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私の息子は特別支援学校の1年生
こんにちは。ライター&イラストレーターのべっこうあめアマミです。私の息子は、自閉症で知的障害があります。
どんな子どもを育てていても、「就学」は子育てにおける大きな節目です。障害があったり発達がゆっくりだったりする子を育てていれば尚更、不安どころの騒ぎではない大イベントですよね。私もそうでした。これから、そんな息子と私の約1年半に及ぶ就学までの道のりを、お話していきたいと思います。
10年、20年先の息子の将来を考えて、進学先を決めました
息子は今、小学部の1年生として特別支援学校に通っていますが、私は最初から息子の就学先を、特別支援学校(以後「支援学校」と書きます)に決めていたわけではありません。
最初は特別支援学級(以後「支援級」と書きます)を希望していたのです。
それでも最終的に支援学校に決めたのは、今の息子ではなく、「10年先20年先の将来の息子にどうなってほしいか」を考えたからです。この決断が正しかったのかどうか、息子の将来の姿はまだわかりません。でも、少なくとも現時点で、後悔は全くありません。
なぜなら、息子は学校が大好きだからです。息子は毎日嬉しそうに学校に通い、行き渋りをすることは全くありません。むしろ、学校が休みの日曜日や長期休暇になると、機嫌が悪くなるくらいです。
幼稚園に入ったばかりでもう「就学」⁈発達障害児の就学準備は早い
私の息子は、年中の年から幼稚園に入園しました。発達の遅れのことで幼稚園入園は一筋縄ではいかなかったので、「ようやくここまでこれた」と感慨に浸っていた頃でした。幼稚園と並行して通っていた療育の先生からこう切り出されたのです。
「ムスコくんも、そろそろ就学について考えていきましょう」
これは、私にとって寝耳に水のような話でした。就学なんてまだまだ先のことだと思っていたからです。
ママ友は、年少から学校見学をはじめていた!
でも、実はこれは全くびっくりするような話ではなかったのです。後に、同じ療育に子どもを通わせていた他のお母さんと話した時、そのお母さんは、子どもが年少の歳から学校見学に行っていたと言いました。
子どもの就学先や支援の方法には、様々な形があります。だからその子にとって最も良い就学先を選ぶためには、時間をかけた綿密な準備が必要なのです。
まずはここで、就学先にはどのような種類があるのか、簡単にご説明します。
発達に特性がある子が選べる就学先の種類
普通級~通常は、特別の配慮はありません
普通級は、いわゆる通常の学級のことです。
もちろん、発達に特性がある子は 普通級に通うことができないわけではありません。
むしろ、知的発達の遅れがない発達障害の子などであれば、普通級でないと学習面で物足りなさを感じてしまうこともあるかもしれません。
幼稚園や保育園で一緒だったお友達と一緒に進学できるのも、子どもにとっては心強いでしょう。ただし、 普通級を選ぶのなら、特別の配慮は無いものと考えた方がいいかもしれません。中には配慮してくれる学校もあると思いますが、そういう学校ばかりではありません。
何の障害も発達特性も無い、定型発達の子どもたちと同じ土俵に立って学校生活を送るということを前提に、選んだ方が良いかと思います。
通級~普通級に在籍しながら、療育指導を受ける
通級は、大部分の授業を普通級で受けながら、普段の授業に加えて、もしくは一部の授業に替える形で、障害による学習面や生活面の困難を克服するための指導を受ける支援の形です。
つまり、通級を利用する場合は、在籍するのは普通級です。
でも、通級を塾のような学習面の個別指導を目的として考えるのは、少し難しいかもしれません。自治体によって差があるとは思いますが、私が住む地域では、通級は知的発達の遅れが無い子を対象とした、あくまで情緒面のサポートのみだとはっきり言われました。
通級を利用する時は、その時間に行われた普通級の授業をお休みすることになります。そうなると、授業に遅れてしまった分は自分で取り戻さなくてはならないのが、通級を利用する難しさかもしれません。でも、子どもにとって教室以外にホッとできる居場所が作れて、困りごとの解決のために一緒に考えてくれる先生がいるのは、きっと心強いと思います。
特別支援学級(支援級)~小学校内に配置されている特別支援学級
支援級は、普通の小学校の中にある、特別な支援を必要とする子どもたちのための学級です。何らかの障害や発達特性があり、普通級での学びが難しく感じる子も、配慮を受けて自分のペースで学ぶことができます。
