言葉が出づらい子の悩み。吃音?場面緘黙?発達障害?どう判断するの?【言語聴覚士・奈々先生の子どものことば相談室】

「うちの子、ことばの発達がゆっくりなのでは?……」子育てをしていると、幼児期、学齢期と様々な段階で、ことばの発達の不安に悩まされるものです。自閉症の息子さんときょうだい児の娘さんを育てながら、子育てにまつわる情報発信をされている、べっこうあめアマミさんに、気になる子どものことばや口周りの悩みをリサーチしていただきました。
回答くださるのは、多くの親子の「ことばを育むお手伝い」をされている、言語聴覚士の寺田奈々先生です。

子どものことばの出づらさが気になっています。「吃音」なのか性格のせいなのか、どう考えるべき?

子どものことばが出づらくて悩んでいます。これは「吃音」があるからなのか、「場面緘黙」や「発達障害」、もしくは内気な性格だからなのか、どう考えたらいいのでしょうか。また、「吃音」だった場合は、どのように対応すればよいのか、どのような治療の選択肢があるのか教えてください (8歳・男児の母)

 

吃音には3つの症状があります。当てはまるかどうかまずは確認してみましょう

吃音には代表的な3つの中核症状があります。

はじめの音を繰り返す(繰り返し・連発)
はじめの音を伸ばす(引き伸ばし・伸発)
・声が出なくてことばに詰まる(ブロック・難発)

この3つのうち、1つ以上みられるときに、吃音の可能性があります。


人によっては、話すときに肩や腕など身体の一部を揺すったり動かしたりしながら話す「随伴症状」が加わることがあります。3〜5歳台にはじまることが多く、3語文(「パパ、でんちゃ、みて」など)程度の文でのお話が可能になった時期のお子さんに多くみられます。7、8割は数か月~数年で自然になおりますが、2、3割のお子さんには吃音が残ります。

育て方のせいではありません。吃音を注意したり、話し方のアドバイスはしないで

お子さんに吃音が出ると、親御さんはびっくりすることと思います。一時的なものも含めると、お子さん全体の5%ほどが吃音になることが分かっており、決して育て方のせいではありません。

「ゆっくり話してごらん」や「落ち着いて」などとアドバイスをしたくなりますが、逆効果になることがあるので控えましょう。「話し方」ではなく「話の内容」に耳を傾けるようにし、聞き手である大人がゆっくり話すようにしましょう。話を途中で遮ったりはせず、最後まで聞くようにしましょう。

また、話し方をからかわれると、話すことへの自信を無くしたり、吃音の悪化に繋がったりすることがあります。周囲からのからかいは、やめさせましょう。
こうした対応は、多くの吃音の子に当てはまりやすいものを挙げているものです。吃音がはじまってからの期間や、お子さんそれぞれによっても少しずつ異なります。

吃音と似ている「場面緘黙」や発達障害

音の繰り返しや引き伸ばしなどがみられず、「えーと、えーと」や「あのね、あのね」「なんか、なんか」など、ことばを探すような言いよどみのフレーズ(間投詞)、「ぼくがぼくが」など、フレーズ丸ごとの繰り返しなどのみであれば、たどたどしく非流暢ではありますが、吃音とは言い切れません。
いくつかの文を繋げてお話しする段階の言語発達にいるお子さんでは、この、「えーとえーと」などが一時的に増えることがありますが、発達とともに徐々に落ち着いていくことが多いです。

特定の場面で話ができなくなる「場面緘黙」

吃音に似ている症状に、場面緘黙(ばめんかんもく)があります。場面緘黙とは、園や学校など、特定の場面でお話ができなくなることを指します。お家ではたくさんお話ししているのに、園や学校ではまったく〜ほとんどお話ししないということを知り、驚いたとおっしゃる親御さんもいらっしゃいます。

知的障害や発達障害の場合も

吃音とは異なり、ことば自体をなかなか思い出せなかったり、言いたいことをうまく表現できないというお子さんも居ます。その場合には、ことばの発達自体のゆっくりさや困難さが想定されることがあります。

ことばの発達のゆっくりさは、知的障害または自閉スペクトラム症などの発達障害に由来することもありますし、そうした可能性を除外した上で言語発達だけに特異的な苦手がみられることもあります。いずれの場合にも、吃音とは区別します。

ただし、吃音、一時的な非流暢、場面緘黙、ことばの発達自体のゆっくりさ、それぞれのなかから、一人のお子さんが2つ以上併せ持つ場合もあり、丁寧な見極めとお子さんに合わせた対応が必要です。

吃音の状況に応じて、一人ひとりに合わせた対応が必要

吃音には、いくつかの治療法があり、代表的なものは次の3つです。

・環境調整
・リッカムプログラム
・流暢性形成法

環境調整

環境調整は、吃音があるお子さんが自分らしくおしゃべりできるよう、周囲の大人の手で環境を整えていくことです。直接お子さん自身に訓練やトレーニングをするわけではなく、話しやすい環境づくりによって、お子さんの吃音にはたらきかけます。

リッカムプログラム

リッカムプログラムは、オーストラリアで開発された治療方法です。言語聴覚士の助言に沿って家庭で毎日練習に取り組みます。大人が行う声掛けのタイミングや内容など、細かく決められています。指導には、リッカムプログラムの研修を受けた言語聴覚士があたるのが望ましいとされており、基本的には就学前のお子さんが対象です。

流暢性形成法

流暢性形成法は、吃音を生じさせずに滑らかに話すための方法で、学齢期以降のお子さんに対して用いられることが多いです。言語聴覚士との練習の中で、吃音が生じにくい話し方のコツをつかみ、普段の場面にも使えるように取り組んでいきます。

ただし、吃音がある人すべてにこうした取り組みが必要というわけではありません。状況に応じて、その人に必要な方法を見極めながら対応していきます。

お子さんの吃音について相談したいという方は、相談窓口はとても少ないのが現状ですが、自治体の発達相談窓口や療育センター、小児の言語聴覚士のいる病院などを探してみてください。

参考) 幼児吃音臨床ガイドライン第1版(2021) 発達性吃音(どもり)の研究プロジェクト

こちらの記事では寺田先生に「子どものことばの育み方」を伺っています

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記事監修

寺田奈々|言語聴覚士
慶應義塾大学文学部卒。養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、プライベートのクリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、失語症、大人の発音矯正。最新の著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)がある。

取材・構成/べっこうあめアマミ(https://twitter.com/ariorihaberi_im

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