JAXA名誉教授・的川泰宣博士が推薦する≪夏休みにオススメ≫の絵本&自由研究! 探究心を育む親のかかわり方とは?

「科学館に行っても、子どもがあまり乗り気じゃなくて…」そんなお悩みをもつ親御さんにこそ届けたいトークショーが、7月末に開催されました。会場は、横浜市役所アトリウムで行われた「へーベルメゾンBORIKIえほん箱パーティー2025」。JAXA名誉教授であり、長年宇宙教育に尽力されてきた「宇宙博士」こと的川泰宣先生と旭化成不動産レジデンスの楯智也子さんが登壇し、親子での関わり方や、夏休みにぴったりの学びのヒントを語ってくださいました。

すべての夢は宇宙の話題につながっている!

夏休みのはじめに開催された「へーベルメゾンBORIKIえほん箱パーティー2025」。トークショーのテーマは「絵本からはじまる宇宙とゆめのはなし」です。

最初に大きなロケットの絵とクレヨンを並べておき、「自由に夢を描いていいですよ」と促すと、子どもたちは思い思いの絵を描きはじめました。宇宙に全然関係ない絵を描いてもOK。描いてくれた子どもたちに登壇してもらいました。

「お医者さんになりたい」という子に、的川先生は「お医者さんは宇宙飛行士になりやすいんだよ。宇宙でも身体を治してくれる人が必要だからね」と話し、「クッキー屋さん」を描いた子には「宇宙食にもクッキーがありますからね。ロケットに一緒に乗っていけるね」と話しました。

一見、宇宙とは無関係に思える夢も、宇宙とつながる。そんな先生の言葉に、聞いていた大人たちからも驚きの声が上がりました。

夏休みこそ「子どもを知る」という視点で

的川先生は、宇宙というのは「目の前にあるようでないもの」と言い、わたしたちのいるこの場所も宇宙だとはなします。

「僕は子どもの頃、夜釣りをするのが好きでした。魚が釣れるまでヒマなので、星空を眺めているんですよ。
僕は星っていうのは一面に張り付いているものだと思っていたので、星に奥行きがあるっていうのを知ったときはショックでしたね。それからは星から星へ冒険するような気持ちで宇宙を見ていたんです」

でも同じ夜空を見ていても、「なぜ赤い星と白い星があるのか」ということが気になる子もいれば、「もっとよく見える望遠鏡の作り方」に興味がいく子もいると気付いたのだそう。

大切なのは、その興味の方向に大人が寄り添い、子どもの「知りたい」を深めていく関わり方です。子どもと天体観測をするときも、星の名前を覚えさせるのではなく、「なんでだろう?」という気持ちに共感して、一緒に探究することです。

子ども心の色を注意深く見て、そのセンスの向きを発見してあげることが、将来の夢につながっていくと的川先生は言います。

自由研究は「課題」じゃなく「探究」のきっかけに

また、「子どもが小3になって読書感想文や自由研究が始まり、プレッシャーを感じている」という親御さんからの質問に対して、的川先生は、こう答えました。

「お子さんは毎日、ぼーっとしているわけではありません。何に興味があるのか、親がじっくり観察してあげることです」

子どもが好きなことを「なんで好きなの?」「どんなことを知りたいの?」と聞いてみる。その答えを大人が一緒に調べてみる。このやりとりこそが、探究心の芽を育てるのだそうです。

素朴な疑問に、「そんなことわからない」「くだらない」と一蹴せず、「いい質問だね、一緒に考えてみようか」と考える力こそ、子どもの力になります。

的川先生は、宇宙の絵本や自由研究キットの監修もしており、この夏、おすすめしたい絵本やキットのご紹介もしてくれました。

宇宙の話をするとき、写真は正確ではありますが、あまりにリアルでその先を想像しにくいことがあります。図鑑を見すぎていて、土星の環を望遠鏡で見ても感動しない子も多いそう。果てしなく広がっていく宇宙を想像するには、絵本はとても有効なのだそうです。

【自由研究キット】(KU-MA)

認定NPO法人 子ども・宇宙・未来の会(KU-MA) https://www.ku-ma.or.jp/

夏休みの冒険は、まず本の中から!

トークショーの会場である「えほん箱パーティー」には、350冊の絵本が読み放題の「絵本広場」や、絵本かるた、ワークショップ、絵本ガチャなど、絵本づくしの企画が盛りだくさん! 多くの親子連れでにぎわいました。

このイベントを主催したのは、旭化成不動産レジデンス株式会社と、お母さん業界新聞社。絵本をきっかけに、より多くの方に子どもの知的好奇心・想像力を伸ばし、世代を超えたコミュニケーションツールとして絵本を活用してほしいという願いが込められています。

実際に的川先生も、宇宙に親しむ入り口として「本の力はとても大きい」と話します。

「せっかくの夏休み。晴れた日は外で友達とたくさん遊んでほしい、というのが本音です。でも、それができない雨の日は、本を読んでほしいですね」

それは、知識を増やすことでなく、「自分なりに考えて組み立てる力」を養うこと。図鑑や観察本だけでなく、物語を読んだあとでも、どうして主人公がこういう行動をしたのか、自分が主人公だったらどうするかを想像すること、そのプロセスこそが、子どもの想像力・思考力を育てるのだと話してくれました。

この夏は、子どもの「なんで?」「どうして?」という気持ちに、親も一緒に寄り添ってみてはいかがでしょうか。絵本や自由研究が、きっとその第一歩になります。

【へーベルメゾン BORIKIとは】
子育て世帯が安心して暮らせることや、人との心のつながりを大切にした環境を目指した、旭化成ホームズの運営する子育て共感賃貸住宅です。入居者同士のつながりを育む取り組みによって、孤立しがちな子育て世代が自然と支え合える環境づくりを目指しています。絵本がある暮らしの素晴らしさを伝えるプロジェクト「BORIKIえほん箱」にも取り組んでいます。

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監修者

的川泰宣 まとがわやすのり

1942年広島県呉市生まれ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授、はまぎんこども宇宙科学館館長。工学博士。東京大学工学部、同大学院博士課程、東京大学宇宙航空研究所、宇宙科学研究所教授・鹿児島宇宙空間観測所長・対外協力室長、JAXA執行役を経て現職。この間、日本航空宇宙学会会長、国際宇宙航行連盟(IAF)副会長などを歴任。ミューロケットの開発、日本最初の人工衛星「おおすみ」ほか数々の科学衛星/探査機の誕生に活躍し、1980年代にはハレー彗星探査計画に尽力。映画化された「はやぶさ」で西田敏行が演じた的場泰弘のモデル。2005年JAXA宇宙教育センターを先導して設立、初代センター長となる。日本の宇宙活動の語り部であり、「宇宙教育の父」とも呼ばれる。著書多数。

取材・文/日下淳子

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