【中学受験】塾の先生を最強の味方にする方法とは?保護者対応が手薄になりがちな大手塾のエピソードから学ぶ

中学受験に欠かせないといわれる塾通い。実際に塾に通い出すと、子どもの様子や学習のことなど、塾の先生に相談したいと思うことが出てくるママ・パパも多いのではないでしょうか。「塾とうまく付き合うためには、積極的に塾に相談し、関わっていく姿勢が重要です」と教育ジャーナリストの中曽根陽子さんはいいます。塾の先生を味方にする方法とは?中曽根陽子さんの新刊『中学受験 親子で勝ちとる最高の合格』(青春出版社)からお届けします。

塾の先生を最強の味方にする方法

長い中学受験の道程は、当然山あり谷あり。いろんなことが起こります。

うまくいっているときはいいですが、成績が伸び悩む、やる気が出ず勉強しない、塾に行くのを嫌がるなど、困ったことが必ず起きます。

そんなときに、頼りにしたいのは塾の先生ですよね。でも残念ながら、思うようなサポートを受けられないこともあります。

保護者対応が手薄になりがちな大手塾のエピソード

難関校狙いの大手塾に通っていたお子さんを持つNさんのお話です。

子どもが6年生の夏を迎えたときのこと。当時在籍していた最上位の志望校別クラスから一つ下のクラスに移りたいと、お子さんが訴えるので、塾に相談したそうです。

子どもがクラスを移りたいと言った理由は「算数で思うような成績が取れず、周りの子との差が広がって、つらくなってきたから」。本人いわく「塾の先生からは、頑張れば大丈夫だから諦めるなと引き止められたけれど、みんなライバルという環境の中でプレッシャーを感じながら通い続けるのは限界だった」そうです。

Nさんは子どもとの話し合いを踏まえて相談しましたが、塾の先生からは「まだ可能性があるのだからクラスは変えないほうがいい。もう少し様子を見ましょう」という一般的な回答しかもらえませんでした。結局、子どもの様子から家庭で判断して、一つ下のクラスに移ったのです。

あとで娘さんは、「あのとき、もし、パパやママから『もったいないから続けなさい』といわれていたら壊れていたかもしれない」と正直に語ったそうです。最終的に、「第一志望校」に合格でき、クラスを変えたことにも満足しているとのことでした。

クラスを変える判断はかなり難しく、「まだ可能性がある」と塾側から言われれば、親は 「もう少し頑張らせたほうがよいのではないか」と悩みます。先ほどのNさんも「私は上の子で一度中学受験を経験していたので、今回の判断ができたけれど、初めてだったら決断できなかったかもしれない。もう少し子どもの様子を把握して相談に乗ってほしかった」 といっていました。特に大手塾の場合は、保護者対応が手薄になりがちなところがありますが、遠慮していてはいけません。気になることがあったら相談をしましょう。

学習の相談は担当の先生に、メンタルの相談は子どもが懐いている先生に

私も、子どもが中学受験をしたときは、面談の他に何回となく相談に行きました。

長女は大手塾だったので、通常の窓口は教室長の先生でした。6年生の11月に成績が下 がったときに相談に行くと、「それならこの問題集を追加しましょう」と言われたことがあります。 親から見てもこれ以上の課題を追加するのは無理だと思ったので、実際に娘のクラスを担当している先生にアポを取って相談し、逆に必要な問題を抜き出してもらい、それだけを行うことにしました。このときは結果的に成績を持ち直すことができました。

次女のときは小規模塾だったので、学習に関しては担当の先生と直接やりとりができましたが、メンタル的な相談は、子どもが懐いていた別の先生にしていました。受け身でいては、こういう対応はしてもらえません。

塾の先生は、課題を共有し、一緒に考える相談相手

塾とうまく付き合うためには、積極的に塾に相談し、関わっていく姿勢が重要です。 塾と親は一つのチームなのですから。 中学受験の場合には特に、子どもと塾の先生の関係は特別なものがあります。 親の言うことは聞かないのに、子どもは先生が大好きで、その先生が言うことなら聞くという場合もあります。ですから一人でも、何かのときに相談できる先生がいると心強いですよ。

塾の先生に味方になってもらうには、日頃から信頼関係を結んでおくことが大切です。 お金を払っているんだからこれだけやってもらって当然という態度で接する、反対に相手はプロだからと遠慮して何も言えないというのでは、いいチームにはなれません。 塾の役割は勉強を教えることだけではないのです。

大切なのは、課題を共有し、一緒に考える相談相手という意識を持つこと。

たとえ不満があったとしても、子どもがお世話になっている先生ですから、クレームを 言うのではなく、あくまでも相談です。

信頼関係をつくるためにできること

これは塾だけでなく、学校でも同じですが、子どもを預けている人との信頼関係ってす ごく大事です。先生も人間なので、えこひいきするつもりはなくても、距離が近い人のことは気になりますよね。当たり前のことですが、信頼関係をつくるためには、相手の立場を考慮してコミュニケーションを取ることです。先生が手隙の時間に電話をかける、要点はまとめて話すなど、ちょっとした気遣いができるかどうかで、相手の対応も変わります。 また、送迎の際にちょっとでも顔を出して挨拶したり、いつもありがとうございますと感謝の言葉を伝えたりしましょう。

塾の先生とよいチームになることで、中学受験は最高のチャレンジになるはずです。

もっと読みたい人はこちら>>

「中学受験 親子で勝ち取る最高の笑顔」

青春出版社刊、1,925円

「成績が伸びない」「親子ゲンカばかり」「やる気・集中力がない」など多くの人が陥りがちなモヤモヤや悩みに対して、教育ジャーナリストの中曽根陽子さんは、親子の「受験軸」をしっかりと定めることで悩みが解消してうまくいくといいます。本書では、「最高の結果を出す受験軸の作り方」をワークシート付きで丁寧に解説。不安になったり悩んだ時には、「何のために受験をするのか」という受験軸に立ち返って考えてみることができます。20年以上の教育現場取材で分かった「後悔しない受験」のために必要なことを教えてくれる一冊です。

『中学受験 親子で勝ち取る最高の合格』はこちら>>

中曽根陽子さんに聞いた中学受験の親の必要なサポートはこちらの記事をチェック

【中学受験】通塾生活はまるで長距離マラソン。親の正しいサポートと我が子が「自走」するコツは?専門家に聞いた
中学受験の勉強で子どもが「自走」するのは難しい  親は子どもに「人からいちいち指示されなくても自分で考えて行動できる力=自走力」の...
【中学受験】学習面の親のサポート、どこまでやるのが正解?専門家が指摘する「偏差値で一喜一憂しない」本当の意味
学習面で必要な親のサポートは、勉強の進行管理  入試問題の難化に比例して、進学塾の学習内容も年々難しくなっています。算数は難易度の...

 

お話を伺ったのは

中曽根陽子さん|教育ジャーナリスト・マザークエスト代表

小学館を退職後、女性のネットワークを活かした編集企画会社を設立し、数多くの書籍をプロデュース。2013年、「親を人材育成のプロに」というコンセプトのもと、母親自身が新しい時代をデザインする「マザークエスト」立ち上げる。現在は執筆のほかポジティブ心理学や脳科学をベースにした子育て講座、社員・教員向け研修、講演活動も精力的に行っている。著者に『一歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験 最新版』(ともに晶文社)『成功する子はやりたいことを見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)など多数。

編集部おすすめ

関連記事