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ある日近所の方が捨てようとしていた小5の問題集…
――オトクサさんのご長男は、ほとんど塾に行かずに開成中学に合格したのですよね。すごいです。いつごろから勉強を始めたのですか?
オトクサさん(以下:オトクサ):小学校3年生になる直前です。実は中学受験を予定していたわけではなく、偶然の出来事から始まりました。
2019年の春、まさにコロナ禍に入る1年前、たまたま塾講師をしている妻のママ友から中学受験の話をしているのを聞きました。その時は、「ふーん、大変そうだな」くらいの関心だったのですが、その翌日に突然、近所の別の方から資源ごみに出そうとしていた小学校5年生の問題集を大量にもらいました。おそらく6年生になるタイミングで5年生の問題集がいらなくなったんでしょうね。
難しい勉強に挑戦する中で次第に中学受験を意識するように
オトクサ:当時6人きょうだい(現在は8人きょうだい)で長女が小5、長男が小3になる直前でした。特に深い意味はなく、自宅の勉強としてこのふたりに問題集をやらせてみようかって思ったんです。
私自身中学受験の経験もありましたし、コロナ前から在宅勤務を取り入れていたこともあって、「よし、ちょっと教えたろー!」くらいの軽い気持ちで勉強をスタートしました。といっても算数だけで、この時は受験勉強というよりも、難しい問題に挑戦という感じでしたね。ほどなく長女は、やりたくないということで学校の勉強に集中、長男は負けず嫌いの性格がポジティブに働いたこともあり、ゴールデンウィーク頃には本気で中学受験を目指すことになりました。
自宅受験の意義は「タイパ」、家族の時間を最優先
――どうして通塾するのではなく、自宅での勉強を選択したのですか?
オトクサ:もちろん塾のメリットは理解していましたが、それ以上に「時間」のロスがイヤだったんです。塾までの移動やその準備時間だけでなく、送り迎えやご飯の二度手間など親の時間も犠牲になります。
我が家の場合、きょうだいが多いし赤ちゃんもいたので、受験生に合わせた生活ができなかったということもありますね。
長男は、通塾しない方が友達と遊んだり、ゲームしたりする時間が長くなるというメリットしか見えてなかったと思います(笑)
――塾無しでも、合格できるという自信がありましたか?
オトクサ:いや、当時はホントに中学受験に無知でした。家から1番近い私立はどこだ、おぉ開成中学校ってのがある、よしココを目指すぞ!という感じです。
色々ネットやSNSで調べると、どうやら小6の夏には過去問に取り掛かるらしいぞ、塾なしで対抗するには小6の春には過去問やりたいなぁ、その前には単元別の復習しないとなぁ、「よし、4年生の間に中学受験の範囲を終わらせよう!」という、無知だからこその計画と自信ですね(笑)
小4までに受験範囲を終わらせるという無謀な「超先取り学習」
――ご近所の方からいただいた5年生の問題集はいつぐらいに解き終わったのですか?
オトクサ:3年生の間には終えました。その後は同じシリーズ(新演習)の6年生の問題集をメルカリで買って、4年生の間には社会の公民を除くすべての単元を終えました。
まったく完ぺきではなくとりあえず駆け抜けたイメージですが、ほぼ計画通りでした。
――大学受験では中高一貫校が高2くらいで高3の授業の分を終わらせてあとは演習、というふうにしますが、中学受験で「先取り学習」をするなんて、はじめて聞きました。
オトクサ:多くの受験生は全体像が見えない不安な状態で勉強をしています。過去問演習に取り組むために先取り勉強をしたわけですが、結果的には、ひと通り体感したことで中学受験に必要な全体の勉強範囲や勉強量を大人と同じ視点で見ることができたのだと思います。自分の弱点把握を含め、やるべきことを自覚して取り組めるようになったと思っています。
通塾生が単元ごとに宿題やテストで復習を徹底するのに対し、「忘れることを前提」にとにかく全範囲を終え、演習を通じて復習するという勉強方法ですね。
――先取り学習で大変だったのはどういった点でしょう?
