕生した時点における「内部温度」も重要な条件の一つです。
地球は太陽系惑星の中の一つ
惑星の大きさや太陽からの距離は、それぞれ大きく異なります。語呂合わせや模型を使って覚え、惑星を身近に感じてみましょう。
太陽との距離の関係で適度な空気や水が存在する地球は、太陽系の惑星の中で、生命が生きていくのに適した環境として知られています。惑星のことを知ることで、地球への知識をより深めていくのもいいかもしれません。
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文・構成/HugKum編集部