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研究テーマは子ども自身が気になることに着眼を!親も図書館や専門家を頼って
いざ自由研究を始めようとした際、研究のテーマが決まらず、早速つまずいてしまう家庭が多いはず。そこでまずはお金をテーマにした自由研究について、どんなふうにアイデアを出すといいのかを八木さんに伺いました。
――お金にまつわる自由研究はどう発想していけばいいでしょうか?
八木さん 子ども自身が気になっていること、ものに着眼してやっていくのがいいかなと思います。「世界的に見ると日本はキャッシュレス化が進んでいないというけれど他の国はどうなんだろう」と思ったとして、もし海外旅行に行くなら旅先のハワイではどのくらいキャッシュレス化が進んでいるのか調べてみるとか、なにか興味持つと深堀りしやすいですね。
子どもの自力に任せず親も行動でカバーを
八木さん ただ、子どもが自力でやっていくのは大変だと思うので、親も一緒に本で調べてみたり、貨幣博物館(日本銀行分館内にあり、日本の古代から現在に至るさまざまな貨幣や関係資料が見られる博物館)に行ったり、行動でカバーするとスムーズに進むのではないかと思います。
ご両親も専門分野ではない方がほとんどだと思うので、時間があればお金の講座に参加してみたり、一緒に図書館に行き、お金にまつわる本で調べてみてもいいと思います。
次の章からは、実際に自由研究で使えるアイデアを難易度順にご紹介します。難易度が低いものは低学年の子どもや、夏休み終盤に入っても自由研究に手が付けられていないご家庭に特におすすめです。
【自由研究アイデア】お金にまつわることわざ、格言を研究する【難易度★】
八木さん お金に関する自由研究で一番難易度が低いのが、言葉の研究。「時は金なり」「金の切れ目が縁の切れ目」「猫に小判」などなど、調べてみるとお金にまつわることわざはたくさんあります。どんなことわざがあって、それはどういう意味なのか、調べがいがあると思います。
ほかにも、アインシュタインが残した「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う(“Compound interest is man’s greatest invention. He who understands it, earns it. He who doesn’t pays it.”)」、新紙幣で話題の渋沢栄一の「お金はうまく集めて、うまく使え」などお金にまつわる格言をまとめてみるのも◎。
投資の神様ウォーレン・バフェットも多くの金言を残しているので要チェックです。誰が言ったのか、言ったのはどんな人なのかを深堀りするのもいいですね。子どもって意外と名言が好きなんです(笑)。意外と楽しめる内容になると思います。
言葉を調べてまとめるだけで、充実の自由研究に。タブレットやパソコンがあればすぐに調べられるので、時間がなくても取り組めます。
【自由研究アイデア】新紙幣/紙幣について調べてみる【難易度★★】
新紙幣が発行されたばかりという貴重なタイミングなので、新紙幣を見る、調べるだけでも周りと差がつく自由研究になります。どんな題材が考えられるのが、八木さんにたくさんのアイデアを紹介してもらいました。
・旧紙幣とはどういうところが変わったかな
・高性能なすき入れ模様やホログラムの3Dなど新しい技術を調べる
・数字表記のユニバーサルデザインってどんなもの?
・紙幣のマイクロ文字。何個隠れているのか数えてみた
・新紙幣の肖像に採用された渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎ってなにをした人?
・日本の紙幣と海外の紙幣を徹底比較
・世界の紙幣はどんなデザイン?その特徴は?
・過去にはどんな紙幣があったの?
・紙幣最多登場の聖徳太子。何回紙幣になったの?そもそもどんな人?
