国際法って何?
国際社会の秩序を守る上で欠かせないのが、「国際法」です。国際法は国家間で適用されるルールですが、国内法ほどの強制力はありません。国際法の基本と、違反した場合のペナルティーについて見ていきましょう。
国同士の関係を規定するもの
民族や宗教、文化が異なる国家間では、衝突や紛争を未然に防ぐために「世界共通ルール」が欠かせません。法の支配が脆弱な社会では、多くの犯罪が横行するでしょう。
国内にさまざまな法律があるように、国際社会にも法律が存在します。国際法は、国と国の関係を規定する法律で、「国際慣習法」や「条約」などから構成されています。
国際法という名前の法律は存在せず、発生した事案ごとに異なる法律が適用される点に留意しましょう。また、国内法に比べると強制力は弱い傾向があります。
国際法に違反した場合
国内では、国会が法律を制定し、罰則を設けます。一方、国際社会には頂点となる組織が存在しないため、法律はあっても明確な罰則がありません。国同士の対立が生じた際は、オランダのハーグにある「国際司法裁判所」に提訴できますが、相手国が応じないケースもあります。
罰則がないからといって、国際法を破ってよいことにはなりません。国際法に違反した際は、国際社会からの孤立や経済制裁など、報復を受ける可能性が高いでしょう。
国際法が生まれた背景
国際法が生まれたのは、16~17世紀頃のヨーロッパです。当時、ヨーロッパでは宗教戦争が激化し、多くの市民が巻き込まれました。戦争にルールがなかったため、傭兵(ようへい)による非人道的な行為が横行したといわれます。
オランダ人の法学者であるフーゴー・グローティウスは、主著「戦争と平和の法」の中で、戦争における国際法の理論を打ち立て、後に「国際法の父」と呼ばれています。
国際法は紛争国同士が和解するためのルールでしたが、第1次・第2次世界大戦を経て、世界共通のルールへと変わっていきます。
第1次世界大戦期にアメリカ大統領を務めたウッドロウ・ウィルソンは、「14カ条の平和原則」を掲げ、国際連盟の設立を提唱しました。
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国際法の主な構成要素
国際法は、主に「国際慣習法」と「条約」によって成り立っています。それぞれ、どのような特徴があるのかを見ていきましょう。
文書化されていない「国際慣習法」
国際慣習法は、暗黙のうちに合意された法律で、文書化されていないのが特徴です。大多数の国が守るべきものと認識している「国際的な慣行」は、世界共通のルールとして全ての国を拘束します。
代表的なものには、「公海自由の原則」や「内政不干渉の原則」が挙げられます。
公海自由の原則とは、公海は全ての国に開放されており、自由に行き来したり、経済活動のために使用したりできるというルールです。内政不干渉の原則とは、他国は一国の政治・経済・社会の体制に干渉してはならないという原則を指します。
ルールを明文化した「条約」
文書化されていない国際慣習法に対し、国同士が守るべきルールを明文化したものが条約です。条約と名の付くものもあれば、憲章・規約・協定・規定といった名称が使われる場合もあります。
日本では「内閣」が条約を締結しますが、事前または事後に「国会」の承認を得なければなりません。日本が締結している代表的な条約には、「日米安全保障条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)」があります。
日本が他国に武力攻撃された際に、日米が協力して対抗する旨を定めたもので、アメリカ軍が日本に駐留する法的根拠となっています。1951年に締結され、1960年に改定が行われました。
代表的な国際法をチェック
ひと口に国際法といっても、その種類はさまざまです。代表的なものといえば、国際連合憲章や国際人道法が挙げられるでしょう。日本は四方を海に囲まれた海洋国家であるため、海の法秩序を定めた国連海洋法条約も重要です。
国際連合憲章
国際連合(以下、国連)は、世界の平和と安全を維持するために創設された機関です。国連では、前文と全19章、111条から構成される国際連合憲章(以下、国連憲章)によって、加盟国の権利や義務などを定めています。代表的なルールをいくつか紹介しましょう。
●武力不行使原則
●集団安全保障
「武力不行使原則」とは、武力による威嚇(いかく)や武力の行使を禁止するものです。ルールが破られた際は、違反国に対して加盟国が協力して軍事的・非軍事的措置を取ります。集団で制裁を加える方法は、「集団安全保障」と呼ばれます。
国際人道法
国際人道法は、赤十字国際委員会(ICRC)が提唱した考え方でさまざまな慣習法や条約の総称です。武力紛争(戦争)で「やってよいこと」と「やってはいけないこと」を明確にしたもので、関連する条約は以下の二つに大別されます。
●ハーグ法:戦闘の方法や手段を制限するもの
●ジュネーブ法:戦闘に関わらない人や施設の保護を目的とするもの
例えば、交戦時は戦闘員と非戦闘員を区別した上で、軍事目標のみを攻撃しなければなりません。対人地雷やクラスター弾、核兵器といった非人道的な武器は、使用が禁止されています。
国連海洋法条約
「国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)」とは、海洋の利用や開発について定めたものです。具体的には、海域分類・権利義務関係・海洋環境の保全・紛争解決手続きなどを規定しています。
条約が生まれたきっかけとなったのが、1945年の「トルーマン宣言」です。アメリカのトルーマン大統領が自国の海洋政策を宣言すると、各国も沿岸海域の管轄権を主張するようになり、海洋秩序を守るための法律が必要となりました。
日本では、1996年7月20日に「海の日」が国民の休日に加わりました。この日は、国連海洋法条約が日本で発効した日です。
国際法の必要性をいま一度考えてみよう
国際法は、世界が守るべき共通のルールです。国際社会には、国の「政府」に当たる機関は存在せず、違反国に対して勝手に罰を与えることはできません。しかし、国際法を破った国は国際社会で孤立し、さまざまな制裁を受ける羽目になるでしょう。
国際法は完全なものではありませんが、国際社会の平和と安全を維持する上では欠かせません。グローバル化が進む現代、世界共通ルールは重要度を増しています。この機会に、なぜ国際法が必要なのかを親子で話し合ってみてはいかがでしょうか?
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構成・文/HugKum編集部