目次
なぜ総合型選抜(旧AO入試)が増えているの?
まずは、僕の専門としている大学入試の部分からご説明していきたいと思います。
国内の多くの大学で、総合型選抜(旧AO入試)が増加している背景にはいくつかの理由があります。
例えば、難関大学や医学部などでは、高い専門性を持っていることを前提に入学してきてほしいという大学側の思いがあります。筑波大学の医学部を例に挙げると、「血液の酸素濃度が下がってしまったときにどうすべきか」などのような、ある程度の医学知識のある学生に入学してきてほしいと考えています。
一方で、中堅以下の大学に関しては総合型選抜が集客目的になっている部分もあります。入試の問題は難化していますが、実際は子どもの数は減っています。そのような状況になると学生をなるべく早く確保したいという状況が生まれてしまうのです。

現在、総合型選抜の時期が早い代表的な大学は慶應の法学部。8月から募集を始めて、11月には結果が出ます。高3の秋には進路が決まっている人もいるのです。
受験生を持つご家庭の多くは、例え1ランク下の大学になったとしても、早く進学先を決定できる方を選ぶ傾向にあります。また、大学側も学費納入の目処がつくので、お互いにメリットがあるのです。
英検1級を持っていることが武器になるとは限らない! 大切なのは目的を明確にすること
僕の本『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』にも書かせていただいているのですが、非認知能力を構造で捉える「BMSEモデル」というものがあります。この構造が、それぞれが持っている能力を表していると考えてください。

この中の「Skill」の部分が、偏差値や英検〇級など、数値化できる能力です。
昨今、お子さんがまだ小学生にも関わらず、英検2級や1級に合格させたいと必死になる親御さんもいらっしゃいますが、医学部でさえも、英検1級を持っている子が落ちてしまい、2級しか持っていない子でも受かる場合もあります。それはなぜか。偏差値だけが高い子、勉強だけできる子ではなく、「BMSEモデル」の中の4つがつながっている子がほしいからです。
大学側は、入学後を見据えて学生を受け入れたいと考えています。なぜこの学部に来たいのか。ここでどんな研究をしたいのか。そういう目的がしっかり定まっている子を求めているのです。
ただし、学力がいらなくなったというわけではありません。例えば、将来、外交官になりたい子が英語ができないというのはダメですよね。逆に、日本舞踊を保存していきたいと考えている子は、そこまで世界に発信する側ではありません。だから英語力はそこまで必要がなく、英語が苦手でも受かるのです。
「偏差値の高い大学に入るため」の中学受験はいりません!
ここまでは大学入試のお話をしてきましたが、いよいよ12歳以下のお子さんがいらっしゃる親御さんに向けての具体的なお話をしていきたいと思います。
子どもをよく観察すること
僕はこれまで、主に大学入試を控えたご家庭からご相談を受けていましたが、ここ最近は中学受験を見据えてなのか、小学校4年生や、なんならお子さんがまだ4、5歳くらいのご家庭からのご相談も増えてきました。
そこで僕がお伝えしていることは、「お子さんをよく観察してください」ということです。
人それぞれ、生まれながらに持った“気質”というのは変わりません。そこを一生懸命変えようとしても意味がないのです。それよりも、自分のお子さんがどういう“気質”で、どんなことに興味があって、どういうことが得意なのかということをよく観察して認めてあげる方が大切です。

僕自身の話をすると。中学受験塾はすぐにやめてしまった
僕の場合ですが、両親は中学受験をさせようとして大手進学塾に入れました。でも、僕は全く面白さを見出せなくて、すぐに塾をやめてしまいました。すると両親は、僕の外向的な性格を見極めて、アメリカや中国などいろいろな国で過ごすチャンスを与えてくれました。
全然言葉がわからない国に突然連れていかれ、現地の学校で過ごすのはつらいこともありましたが、“友達をすぐに作って仲良くなれる”という僕の性格ならば大丈夫だと信じてくれていたのだと思います。もし、僕が違った気質だったら、これがいい選択だったのかは違ってきますよね。
中学受験を検討している親御さんの中には、僕のように集団塾になじめずにやめてしまった子を見ると、「うちの子は勉強が苦手なんだ」と勘違いをする方が多くいるように感じます。ですがそれは、勉強へのアプローチも何億通りもある中で、たまたまその塾が合わなかったというだけのことです。努力の正解は人によって違います。
僕の場合には、中学受験に必要な予算を海外へ行くことに両親が充てて育ててくれたということになります。中学受験という選択肢がダメでも親御さんは落ち込まないであげてください。僕も両親が落ち込んでしまった姿を見ていたら、悲しんでいたと思います。

また、2025年は子どもが約60万人しか生まれていません。しかし、大学生になれる枠は約64万人以上あるのです。そうすると、15年後は早慶でも入学するのは難しい大学ではなくなってしまい、日本人の代わりに留学生の入学が増えるのではないかと言われています。そういう時代に変わっていく中で、偏差値の高い大学に入学をすることを目的として中学受験をさせるのであれば、それは全く意味のないことになってしまうのです。
中学受験をするならば、お子さんの気質と校風、そこで教える先生との相性、6年間という長い年月をともにする大切な仲間ができることで、お子さんの可能性が広がることなどを視点にチャレンジしてほしいと思っています。
子どもの“好き”が見つからない…と焦らないで
最近は“スーパーキッズ”と呼ばれるようなお子さんがメディアで取り上げられているので、親御さんの多くは、自分のお子さんがまだ“好きなもの”を見つけられていないことに焦るパターンも増えてきていると思います。
しかし、それはただの確率の問題です。たまたま1個目で好きなものが見つかって、どっぷりその世界に入っていったというだけ。10個目に見つかる子もいれば、100個目でもまだ見つけられない子もいるかもしれません。それでも、いろいろな経験をする中で一つに絞れなくてもいいのです。

