《中学受験》不登校から偏差値60超の有名校に合格!「対人不安で塾や模試にも行けなかった」伸びた理由、学校選びのポイントは?【ココロミル・山田塾長に訊く体験談】

「学校に行けない」「勉強が手につかない」──。不登校だった子が中学受験に挑むとき、立ちはだかるのは学力だけではありません。環境の変化、自己肯定感、対人関係…小さな心にのしかかる壁は、想像以上に高く複雑です。そんな子どもたちの“もう一度、前に進みたい”という気持ちに寄り添い続けているのが、不登校からの進学に力を入れる塾「ココロミル」。実際に、教室の前で一歩が出ずに固まってしまう子も、ここでは少しずつ表情が変わり、再び学ぶ喜びを取り戻しています。

今回お話を伺ったのは、偏差値60超えの有名私立女子中学に合格したケース。なぜその子は受験に挑戦し、乗り越えられたのか?事例とともに、学校選びのポイント、親ができる関わり方などを代表の山田佳央さんに伺いました。

小学5年生からの不登校…6年生の秋に始まった中学受験への挑戦

――まず、お子さんと初めてお会いしたとき、どのような状態だったのでしょうか。

山田 佳央さん(以下、山田さん):ココロミルに来たのは小学6年生の10月ごろでした。小学5年生のころから、学校の先生への強い恐怖心から不登校になり、そこから学校に通えない状態が続いていたようです。小学校では先生が大きな声を出すと、それが自分に向けられたものだと感じてしまったと聞いています。

対人関係や学習面でつまずき、学校へ行けなくなる子どもたちは後を絶たない
(写真はイメージ)

ーー小学校の先生への恐怖から、不登校になってしまったんですね。

山田さん:そうなんです。繊細さゆえに、ほかの子どもが叱られているだけでも、自分が責められているように受け取ってしまう…。不登校のお子さんの中には、よくあるケースだと思います。

中学生になったらまた学校に戻りたい気持ちはあるものの、地元の中学校は友人関係が変わらず、再出発は厳しいかもしれないという話になりました。そこで、環境を変えるための選択として、中学受験に挑戦する決断をしたんです。

最初の壁──塾に来られない、人と会うことへの抵抗感も

――実際にどのように学習が始まったのでしょうか?

山田さん:そもそも、最初は「私と会うこと」自体が大きな壁でした。

不登校の子どもたちは、「塾に通う」と決めても、実際には新しい人や場所に飛び込むことに抵抗があるケースが多々あります。塾まで来られないことが珍しくなく、今回も同じでした。そこで、最初は家庭教師としてご自宅へ伺う方法をとったんです。

しかし、実はそれでも、最初は会ってもらえませんでした。どんな先生が来るのか分からず、怖かったのだと思います。そこで私は、手紙と、当時執筆していた国語の本をそっと置いて帰りました。

――その後、なにか反応はあったのでしょうか。

山田さん:あとから聞くと、私が帰ったあとにその本を読んでくれたそうで…。きっと勇気を出してくれたのだと思います。お母さんを通じて「次回は会います」と連絡があって、その後ようやく顔を合わせることができました。

不登校の子どもにとって、まず「人に会えること」。それが、すべての始まりとなると同時に、勇気のいる一歩なのだとあらためて感じました。

次に立ちはだかった大きな壁「模試の会場に行けない・・・・・」

――勉強は順調に進んでいったのでしょうか?

山田さん:教え始めると本人の努力もあって学力は伸びていきました。でも彼女は初めての場所に足を運ぶことへの抵抗が強く、模試の会場まで行けないんです。実際、こうしたケースは決して珍しくありません。申し込んでも当日どうしても一歩が踏み出せないのです。

新しい場所に行くことや、周囲に子どもがいる環境が、強いプレッシャーになる子も

山田さん:そこで、模試の前に練習として、一度ココロミルに来てもらうことを提案しました。しかし、彼女は挑戦してくれたものの、実際には建物の外観を見るだけで精一杯で…。塾には入れずに、そのまま帰ってしまったのです。

スモールステップの積み重ねが導いた“自信の回復”

――模試の会場もですが、塾に入ることも怖かったのでしょうか。

山田さん:そうなんです。頭では「入らなきゃ」と理解している。でも、どうしても一歩が踏み出せない。あとから聞くと、塾の前で涙を流していたそうです。

そのとき、もっと本人の目線に立ち、ステップをより小さく設定する必要があると気づきました。
まずは保護者と一緒に、ほかの子どもがいない時間帯に来てもらう。それができたら、ひとりで来て、先生と1対1の授業を受ける。そして次は、母親と一緒に集団授業に入る——。そんなふうに、ゆっくりでも段階を踏んで慣れていけるよう切り替えました。

こうして積み重ねた「できた!」という小さな成功体験が、自信を取り戻すきっかけになりました。その結果、模試にも参加できるようになり、最終的には受験本番でもすべての会場に足を運べるようになったのです。

社会やビジネスを学びたい! 短期間で集中し、偏差値60超えの有名私立中学に合格

不登校を経験した子どもが、新たな学びや先生とのつながりをきっかけに、
ぐんぐん吸収していくケースも少なくないと山田先生は語る

――最初の姿からは想像できないほど、大きな成長ですね。なぜその子は最後まで頑張れたのでしょうか

山田さん:不登校という現状を変えたいという強い思い、そして志望校への憧れが原動力になったのだと思います。企業や起業家を招き、社会やビジネスを学べるという特色に魅力を感じたようで、「この学校に行きたい」という気持ちが、彼女を前へ進ませる大きな力になりました。

