小3男児の発明! 虫の習性を生かしたコバエ捕獲器が「天才的」「他の生き物を使うアイデアが秀逸」とSNSで大反響!【殺虫剤のない世界を作りたい】木下湊太さんインタビュー

カブトムシの飼育ケースに集まるコバエに困ったお母さんのために、小学3年生の木下湊太くんが作ったのがペットボトル製の「コバエ捕獲器」。コバエが下から上へと飛ぶ習性や、カマキリの捕食の仕組みを活かして作られたこの捕獲器のアイデアはSNSでも話題となりました。幼い頃からとにかく昆虫が大好きという湊太くんとご両親にお話を伺いました。

「虫を殺したくない」という思いから生まれたコバエ捕獲器が話題に

――湊太さんの作ったコバエ捕獲器がSNSなどで話題になりました。これを作ったきっかけを教えてください。

湊太さん 家で飼っているカブトムシのケースにコバエがたくさん寄ってきて、お母さんが困っていたので作りました。コバエを殺さずに、他の虫の栄養にできるように考えました。

――どんな仕組みになっているのですか?

湊太さん コバエは食べ物のにおいに寄ってくるので、ペットボトルの中にキュウリの浅漬けを入れておびきよせます。コバエが下から上に飛ぶ性質を生かして、入口は下の方に作りました。

完成したコバエ捕獲器(わかりやすくするためにカマキリのフィギュアを入れています) 写真提供:木下さん

湊太さん ペットボトルの中にはカマキリを入れて、中に入ったコバエを食べてくれるようにしました。ネコジャラシはカマキリの足場になるように入れています。

――カマキリがコバエを食べる仕組みというのは、素晴らしい発想ですね!

湊太さん 人間は殺虫剤を使うことが当たり前になっているけど、それだと他の生き物の栄養にもならないです。カマキリに捕まって食べられるのは、カマキリが生きることにつながるけど、殺虫剤や農薬を使うとほかの生態系にもよくない影響が出ちゃう。だから、命を無駄にしないように考えました。カマキリは脱皮で羽化不全を起こす危険があるとアドバイスをもらい、ハエトリグモでやってみたりしています。

――もともとコバエやカマキリの性質を知っていたのですか?

湊太さん はい。この方法で捕まえられるのはショウジョウバエだけです。コバエの中でもキノコバエは食べ物に寄ってくることがあまりないので、捕まったとしても1、2匹くらい。ショウジョウバエは一晩で20〜30匹捕まえられることもあります。

昆虫が大好き! 自由研究では毎年「嫌われもの」の昆虫たちをテーマに

――湊太さんはどんな昆虫が好きですか?

湊太さん 「ニセハナマオウカマキリ」と「タイワンタガメ」と「マンディブラリスフタマタクワガタ」です。「マンディブラリスフタマタクワガタ」はマレーシア産が特に好きです。ツノの形がかっこいいです。「ニセハナマオウカマキリ」はカマを掃除する動作がかわいいです。

――夏休みは自由研究に取り組みましたか?

湊太さん はい。今年は「どの種類のクモが一番コバエを食べるか」という研究をしました。1年生のときは世界中のいろいろなゴキブリを紹介しました。2年生のときは、ボウフラが汚れた水をきれいにするということを研究しました。6年生までの自由研究のテーマはもう決めています。

取材当日、自由研究を持ってきてくれた湊太さん

――将来の夢はありますか?

湊太さん 昆虫学者になって「殺虫剤のない世界」を作りたいです。日本でも、生物を使って害虫を駆除する仕組みを研究している大学があるので、そういうところで勉強したいです。

1歳の頃のコガネムシとの出合いがはじまり…虫が苦手だったママにも変化あり!

――お母さんは、湊太くんの作ったコバエ捕獲器を見てどのように思われましたか?

湊太さんのお母さん 私が息子に「コバエを何とかして!」と言ってから、30分も経たないうちにこの捕獲器が出来上がったのでびっくりしましたね。もともと工作が大好きで、廃材を見つけては「工作に使えるから捨てないで」というのが口癖なので、身近にある材料を使って何かを作るのが得意なのだと思います。

――湊太さんはいつ頃から虫に興味を持っていましたか?

湊太さんのお母さん 主人も虫が好きなので、小さい頃からお散歩に連れて行っては虫を捕まえたりしていたんです。1歳10ヶ月くらいのときに、家の玄関にいたコガネムシを自分で触ったのが始まりだったような気がします。そこからは虫の世界にハマっていきました。

気がつけばいつも昆虫と一緒だったという湊太さん(写真提供:木下さん)

湊太さんのお母さん ちょうどその頃、昆虫展に連れて行って、世界のカブトムシとクワガタのフィギュアのセットをお土産に買ったんです。それでパッケージに印刷されていたそれぞれの写真を切ってカードみたいにしたら、息子がフィギュアとそのカードを組み合わせて遊びはじめたんです。私には同じようにしか見えないカブトムシやクワガタを見分けられることに感心しましたね。

――今の湊太さんにつながるようなエピソードですね!