紙幣をテーマにこんなにたくさんのアイデアが。新紙幣を調べる際は、実際に手にとってじっくり見てみましょう。
八木さん 「新紙幣がATMから出てくることが増えましたが、銀行で旧紙幣と交換してもらうこともできます。子ども自身が銀行へ出向いてもいいですね。時間がある夏休みだからできる体験だと思います」
海外紙幣は図書館でも調べられる!アメリカの紙幣にも注目を
海外の紙幣を調べる際、海外旅行をした家庭は現地で実際に見て学べますし、行っていなくても図書館の書籍を活用すれば簡単に調べることができます。図書館専用の大きな本もあり、『世界のお金辞典』という本は情報豊富で役立ちます。キッズ・マネーステーションからもいくつか書籍を出しているので、参考になるかもしれません。
また、海外紙幣のなかでも特にアメリカの紙幣は面白い秘密がたくさん隠されています。アメリカの紙幣に印刷されているオリーブの葉や矢、星、ストライプの数はすべて13。それにはある理由があるんです。それを調べてみるのもいいですね。
新紙幣については、国立印刷局のホームページに詳細が出ているので参考にしてください。→新しい日本銀行券について 独立行政法人 国立印刷局 (npb.go.jp)
【自由研究アイデア】なんで多くの商品が値上がりしているのか考えよう【難易度★★★】
暮らしとリンクすることで、子どもが考えやすく学びにもなるのが、昨今の”値上がり”に関連した「なぜ値上がりするのかを考える」という題材。いつも食べているポテトチップスにしても、子ども自身「前より高い」「中身が減った」と実感しているようで、興味を持って進めることができそうです。このテーマについては、八木さんに進める際の順序を教えてもらいました。
研究を進める際の順序
- 【1】スーパーで今何が値上がりしているのか調べてみる。
- どの食品の値段が上がっているのか。また同じ値段でも内容量が減っているものもあるので、それらを書き出してみる。
- 【2】なぜ値上がりしているのかを考える。
- 原材料?人件費?輸送費?円高・円安の影響などを考えてみる。
- 【3】円高円安ってどういうことかを考えてみる。
- 今は円安といわれていますが、円安とは円の価値が低い状況。1ドルが100円だったときは、1ドルに対して100円払っていたところ、円安が進んで1ドル150円になると、1ドルに対して150円払わなければいけなくなる。円の力が弱い状況、これが円安です。そういったところを学んでみても◎。
八木さん 「チョコレートを例に考えると、現在、原料であるカカオ自体が値上がりしています。またカカオは海外から輸入するため、そこには円安の影響があります。輸送費、人件費も上がっているため、チョコレートが値上がりしていることがわかるんです。輸入食品が原材料に使われているハンバーガーショップのハンバーガー、チーズなどに置き換えても考えられます。
ほかにもコンビニの鮭おにぎりについて考えてみると、お店に並んだものを私たちが買うまでには、作った人、運んだ人、並べた人、さまざまな人が関わっていると考えられます。鮭の値段、米や海苔の値段、パッケージを作る際の値段、国内でもそれを輸送するにもお金がかかる。米や海苔は生産者の方もいるし、パッケージをデザインする人もいます。
食品1つでもどれだけいろんなものが関わっているかを考えることで、どうして値上がりしたのかだけでなく、世の中の仕組みもよくわかる自由研究になりますね!
お金について学ぶと世の中の仕組みがよくわかる
今回は、時間がないなかでも進められる研究にしぼって、3つのアイデアを紹介しました。お金の自由研究というと、そんなにバリエーションがないのではないかと思いきや、言葉、紙幣、値上がりと幅広いテーマが。これから自由研究に取り組む方は、ぜひ子どもが興味を持ったテーマをピックアップして進めてみてください。
最後に、八木さんから「普段は忙しくて「新紙幣になったんだぁ」程度の認識だったところを、時間がある夏休みだからこそなぜ新紙幣になったのかを深堀りして考えるいい機会だと思います。また、お金について学ぶことで世の中の仕組みが良くわかるんじゃないかなって思うんですね。これらの研究を通じて、「お金は大切なもので大事に使おう」ということも実感してもらえると嬉しいです」とコメントをいただきました。
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キッズ・マネー・ステーション主宰
八木 陽子さん
ファイナンシャルプランナー。キッズ・マネー・ステーション代表。上智大学外国語学部卒後、編集者を経て2001年ファイナンシャルプランナーを取得。海外でファイナンシャルリテラシー教育を視察した経験を活かし、子供向けマネー教育の普及に努める 。TV、新聞、雑誌、セミナーや講演などで活躍。著書に『6歳からのお金入門(ダイヤモンド社)』『お金は子どもに預けなさい(経済界)』などがある。
記事監修
「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約160名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2018年までに1100件以上の講座実績を持つ。
取材・文/長南真理恵