目次
国語学習、3つの基本
算数などの他の教科と違って、国語はセンスで解くものと思っている人も少なくありません。実際は、国語にも問題を解くテクニックがちゃんとあります。そのため、それらを身につけることが高得点を取ることにつながります。
まずは、国語の効果的な学習法があることを知っていただきたいと思います。
①定期的に読解問題に触れる
読解問題にできるだけ触れることは、大事なトレーニングです。学年相応の読解問題を解く経験を積み重ねて、読解問題に慣れておきましょう。
②文章の「型」を理解する
どんな文章にも、共通するパターンやルールが存在します。例えば、キーワードを発見する、著者の主張を把握する、「問いかけ」があれば「答え」がある、などの読み方。また、詩・物語・論説文でも解き方が変わってきます。やみくもに解くのではなく、まずは基礎であるこれらの「型」を大切にして問題を解いていきましょう。
③「読書」はNG! “客観的な読み方”を意識する
国語のテストの問題は、「読書」のように自由に読み進めたり、感情移入などはしたりしてはいけません。自分だったらどうするのかという“主観的な読み方”ではなく、文章に書いてあることを正しく読み取る“客観的な読み方”が求められているのです。「読書」にならないようにすることが基本です。
①~③を意識しながら国語の学習を進めてみてください。小学生から高校受験まで、内容のレベルは違ってもやることは同じです。学習の基礎を身につけることは、小学校以降の学びにも影響してくるので、中学受験はそのチャンスと思って取り組んでみるといいでしょう。
やりがちだけど注意! 直感や感覚で解かずに、理屈で解く習慣を

小学生にありがちなのが、直感的に国語の問題を解いてしまうことです。これは学校では読解のテクニックを教わったことがないので、仕方ありません。
頭の回転が速い子はパッパッと問題を解き進めてしまい、一見理解できているように感じるかも知れませんが、実際はそうとも限りません。どうしてこの答えを導き出したのか、どこを根拠に解いたのか、親御さんが意味づけを確認してあげる必要があります。
問題をひとつひとつ確認していく作業は時間がかかることですが、国語の学習というのはそういうものです。中学・高校の学習でも、さらにはその後の大学受験でも活きる方法なので、しっかりと身につけていってほしいと思います。逆に言えば、なんとなく解く方法を続けてしまうと、それを直していくのは大変な作業です。小学生のうちに理屈で解く習慣を身につけておきましょう。
■おすすめの本:『中学受験国語 文章読解の鉄則』
漢字は先取りでもOK! 語彙はまとめて集中的に
文章読解については、わざわざ難しいことを先取りしてやる必要はありませんが、漢字の学習は先取りしても構いません。漢字の学習は筋トレと同じなので、お子さんの様子を見て、どんどん進められる場合は進めていきましょう。

語彙の学習についても、お子さんが嫌がらなければ進めてもいいとは思いますが、無理をしないようにしてください。語彙力は、精神年齢や普段読んでいる本によって個人差があると思いますので、5年生くらいになってから集中的に取り組んでも遅くはありません。むしろその方が、お子さんが「受験に必要なことだから」と理解して意欲的に取り組める場合もあります。焦らなくても大丈夫です。
「ご家庭での会話のレベルを上げて語彙力を増やしてください」という先生もいますが、それは現実的ではないですよね。今の会話レベルが一体どれくらいのレベルなのか、そこからレベルを1上げるとどうなるのか、測ることは難しいです。会話を意識するよりも、中学受験をターゲットにしたドリルなどで効率よく学習していく方が確実です。実際に試験で出た語彙で構成されているので、その方が効率よく学習ができるからです。
■おすすめの本:『中学入試 語彙力トレーニング1400プラス1 基礎編』
『中学入試 語彙力トレーニング1400プラス2 発展編』
子どもは覚えるのも早いけど忘れるのも早い! 繰り返すことが大切
私は現在、オンラインの家庭教師をメインに活動していますので、日本全国の中学受験生を見ています。難関校を受験するお子さんも指導していますが、ほとんどのお子さんが努力を積み重ねている“秀才”です。受験生の中には、一度見ただけで覚えてしまうような“天才”もいるようですが、私はまだ出会ったことがありません。ついつい隣の芝生は青く見えてしまいますが、どのご家庭のお子さんも地道に積み重ねているので安心してください。
また、子どもは記憶するのも早い分、忘れてしまうのも早いです。大人と違ってすぐに忘れてしまうので、「うちの子は物覚えが悪いのかも」などと心配する必要はありません。「子どもは忘れるもの」と思って何度も繰り返し学習を進めていってください。

