娘が3歳のときに妻と死別でシングルファーザーになった僕は、日々の生活をまわすことで精いっぱい。もちろん、余裕なんてほとんどありませんでした。そんなとき、同じように子育てと仕事に奮闘するシングルマザーの方と出会いました。
最初は共通点が多いことからの安心感から始まり、お互いの子どもたちもゆっくりと交わっていきました。そこには、うれしさや戸惑い、いろいろな感情がありました。今回はそんな恋愛のお話をさせてください。
会話の中心はいつも「ワンオペ育児のあるある」。

「朝の準備がバタバタすぎる」「仕事中に電話が鳴るとドキッとする」
そんな小さな共通点を話しているうちに、「シングルで頑張っているのは自分だけじゃない」と励まされているような気持ちになり、僕は彼女からいつも元気をもらっていました。
さらに仕事がうまく進まず娘の迎えが遅れたときのやるせなさ、娘の行動に一喜一憂し、時には八つ当たりしそうになる器の小ささを自覚しながらも、どうにもならない感情……。彼女はそれらを否定せず、ただ笑いながら話を聞いてくれました。
僕も同じように彼女の話に耳を傾け、お互いが寄り添いながら会話をすることで、二人とも表情と気持ちがいつも明るくなっていたことを覚えています。そして僕たちは交際することになりました。
交際後も、予定や計画は会話と同じで「子ども中心」。子どもの発熱ひとつでデートは白紙、行事が入れば計画はすべて組み直し。
それでも会えた日、彼女の「子ども優先は大前提。そんな中でもこうして会える少ない時間が自分を整える貴重な時間になっている。どんなときも元気な姿を子どもに見せることができるパワーを注入する充電時間みたい」という言葉のおかげで、僕も充実した気持ちで毎日頑張れました。
ふたつの親子が交わるということ
子どもたちのほうも、お互い一人っ子だったので僕たちが交際することによって姉弟のような関係が生まれました。
最初は仲良く遊んでいたのに、ちょっとしたことでケンカしたり、どちらかがすねたり、泣いたり。そのたびに大人の僕たちは「どうしたらうまくいくんだろう」と頭を抱えます。特にお互い相手の子に注意する際は、とてもぎこちなかったと思います。ふたつの親子の関わりは、やはり簡単ではないですよね。
また彼女と僕が仲良く話していると、彼女の息子くんがやきもちを焼くこともありました。彼側から見ると、いきなり現れた知らない大人に大好きなママを取られそうで心配になるのは当然ですよね。
だから、僕はまず息子くんと「友達になる」ところから始めました。公園での全力鬼ごっこや肩車などの身体を使うことから、カードゲームや手品などいろんなことをして一緒に遊びました。彼を笑わすためにこの時期に磨いた変顔は、今では僕の特技のひとつになっています(笑)。

そんな時間が少しずつ積み重なったある日、彼は僕に照れ笑いしながら、こう言ってくれたのです。
「ママにチューしていいよ」。
あれは忘れられない瞬間でした。彼の気持ちが「取られる」不安から「信じても大丈夫」にゆっくり変化してくれた気がしました。
4人で温泉旅行へ行ったときも、彼女ではなく僕と一緒に男湯に入ってくれたときは本当にうれしかったですね。僕は男の子とお風呂に入るのが初めてだったし、彼も初の男湯で、年齢は大きく違っても男同士で心が通じ合えたような不思議な感覚だったことをよく覚えています。
娘のほうも、いつも入れなかった女風呂に入れて満足そうでしたし、僕たちと同じように女子ならではの時間を満喫しているように見えました。
子どもたちにとっては、きょうだいのような存在と友達のような大人の両方が同時にできたような気持ちになっていたのかもしれませんね。
特別が日常に変わったとき
そんな時間とともに、初めの頃はぎこちない部分や壁があったように感じた4人の関係は少しずつほぐれていき、僕たちはステップファミリーになることを前提に、4人で暮らす決意をしました。
住む場所を決め、現状の環境をそれぞれが離れ、新たな場所で生活をスタートすることに。
始めのうちは段ボールで足の踏み場が少ないスペースの中でご飯を食べたり、必要なものを見つけられずにみんなで探したり、毎日がバタバタでしたが、みんな最高の笑顔で過ごす時間ばかりでした。毎日が特別でワクワクする感情があふれるような始まりでした。
けれど、会えない時間があったから特別に感じていたものが少しずつ薄れていき、その生活の雰囲気は変化していきました。
朝の支度のテンポ、夜の静けさの感じ方、テレビの音量、洗濯物の干し方など、どれも些細な違い。それが毎日となると、どこか小さな息苦しさを感じてしまう・・・。それは子どもたちにも影響し、ケンカややきもち、すねる回数が増えていきました。
僕と彼女の会話もいつのまにか「会話=調整」のように。その話題は、買い出しや家事の分担、子どもの送迎、寝る時間などばかりになっていきました。
また、お互いの体調の波、機嫌のムラ、無言の時間の取り方が気になり、一緒にいるのに近づけない・・・。そう感じる時間が増えていきました。毎日会えなかった頃なら笑って流せたことが、日々の生活の中心で繰り返されることで、ネガティブな感情ばかりが蓄積されていくように。
そして僕たちは同居生活を終え、別れることを決めました・・・。
ハッピーエンドではなかったけれど・・・

ここまで読んでくださった皆さんの中には「2組の親子が一緒に生活するのは難しすぎる」「やっぱりやめたほうが無難」などと、ネガティブに感じた方もいるかもしれません。
でも、今の僕は正直に言うとそう思っていません。なぜなら、うまくいかなかった原因は、当時の僕が未熟すぎただけだったから。
「○○はこうあるべき、こうすべき」のような持論ばかりを大事にし、娘のことを含め、ひとりひとりの意志を尊重しようとしていませんでした。何かあるたびにネガティブにしか考えることができませんでした。もし、もう少し僕の努力があれば、また違う方向に進んだと思います。本当に器の小さい男であり人間でした。
でも、そんなことに気づいたのはこの経験があったからですし、すべてが本当に貴重な時間でした。それらは間違いなく、今の僕と娘の幸せにつながっています。だから、僕はシングル親同士の恋愛を心から応援しています。「ステップファミリーになれなかったお前が言うな」と思った方もいるかもしれませんが・・・(笑)。
2つの家族が出会って同じ時間を共有した日々は、心の底から幸せを感じさせてもらえた時間でした。2組の親子が交わることはたしかに簡単ではないですが、感じた幸せは足し算ではなく掛け算のように大きいものでした。
きっと彼女たち親子も同じように思っていてくれているはず・・・と思うのは僕の勝手な妄想かもしれませんが(笑)、僕と娘にとってはかけがえのない時間でした。
もし、この話がシングル親同士で恋愛中のカップル、これからそれが始まる方の役に立てたら、僕も本当に幸せです。
なにはともあれ、すべての親子が幸せになりますように!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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文・構成/ひまわりひであき
※写真はイメージです。