短期間ながら集中して学習し、偏差値60を超える有名私立女子中学に無事合格しました。

受験を通して親子の会話も増えた

――中学受験をすることで、家庭内での変化もあるのでしょうか。

山田さん:ご家庭への影響はとても大きいと思います。不登校のお子さんのいるご家庭では、親御さんが会話や言葉選びにとても慎重になり、毎日のできごとについても気軽に聞きにくい空気になることがよくあります。子どもは1日中家にいる状態なので「今日どうだった?」という、普段なら自然に交わせるひと言もかけにくくなるのです。

――たしかに、ずっと家にいる子どもには、何気ない声かけが難しくなる場面もありそうですね。

山田さん:そうですね。しかし、塾に通い始めると、子どもがみずから「今日はこういうことがあってね」「山田先生にこんなことを教わったよ」と話してくれるようになり、自然に家の中での会話が増えていくと聞きます。

実際、合格した子の保護者の方からは「合否よりも、家で子どもが楽しそうに話してくれるように変わったことが、親としてなによりもうれしい」という言葉をいただきました。学習を通して、親子のコミュニケーションが回復した例だと思います。

中学入学後「楽しくやっています」の手紙が

――実際に中学入学後は、学校に通えるようになったのでしょうか。

山田さん:はい。楽しんで学校に通っているようです。中学校ではダンス部に入り、副部長として活動しており、「とても楽しくやっています」と手紙ももらいました。新しい環境でいきいきと過ごしている様子が、とてもうれしいですね。

合格後に、再び不登校になりにくい学校選びを

ご家族と面談を重ねながら、学習カリキュラムの設計から志望校選びまで伴走している

――不登校の子が受験校を決める際、どんな点に注意すべきでしょうか。

山田さん:まず、出願段階ですべりどめ校合格の可能性が高い学校を必ず組み込み、受験日を分散させて選択肢を広げておくことが大切です。

もし1校も合格できなければ、結局いまの環境の延長にある中学校へ通うことになります。これは本人にとって相当つらいことだと思います。合否のショック以上に、心をさらに追い詰めてしまう可能性もあります。

だから1校に絞らず、「ここなら行けそう」「ここなら雰囲気が合いそう」という学校を複数持っておくことが重要です。

また、中学受験には4科目受験と2科目受験があります。6年生の夏から受験に挑戦するなど、準備期間が限られている場合には、国語・算数の2科目受験を選ぶことで現実的な戦い方ができるケースも多いですね。

――学校の選び方にもポイントがあるのでしょうか。

山田さん:不登校だったお子さんほど、自主性を尊重し、多様性を受け入れる校風の学校のほうが、まずは学校に通い続けるという点で向いていると感じています。
反対に、校則が厳しく、進路指導が手厚いがゆえに居残りや補習が多い学校は、本人への負担が大きくなりやすいかもしれません。

だからこそ、実際に学校を見たり、説明会で雰囲気をチェックしたりしながら、再び壁にぶつかりにくい環境を選ぶことが重要だと思います。

子どもたちの“再出発”のために、親ができること

――最後に、保護者の方に伝えたいメッセージはありますか?

山田さん:中学受験は、子どもにとって新しい環境へ踏み出す大切なきっかけにもなります。「できた!」という小さな成功体験を積み重ねることで、子どもたちの自信を取り戻し、未来への希望につなげることができます。

「最初は机に向かう気持ちすら持てなかった」「先生に会う勇気が持てなかった」――そこからのスタートでも、少しずつ力を蓄え、最終的には偏差値の高い学校に合格していったケースがたくさんあります。小さな「できた!」の積み重ねが自信の土台となり、表情が明るくなり、会話が増え、家庭の空気まで変わっていく。点数や合格といった目に見える成果だけでなく、その過程で生まれる変化こそ、私はなにより尊いと感じています。

不登校だからといって可能性が閉ざされるわけではありません。前向きな挑戦を通して、多くの親子が明るい未来を掴んでいくことを心から願っています。

前編では、不登校の子が“中受”を選ぶべき理由、学習への寄り添い方などを教えてもらいました

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「教育は本当に平等なのか」──大学時代に抱いた違和感が、不登校支援の原点に ――「不登校からの進学受験ガイド」など、受験をきっかけと...

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山田佳央 ユサブル 1760円(税込)

子どもの未来に向けた選択肢を知り、あせらずに不登校に対処して頂くための1冊。

不登校がメリットに変わる本書のおもな内容
「「受験」が不登校を解決した」
「不登校だからできた受験の成功実例」
「不登校問題の現状を整理する」
「不登校の子が通える教育機関」
「不登校からの「受験」ガイド」
「公立学校が抱える不登校の構造的要因」
「不登校の子に合う学校を見抜くポイント」
「教育機関の選び方と具体的な指導方法」

お話を伺ったのは

山田佳央さん 個別指導塾ココロミル

個別指導塾ココロミル塾長。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本たばこ産業株式会社(JT)に勤務。その後2009年に「ココロミル」を開校。指導歴20年以上、これまでに3,000名以上の子どもと保護者に指導・相談を行ってきた。集団・個別・映像の多角的なアプローチで支援を行い、偏差値30台から早慶レベルまでのV字回復を多数実現。御三家、早慶付属、MARCH付属をはじめとする幅広い合格実績を持つ。
著書に『国語の心得』(国書刊行会)、『小学国語900のことば』(双葉社)、『不登校からの進学受験ガイド』(ユサブル)。

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構成・文/牧野 未衣菜

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