支援級の学級編成は、法律(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)で、1学級あたり8人を標準人数と定められています。
普通級の標準人数は1学級35人(令和3年改正法より)ですので、普通級に比べてかなり少人数の環境で授業が受けられます。支援級は、同じ学年だけではなく、様々な学年の子どもたちと一緒のクラスで学ぶのも特徴です。
支援級には、知的障害がある子が対象の支援級と、知的障害の無い子が対象の情緒の支援級があります。ただし、支援学校に比べると支援は薄くなるので、知的障害の程度は比較的軽い子が多いかもしれません。
特別支援学校(支援学校)~障害のある子が個別に専門的な支援を受ける学校
支援学校は、障害がある子それぞれのために、個別に行き届いた専門的な支援ができる学校です。受けられる支援は最も手厚いですが、知的障害や身体障害などが無く、情緒障害や学習障害のみの場合は入学対象になりません。
支援学校の学級編成は、法律(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)で、1学級あたり6人を標準人数と定められています(重複障害の学級は3人)。
普通級は1学級35人、支援級は8人が標準人数ですので、支援学校では更に少人数の環境で授業が受けられることになります。
ただし、教科書などは使わずにその子に合った学習を行う授業なので、普通級や支援級とは大きく雰囲気が異なります。支援学校は、交流する機会も設けられているとはいえ、どうしても地域の子どもたちと関わる機会が作りづらいかもしれません。その点が、支援学校の難点かなと思います。
当初は「支援級」を希望。そのワケは?
私は、息子の障害の程度から考えて、就学先の候補として普通級と通級は考えていませんでした。
そして「地域の子どもたちとの関わりを多く持たせながら成長していってもらいたい」という思いが強かったので、支援学校よりも支援級に行かせたいと考えていました。療育の先生の話を受け、支援級と支援学校、両方の学校見学に行くと、支援学校の手厚さは本当に素晴らしいと感じました。
でも、支援学校は理科と社会が無く、教科書も多くの子は使っておらず、手厚いけれど個別学習が多い印象です。
そこにどうしても自分が持っていた「学校」のイメージとのギャップを感じ、普通級と同じ内容を少人数で学べる支援級の方に、魅力を感じてしまいました。
運動会で目覚ましい成長を見せた息子、強まる支援級への思い
就学先をぼんやりと考えながら始まった息子の幼稚園生活ですが、夏休みを終え、秋が来て、運動会がありました。
運動会と言えば、園生活の一大イベントです。私も親として楽しみではありましたが、大きな不安も抱えていました。
息子は、年中の時点で発語が1つもありませんでした。簡単な指示なら通りますが、全ての指示を理解できるわけでもなく、身の周りのことも1人でこなせません。いつもと違うことが苦手で、人が多かったり予想外のことが起きたりすると、パニックになることもありました。
ですから、息子には加配の先生がついてくれていたのですが、運動会という特殊な場所で、パニックにならずにいられるか不安でした。
予想外の息子の姿に胸が熱くなった私。思わず、涙ぐみました
ところが、息子は私の予想に反し、驚くほど立派な姿を見せてくれました。息子は運動会の最初から最後までみんなと一緒に行動し、1度もかんしゃくを起こさず、席を離れることもなかったのです。
かけっこ、ダンス、親子競技にも参加しましたが、どれもちゃんと順番を守り、自分の居るべき場所にいることができました。ダンスは棒立ちでしたが、ただそこに立つ息子を見るだけで、私の目には嬉し涙がこみあげ、視界がにじみました。
普通だったらこれくらいのこと、当たり前と思われるかもしれません。
でも、私は号泣し、夫は「俺の息子はすごい!ごほうびに今日は寿司だ!」と言ってそのまま家族で回転寿司に行くほどの、我が家にとっては感動的なできごとでした。
「支援級」に進学させたい思いを夫と分かち合うも…
正直、息子を支援級に行かせたいとは思っていたけれど、少し背伸びをさせることになるだろうなと感じていたのです。
でも、幼稚園生活で成長した息子の姿に、少し背伸びをするくらいの環境で周りに引っ張り上げてもらえた方が、息子は大きく成長するのではないかと思うようになりました。
夫も同じ考えだったようで、運動会の帰り、「支援級に向けてがんばろう」と2人で話したのをよく覚えています。
しかしこの後、思いもよらない出来事が起こりました。コロナ禍です。2020年の春、息子が年長になるタイミングで第1回緊急事態宣言が発令され、幼稚園も療育も休園になりました。このことが、我が家にも暗い影を落としていったのです。。。
以下、次回に続きます。