オトクサ:1番は漢字です。読めないのでどの教科も一人でできない。なのでとにかく漢字を最初に徹底しました。
オトクサ:あと、ホントに自分勝手なのですが、最初はわからない言葉を聞きに来た時に「おっ偉いな!」だったけど、だんだん「おい、またか、うっとおしいな!」に変わってきまして。できる限り一人で勉強できるように、国語と算数は解説の読み方を、理科と社会は知らない言葉を電子辞書やインターネット検索を利用して言葉と画像をあわせて理解する方法を教えました。3年生4年生の内に勉強習慣をつけること、一人で解決することを教えるのは大変でした。
――他に大変だったことはありますか?
オトクサ:こういう家庭はほとんどないと思うのですが、1~3歳児がいると中学受験って本当に大変です。勝手に部屋にはいる、本棚を荒らす、問題集をやぶる、消しゴムを食べる、とにかくうるさい。「受験生パパでもっとも公園で遊ぶ男」を自称するくらい弟たちを外に連れ出していました。
模擬試験をたくさん受けることは「絶対必要」だった
――模擬試験などは受けていたのですか?
オトクサ:受けていましたよ。どれくらいのポジションにいるのかわかってないと失敗しますからね。小4に入るまで全国統一テストくらいしか知らなくて、各塾が模試を実施していることを知ってからは節操なしに無料模試はうけまくりました。
でも、点数はいつも悪かったですね。先ほど話した通り、小5の勉強からスタートしているので、4年生でしかやらない範囲は勉強していないし、テストには絶対でない歴史や立体図形の問題を前日に勉強していましたから。
ただ、算数の間違え方を見る限り、私は心配していませんでした。「大丈夫、6年生になったら逆転するから」と言い続け、夏が過ぎ、秋が過ぎ、あれ?やばい?と思った年末頃にやっと追いついた感がありました。
オトクサ:その6年の秋から、開成対策に特化した日曜講座を十数回受講しました。当初は、問題集をやりつくしたので開成対策の問題集が欲しい、噂のそっくりテストを受験したい!という目的でしたが、塾でいろんな子ががんばっているのを見て、すごく触発されたみたいです。部屋をのぞいたら合格鉢巻を巻いていることもありました(笑)
受験校は校風ではなく「偏差値」と「通いやすさ」で
――そして受験したのが、開成、筑波大駒場、灘……。これ以上ないラインナップです。偏差値の高いほうから選んだのですか?
オトクサ:偏差値と通いやすさだけで受験校を決めました。校風が子供の性格に合っているとか子供の意思とか聞くけれど、結局親の思い込みや誘導になっちゃうな、と、割り切って考えました。
実家が関西なので灘の選択肢もありました。子供が1番成長したのは灘への挑戦だと思っています。この最難関への挑戦があったからこそ、2月1日を最高の形で迎えることができたと思っています。
ほかに渋谷教育学園渋谷と、1月受験ができる栄東も受験しました。結果は、灘・筑駒・開成といずれも不合格。別の学校に入学金を振り込んだその数分後に開成から繰り上げ合格の電話をいただきました。泣きましたね。
かかった費用はトータル50万円
――タイパとともに、コスパも実現しましたか? 小3から勉強を始めて、トータルでどれくらいですみましたか?
オトクサ:受験料と入学金を除いて、50万円くらいです。これは、問題集・模試の受験費用・塾の講座、これらに伴ってかかった親子の交通費も全部含めてです。
塾無しで対策ができたのは、最初に問題集をゆずってもらえて、その後もメルカリで各塾の問題集や過去の模試を買うことができたからだと思います。
次男も中学受験の勉強中ですが、長男が使用していた問題集をそのまま使用しているので、現時点ではほとんどお金を使っていません。
――オトクサさん宅の受験勉強。なんとも不思議ですが、こんなやり方もあるんですね。次回はその勉強の中身をもっとじっくり伺います!
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取材・文/三輪泉