【私立女子校目指して中学受験】「手応えがあった」第一志望まさかの結果から逆転劇まで

中学受験に取り組んだ親子のインタビュー。今回は小4で「ここに行きたい」と自分の志望校を決め、ひたむきに走り続けてきたMさんの娘さんです。前編では、中学受験や志望校を決めた経緯を教えていただきました。後編では、具体的な勉強術や合格までのドラマチックな受験体験記、そして入学後、約1年が経ち思うことをうかがいました。

前編はこちら

塾に入る前にやっておいてよかったこと2

小1で地球儀をプレゼント(photo/AC)

―具体的にはどんな勉強をしてきましたか?

 小3の9月から塾に通い始めましたが、その前にやっていてよかったと思うことが二つあります。

一つは、小1の誕生日プレゼントに地球儀を贈ったこと。毎日お風呂上がりに髪を乾かしながら、「この国はどこ?」とか「この国の首都は?」なんてクイズ風にして眺めるうちに、世界地図は自然に頭に入っていたようです。

加えて、祖父母からもらった日本地図のすごろくでも遊んでいたので、学校で習う前から世界地図や日本地図はほぼ頭に入っている状態。受験勉強でも苦手意識がなく、暗記に時間をとられずに済んだのはよかったと思います。

塾に入る前に問題集で準備

もう一つは、塾に入るための準備として、『トップクラス問題集』という難しめの市販の問題集1冊買って、2年生の春休みから11ページ、コツコツやったことです。勉強の習慣づけの目的もありましたし、塾の勉強は学校より応用問題が多く難しいので慣れるためでもありました。結果、スムーズに塾通いを始められたと思います。

入塾前にやった「トップクラス問題集」。気に入ったので入塾後の小3・小4でも購入

 周りには、もっと小さい頃から公文をはじめ教育系の習い事をしているお子さんもいました。娘は計算が苦手なので、やらせていたら違ったかも……と思うこともありますが、娘の性格を考えると小さい頃から詰め込みすぎると続かなかった気もします。3年間と期間を区切っていたからこそ、続けられたのかなとも思います。

―塾に入ってからは、勉強はどのように進めていったのでしょうか?

 入塾以降は、基本的に塾のカリキュラムに沿った勉強をしてきたので、特段の工夫はしていません。通っていた塾では6年生になると志望校別に講座がわかれます。娘は、第一志望は中高一貫の私立の女子校、第二か第三希望くらいに近所の都立を考えていましたが、私立の学校別講座と都立対策講座では日程がかぶっていたので、第一志望の私立対策講座を受講しました。

―第一志望を優先して?

 それもありますが、過去問を見て、都立は私立のようにひねった問題は少なく、オーソドックスな問題ができれば大丈夫だと思えたのも大きいです。娘はどちらかというと私立でよく出る応用問題が苦手だったので、塾でそれを克服したいと考えました。

それから国語に関していうと、都立は記述問題が多いのですが、5年生のときに週に1回、塾の記述対策講座を受けていたことで、記述問題への苦手意識が少なかったのもよかった気がします。

体調管理は睡眠重視、直前はストレスでニキビも

睡眠時間の確保も中学受験の悩みどころ(photo/AC)

―体調管理で気をつけたことはありますか?

 塾に通うお子さんの中には、12時まで勉強しているお子さんもいましたが、我が家は「遅くとも午前0時までには寝よう」と伝えていました。どうしても課題が終わらずに0時を過ぎることもありましたが、基本的には23時台に就寝していました。やはり睡眠は大事だと思います。

あとは葛根湯を常備しておいて、なんとなく体調が気になるときには、必ず飲ませるようにしました。秋以降は新型コロナのワクチン、インフルエンザワクチンなども接種しました。

そうそう、基本的に体調はくずさなかったのですが、6年生の初冬に初めてニキビができたんです。ストレスもあったのかなと思いますが、本人的には「ニキビができた」ことがショックで、ちょっと落ち込んでいましたね。とはいえ、病院に行くのもはばかられる時期だし、市販の薬を塗って対処しました。

塾弁も栄養バランスを考えて手作りで

―食事面では何かありますか?

 4年生以降は、塾はお弁当持参で、途中で夕食を食べるようになります。塾の提携サービスもありましたし、コンビニでも買えましたが、栄養バランスも考えて基本的には手作りにしていました。休憩時間直前に作り、炊き立てのホカホカご飯を入れて届けていましたね。これは家が近かったからできたことですが。

―受験勉強の気分転換はどうしていましたか?

 家族みんなの趣味が野球観戦で、それが気分転換になっていました。シーズン中は食事中もテレビOKにして、みんなでナイターを観ていました。通っていた塾の先生も野球ファンで、娘と休憩時間に雑談で盛り上がることもあったようです。でもそれも秋まで。冬季講習から12月の受験シーズンまでは息をつく暇もないような感じだったので、秋に野球シーズンが終わってちょうどよかったです。

家族みんな野球好き。とくにパパは昔、応援団に入っていたほど

手応えがあった第一志望が、まさかの不合格……

―受験本番はどんな感じでしたか?