その子がどんな“気質”なのかを親御さんが理解してあげていれば心配いりません。メディアの情報に影響されすぎて、12歳までのお子さんの成長を近視眼的に見すぎないようにしてください。
大学入試が視野に入ってきた年齢になった頃に、先ほどご説明した「BMSEモデル」が一通り完成しているイメージを持っていただけるとわかりやすいかと思います。ただし、勘違いしてほしくないのは、たくさんの「Skill」を持っていることを目指すのではなく、自分に必要な「Skill」が備わっていることが必要だということです。
「スポーツをやること=プロになること」とは限らない
また、お子さんにスポーツをやらせている親御さんの多くは、そのスポーツで一流の選手になるとか、プロの道へ進むことばかりに目を向けている傾向にあります。しかし、どんなスポーツの世界でも、そんなに甘いものではありません。どんなに努力してもプロにはなれない世界もあります。
だからと言って、スポーツをすることに意味がないのかというとそうではありません。
例えば、10歳を超えてクラシックバレエの世界に夢中になったお子さんがいます。プロになるには、始めるタイミングとしては遅い年齢ですし、意味がないことだと思いますか? そのお子さんは、バレエを通してさまざまな国のバレエスクールに興味を持ち、ドイツのスクールにはメンタルヘルスを管理する人がいるところに興味を持ちました。そして、心理学に目覚めて心理学科のある大学へと進学していきました。

このように、12歳を超えてから興味を持っているものに対して気づき、深く探究できるよう、親御さんはサポートしていただきたいと思います。
ただし、「12歳になったら何か一つ深く興味を持てるものがないとダメなのか」ということではありません。12歳はまだまだ完成された年齢ではありません。大学受験の18歳くらいまでに、いったん何かに集中できるものを見つけ、そしてまた幅広く学んでいけばいいのです。
あれもこれも…は時代遅れ! 親に必要なのは洞察力
僕も英検の書籍を出していますし、親御さんが必死になって小学生のうちに英検などの目先の資格取得を目標にしてしまいがちになる気持ちは理解できます。僕にはまだ子どもはいませんが、もしもいたとしたら、自分の持っている受験のノウハウを駆使して、ガチガチに管理してしまうかもしれません。それくらい子どもは親にとってかけがえのない存在なのは理解しているつもりです。
僕の著書を読んでくださっている親御さんは、とても真面目な方が多く、おそらく本の中に書いてあること10個の力が全て備わっていないといけないと思われる方もいると思うのですが、その必要はありません。10の力のうち、お子さんがどこの力が強いのか、また成長する中でどこの部分がどう育っていったのかというところに目を向けてほしいと思っています。そうすることで、お子さんの武器は何なのかというところが見えてくるわけです。

人生の極端な目的を考えてみてください。それは“生存”なんですよね。親に頼らなくても生きていける力が徐々に身につけられているかを振り返りながら子育てをしてほしいと思っています。いつかは親の方が先に死んでしまいます。いつまでも子どもの側にいてあげることはできないのです。
そう考えたときに、親がいつまでも子どものタスク管理をしていたり、フォローしてあげたりすることが子どものプラスになるのでしょうか。偏差値の高い大学を出ても、親がいないと何もできないとか、就職活動を親が管理しているのもおかしいですよね。
お子さんが小さいうちは、よく観察し、どういう“気質”なのかを見極めることに徹し、何を捨てて、どんな力を伸ばしていけばいいのかを見極める洞察力を磨いてほしいと思います。
こちらの記事もおすすめ
お話を伺ったのは
2000年、埼玉県生まれ。2023年、早稲田大学政治経済学部卒業。日系華僑の両親のもとに生まれ、何度か日本とアメリカ・ニュージーランド・中国を行き来しつつ、中学校の途中から本格的に日本に拠点を移す。受験生時代、中国の名門・清華大学と早稲田大学に総合型選抜(AO入試)で合格。このとき中国で出会った現地の受験生と日本の同世代の人たちの大学や勉強に対する考えかたの違いに直面し、日本の教育産業に携わることを決意する。
2019年、早稲田大学政治経済学部に入学、同時に起業。自身の総合型選抜での経験を活かしてオンライン家庭教師サービスを開始し、人気を博す。2020年6月にリザプロ株式会社を設立し代表取締役に就任。総合型選抜(AO入試)に特化した塾として、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、多くの名門大学への合格者を輩出。2025年6月から、大学の推薦入試情報を掲載する「推薦入試データベース」を同社の推薦入試専門メディア「未来図」にて公開。志願条件や日程などの入試情報、過去の合格者の志望理由書が無料で閲覧できるサービスとして話題を呼ぶ。
著書に『小学生が90日で英検2級に合格する!』(新流舎)、『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)がある。
文・構成/鬼石有紀