湊太さんのお父さん そうですね。息子は自由保育の幼稚園に通っていたのですが、先生にお話を伺うと「湊太くんは今日もずっと虫を探してましたよ」「このイモムシちゃんが1日中、ずっと手の中にいましたよ」などと教えてもらうことがよくありました(笑)。

水生昆虫も大好きだそう(写真提供:木下さん)

湊太さんのお父さん 幼稚園の帰り道も虫を探して、10分で家に帰れるはずが1時間、2時間かかってしまうこともしょっちゅうでしたね。小学生になった今も同じような感じです。ディズニーランドでも、サファリパークでも、建物の中でも虫を探しています。遊覧船に乗ったときも船内の窓にいた小虫をひたすら外に逃していたり…。

湊太さんのお母さん 昆虫に限らず生き物が大好きなので、浜焼きのお店で出てきた活車海老を海に逃したこともありましたね(笑)。

――お母さんはもともとは虫が苦手だったとお聞きしましたが、心境に変化はありましたか?

湊太さんのお母さん 私はコバエが1匹飛んでいるだけでも、「ギャー」っていうタイプでした。でも、一緒に昆虫展に行ったり、息子の話を聞いたりするなかで、少しずつ興味が湧くようになりました。きれいな昆虫がこんなにいるんだということも知らなかったです。息子に育てていただいています(笑)。

図工で作った作品。アリの巣(コロニー)のアリたちが土を掘って巣を作り、カマキリと戦おうとしているところ(写真提供:木下さん)

湊太さんのお母さん 息子は、最近ではご近所で害虫に困っている方のところにレスキューに行ったり、イベントで「虫博士」として豆知識を披露したりと、とても頼もしくなりました。

――家でも虫を飼われているかと思いますが、どんなことに工夫されていますか?

湊太さんのお父さん 自分の生活から離れていると、息子も世話をしにくいと思うので、リビングの一角に虫の飼育スペースを設けています。以前は息子がどんどん虫を連れて帰ってくるので家の中が大変なことになっていましたが、今は庭も活用したりして息子が自分で世話できる範囲の虫を育てています。虫とりに行く場所は、子どもが一人で行くのには危ないところが多いので、本人が行きたいという場所には一緒に行くようにしています。

「子どもの好きなことを阻害したくない」 一人の「人」として接することを大切に

湊太さんの興味を大事にしているご両親

――子育てで大切にしていることを教えてください。

湊太さんのお母さん 本人の興味のあることをなるべく阻害したくないと思っています。虫に関しても、私はもともと虫が苦手だったけれど、息子が捕まえた虫を連れてきちゃダメとは言いたくないと思っていました。本人の興味があることは応援してあげたいです。

漢字ドリルの“せみが死ぬ”という書き取り問題に「これは絶対に書きたくない」と主張したというエピソードも(写真提供:木下さん)

湊太さんのお母さん 小学校に入ってからはかわいいものが好きになったりとか、色も女の子っぽいものが好きになったりもしているのですが、お休みの日だったら、本人の着たいような女の子っぽい洋服を着てもいいと思うので、まずは本人のやりたいようにさせています。

湊太さんのお父さん 僕は父親だからというのもあるのかもしれませんが、あまり「子育て」という言葉にピンと来ていないところがあって、「育てる」というより、一人の人間として接している気がします。

お父さんと虫捕りに行くのを楽しみにしているそう。虫捕りをするときは親子でゴミ拾いもしているのだとか(写真提供:木下さん)

湊太さんのお父さん だからこそ、息子にも「親に何かしてもらって当たり前」と考えてほしくないなと思っています。自分が思っていることや、やりたいことは言葉で伝えてほしいし、自分でできるように行動してみてほしいと伝えていますね。

――湊太さんにはどんな大人になってほしいですか?

湊太さんのお母さん 彼のすごい不思議な魅力というか、私も虫が大の苦手だったのが少しずつ興味が湧いていったように、周りのお友達もだんだん虫好きになっていってるんです。そういう力を持っているんだなと思います。幼い頃からこんなに自分が大好きだって思えるものに出合えたことはすごくありがたいことだと思うので、「殺虫剤のない世界を作りたい」という夢とかに向かって進んでもらいたいと思っています。

ーーありがとうございました!

木下さんのXアカウント「虫ぐるいの母と虫ぐるい湊」もぜひチェックしてみてください!

取材・文/平丸真梨子 撮影/杉原賢紀

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