 1月と2月で5校6回を受験しました。1月に3校を受け、うち1校が第一志望だったのですが、残念ながら不合格。

ただ、第二か第三志望くらいに考えていた別の私立女子校が合格したので、とりあえずほっとしました。

2月に受けた3校のうち、第一志望の2回目が2/4で、ほかに2/22/3に別の私立と都立を受けました。東京都内の受験は2/1から始まりますが、第一志望が2/4だったので、4日間連続で受験は大変だろうと思い、あえて2/1には予定を入れませんでした。

―2/4の第一志望の2回目に万全の体制で臨んだのですね。結果は?

 帰宅した娘は「今回は手応えがあった」といっていたのですが、翌朝の発表で残念ながら不合格だったんです。

当然、本人はワーッと泣いて。私も「手応えがあった」と聞いて、どこかで期待していたのでショックでしたが、それよりも、がんばりを認めてあげたい気持ちが強かった。娘にも「想定より高い偏差値の学校をめざして、そこに向けてがんばってきた。ママはよく知ってるし、がんばったことがえらい。努力は決してムダにならないし、きっと決まった学校にも楽しく通えると思うよ」というようなことを話して、親子で泣きながら抱き合いました。

本人の努力、そして最後は神頼みも

―そのときパパはどうしていましたか?

 ちょっとよく覚えていないのですが、近寄りがたい感じで、泣く娘と私を遠巻きに眺めていた気がします(笑)。その日の夜は、おつかれさま会と称して、すき焼きにしました。

ただ実は、娘の「手応えがあった」という言葉に、もしかすると繰り上げ合格の可能性もゼロではないかも……とは思っていたのです。御三家などさらに上位校の合格者はそちらへ流れていきますから。そして実際に2/6の夕方に携帯に電話があって、「繰り上げ合格になりました」と。

それを娘に伝えると、またワーッと泣き出して。「行くよね?」と確認すると「行く!」というので、電話口で「お世話になります」と伝えました。電話を切ると、「ママ~」と泣きついてきて。本当にうれしかったですね。昨日すき焼きを食べたけれど、今日はお祝い会としてステーキ。2日連続で肉を食べました(笑)。

中学受験で得た「やればできる」自信は一生モノの宝

入学後は、意識の高い仲間に刺激を受け、自主的に勉強に取り組む日々。(photo/AC)

―1年間通っている娘さんの様子はいかがですか?

 気の合うお友だちもたくさんでき、幸せ感マックス、楽しくて仕方がないという感じです。小4のときの学校訪問で一目ぼれした本人の感覚は間違っていなかったのだと思います。

もちろん勉強は大変です。繰り上げ合格だったので、成績も下から数えたほうが早いくらい。成績は明確な順位はでず、分布表が配られるだけなので、本人はそこまで危機感がないようで、親としてはもう少し危機感をもってもらいたいときもありますね。ただ、周囲は受験を乗り越えてきたお子さんたちなので、自分でちゃんと勉強できる人たちです。そういう仲間に影響されて、娘も自然と「やらなくちゃ」という気持ちになっている様子。宿題も大変とはいいながらきっちりやっています。

−中学受験を終えて、親としての率直な感想をお聞かせください。

 中学受験はコロナ禍だったので、学校訪問ができなくなったり、体調管理に気を使ったり、特別な苦労もありました。一方でよく「受験勉強ばかりで、遊びに行けなくてかわいそう」と言う人がいますが、コロナ禍でどちらにしても遊びに行きにくい状況だったのは幸いだったかもしれません。

−中学受験をして良かったと思うのはどんなことですか?

 中学受験をしてよかったと思うのは、学校とは違う学びに大いに刺激を受けたこと。とくに受験直前でピリピリする前の35年生の塾通いは、純粋に「勉強がおもしろい」と感じるきっかけになってくれていたと思います。

勉強は塾のカリキュラム通りにやっただけといえばそうなのですが、勉強の仕方や計画的にやる基礎力が身についたと思います。今通っている私立校は漢検や英検もどんどん受験していくのですが、自分で計画的に勉強ができています。

そして何より、一つの大きな目標をもって、それをやり遂げられた経験はかけがえのないものです。一つの目標に向けて、小学生が3年以上勉強するって、本当に大変なことだと思うんです。でもそれをやり遂げることができた。この先も、いざとなれば自分はできるし、なんとかする。そういう一種の自信を身につけることができたのが、中学受験で得た最も大きな収穫だと思います。

 

受験は家族の数だけストーリーがあり、そして本当にドラマチック。大変なぶん、得られるものは大きく、子どもたちの未来を支える土台になってくれるようです。

前編はこちら

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文・構成/古屋江美子

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