難関校に合格するお子さんも、基本的には繰り返しの学習をしています。“詰め込み”という言葉にはいけないイメージがついてしまいましたが、問題はその“詰め込み方”なのです。
例えば、『中学受験国語の必須語彙2800』という私の著書に関して、親御さんは「2800なんて覚えられません!」と最初は驚くのですが、子どもは意外と抵抗がないものです。2800なんてすぐに覚えてしまいますよ。ただし、すぐに忘れるので「3年生からもう10周もやっています!」という教え子もいます。子どもとはそういうのです。すぐに覚えて、すぐに忘れてまた覚える、その繰り返しです。
難関校ほど国語の点数も大切です!
さて中学受験において、算数が得意な子が有利であるのは間違いありません。ただし、私が指導してきたお子さんたちを思い出してみると、難関校に合格する子ほど国語の点数もきちんと取れていました。
例えば、関西の灘中学校は、試験の点数を開示してくれる学校です。教え子で灘中学校を受験する子には、「点数を聞いて帰ってきてね」とお願いしています。その結果で確信しているのですが、やはり合格する子は算数だけでなく国語でもかなり合格者平均点に差をつけています。
関東だと栄東中学校は点数を開示してくれており、受験者平均点と合格者平均点も出してくれています。難関校に合格した子は、算数だけでなく国語でも9割超えで点数を取っていました。仮に受験者平均が6割だとした場合、相当差がつきます。だからこそ、国語の学習もないがしろにはできないのです。
通塾は新4年生からでOK。点数よりも通塾サイクルを
最近は1、2年生の早いうちに中学受験専門の塾に通わせるご家庭が多いと聞きますが、早く通わせるから良いというわけでもないと私は考えています。実際に、受験に必要な学習が始まるのは4年生からなので、急ぐ必要はありません。

3年生の2月(新4年生)から通塾を開始したら、まずは点数よりも通塾サイクルを回すことを意識してみてください。4年生のうちは宿題も多くありません。どんな宿題がどれくらい出ているのかをお子さん自身が把握し、次の通塾までにどういうペースで進めるのかを考えられるようにしていきましょう。
4年生のうちに通塾スタイルができあがっていれば、宿題の量がどんどん増える5・6年生になっても、何を間引いてどれくらいやるのか、という見通しがつけやすくなります。親御さんは学習計画を立てられるようフォローしてあげてください。
子どもは意外とのんびりしているもの。焦るのは親の方
もちろんお子さんにもよりますが、入試の1週間くらい前になってやっと追い詰められていることに気づく子もいます。それまでは何も変わらないと思っていた方がいいと思います。親御さんの多くは「うちの子、いつなったらエンジンかかるんですかね…」とおっしゃいますが、焦っているのは親だけです。それが中学受験です。
しかし、それが中学受験の醍醐味でもあります。高校受験になると完全に本人の意思ですし、大学受験になると親はお金を出すだけになっていきます。親が自分の身を削って伴走するのは中学受験だけなんです。その子にとっては一生に1回のことだからこそ、親御さんはとにかく焦ってしまいます。

以前、こんなお母さんがいました。
「先生の生徒さんのお母さんってどんな感じですか?」と聞かれたので、逆に「どんな感じってどういうことですか?」と聞き返したら、「顔色いいですか?」と。「まあ普通だと思いますけど」と答えたら、「今日模試を受けに行ったら、お母さんみんなゾンビみたいになっていて…」とお話しされていました。お子さんが中学受験をしている親御さんでも、すごく元気な方もいれば、げっそりとされていたり、血の気がなくなっているような方もいらっしゃいます。ご家庭それぞれで違うので、周りを見て気にする必要はありません。
きれい事かもしれませんが、中学受験は親子でできる最後の受験です。大切な時間を一緒に過ごしていると思ってあげる方が幸せな受験になりますよね。中学受験できる環境はとっても恵まれています。
とはいえ、ほとんどの親御さんはイライラしますよね。教え子に「お母さんやお父さんって怒らないでしょ?」と聞くと「いや、めちゃくちゃキレますよ」ってみんな言ってますからね。そんなものです。高い塾代を払って通わせてるのにゲームばかりして遊んでいたり、塾をサボっているのがわかったら、イライラするのは当然です。
難しくとも、教育とコスパを結びつけずに過ごせるといいですね。
『塾技』は問題の解き方に疑問を持ったときが始めどき
『中学入試 塾技 国語100』(以降『塾技』)に書いてあるテクニックは高校受験まで使える内容になっています。一般的には、ある程度受験に必要な要素を塾で教わってからの方が使いやすいとは思います。
これまで学んできたことが正しいのか、なんとなく解いていた部分の確認に使うのがおすすめです。国語の学習で「これでいいのかな?」と疑問に思ったときがチャンスなのです。

中学受験界では、本番に近いレベルの問題を解くようになるのが5年生の夏前くらいから。その頃になったら、宿題や模試の振り返りに『塾技』を使っていくのもおすすめです。5年生の夏以降、一気に国語も難易度が上がってきます。今まで感覚で解いてたものが解けなくなってきますので、『塾技』で学習をしておくのにちょうどいいタイミングではないかと思います。
ただし個人差があるので、やりたかったら4年生からでも可能ではあります。先にやれるならやってもいいし、6年になってからでも遅くはありません。
■おすすめ本:『中学入試 国語 塾技100』
算数が得意な子は国語も得意になれます! 苦手意識を持たせないように
“算数は得意だけど国語が苦手”というお子さんも多いと思うのですが、そこは分けて考える必要はないと私は思っています。算数が得意な子は論理的な思考ができるので、国語にも活かすことができます。数字が文字に変わっただけだと考えてください。
論理的な思考は、国語だけでなく中学以降の英語学習にも役立ちます。特に高校英語や大学受験の英語を理解するためには論理的な思考は必須です。
小学生の場合、“好き”とか“嫌い”という感情が成績に大きく影響している部分があるので、嫌いじゃなくなれば成績も上がるようになります。苦手意識を持たせないようにするだけで変わってきますよ。
中学受験の“不合格”は失敗ではありません

受験塾の先生たちは、全敗を避けるようにします。「(受験した学校)全てに落ちてしまうと、お子さんがかわいそうなので、この学校も受けてください」と、ご家庭が希望していない学校まで受験をするように勧めてきます。私は大手の塾などに所属していないから言えることですが、やはりお子さんや親御さんが魅力を感じて通いたいと思った学校に絞って受験してほしいと思っています。
中学受験国語で身につけた知識は、高校受験でも活かすことができます。無駄になることは全くないのです。
中学受験の国語の学習は高校受験の最短ルートにも!
最初から高校受験を目指すお子さんでも、国語においては中学受験の勉強するのにも意味があります。高校受験用の国語のテキストなどを見てみると、中学受験の国語とレベルはほとんど変わらないことがわかります。
『塾技』の中にも中高一貫校の過去問を入れてありますが、それを見ていただくとわかる通り、近年の関東(特に首都圏)の中学受験の国語は本当に難しくなってきており、当たり前のように高校受験レベルの問題が出てくるようになってしまっています。大人でも一度読んだだけでは意味が理解できない論説文を出してくる学校もあるほどです。
ですから、国語が得意で小学校の国語のレベルでは物足りないと思っているお子さんは、教養的なものが身につくと思って中学受験の国語の問題にチャレンジしてみるといいと思います。それが高校受験の最短ルートになりますよ。
『塾技』は、高校の教科書レベルの内容をとにかく小学生にわかりやすく砕いて書いてあります。実際に私が指導する中で、優しい言葉を選んで作りました。国語の成績が急に落ちてしまったというお子さんや、国語のテスト対策の方法がわからないとお悩みの方は、ぜひ『塾技』に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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お話を伺ったのは
1973年福岡県生まれ。大学在学中に塾講師や家庭教師を経験し、「小学生や中学生に教えることの面白さや奥深さ」に目覚める。大学卒業後、いくつかの進学塾を経て、現在は主に家庭教師やオンライン授業(1:1形式)で、御三家志望から国語が苦手な受験生まで幅広く指導している。YouTubeチャンネル「プロ家庭教師・井上秀和の『ここだけの話』」では、解説動画や国語の勉強法動画などを配信し、受験生やその保護者のみならず、教育関係者からも注目を集めている。
理想とする国語の指導スタイルは、「曖昧さを徹底的に排除した、算数や英語のような『理論的説明』による授業」。
主な著書に『塾講師が公開!中学入試 国語 塾技100』(文英堂)、『中学受験国語 文章読解の鉄則 増補改訂版』『中学受験国語の必須語彙2800』『中学受験国語の必須語彙ドリルA(基礎レベル)』『中学受験国語の必須語彙ドリルB・C(標準・ハイレベル)』(以上エール出版)などがある。
文・構成/鬼石有紀