中学受験は『負け癖』に注意! 日本屈指の“成績が伸びる塾”進学塾VAMOS(バモス)代表 富永雄輔先生に訊く、心が折れてしまった子への対処法と子どもが学び続けられるコツ

毎年首都圏トップクラスの、志望校への高い合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として雑誌やメディアに多数出演をしている進学塾「VAMOS」。結果を出し、さらには伸び続ける!「受験を終えた翌日から、次のステージの勉強をしに来たくなる塾」では、一体どんな学びをサポートしているのでしょうか。
また、「VAMOS」には、受験勉強で心が折れてしまったお子さんが、親御さんとご相談に来ることも少なくないといいます。今回は、代表の富永雄輔先生に、心が折れてしまったお子さんへの対処法と、子どもが学び続けるコツについてお話を伺いました。

中学受験で注意すべきは『負け癖』や『逃げ癖』

塾の方針が違えばやり方も違うし、お子さんの性格にもよるので一概にも言えないのですが、過度な競争において、『負け癖』『逃げ癖』がついてしまう子が一定数います。そこが中学受験(以後、『中受』)する意味を、慎重に考えなければならない点です。

僕はよく子どもたちに、「人生は長いから、最後に振り返ったとき、51勝49敗くらいでいいんだよ。最後に2勝だけ勝ち越せば成功!」と話をします。0勝、あるいは勝ったことがあっても20勝80敗ぐらいで『中受』が進んでしまうと、気持ち的に子どもが盛り上がらなくなるのは仕方がないことなんですよね。

子どもの心が折れてしまうと、親子喧嘩を頻繁にしてしまうとか、問題を見ただけで吐き気がするとか…イップス(※)になってしまうことが懸念されます。さらには、2月3日以降はもう二度と教材を開きたくなくなり、勉強に対するモチベーションが全くなくなってしまう子もいます。

※これまで無意識にできていた動作が、精神的・心理的な要因で突然できなくなる症状

たまたま首都圏でこの時代に子育てしているからこそ『中受』があり、過熱地域ではない場所や海外で子育てしていたり、30年前に子育てしていたらば、『中受』には出合わなかった確率が高いですよね。ですから、非常にレアなことにお金をつぎ込んでやっているのだと、保護者も冷静に考えてもらいたいと思います。

VAMOS代表 富永雄輔先生

中学受験はスポーツよりも過酷! 子どもを“ほめる前提”で見守ることが大切

僕はスポーツの業界でも仕事をしているので、普段から不思議に思うことがあるのですが、スポーツの世界では親御さんが「子どもをプロにしよう」と小さい頃から本気で取り組んでいるご家庭はそこまで多くありません。フィジカルなど、伸びるにも限界というものはある、と考えている印象です。

しかし、勉強になると話が別になる。全員同じことをしたら、同じように学力が伸びると思い込んでしまう風潮があると感じます。

勉強もスポーツも音楽だって、才能やセンスというものが一定数ある中での人間の競争。なので、勉強におけるその子の“ほめポイント”、“成長ポイント”をある程度は決めてからスタートしておかないと、『中受』で満足感を得る子なんてほとんどいなくなってしまうと思います。

大事なことは、子どもが笑顔でいられること

例えば男子で言うと、開成、渋渋、聖光、筑駒、麻布に入る子たちにとっては満足な『中受』になるのかもしれません。ですが、それは全受験生の2%とか3%程度。では残りの97~98%のたちはつまらない『中受』になってしまうのか? ということです。『中受』には、その子なりの成功体験や努力があればいい。人生の中の、その時々のゴールを大事にしないと、潰れてしまいます。

受験勉強も育児! 子どもの発達段階によって徐々に手放す

僕は今までの経験上、子どもよりも保護者が先に潰れるケースが多いと感じています。保護者の人間関係や夫婦関係がおかしくなって、仕事にも影響が出てしまう方も見てきました。保護者自身がメンタルを安定させられないのであれば、『中受』のやり方を考えなくてはいけません。

12歳の受験がすべてではない

理想の学び方は、子どもが主体的に勉強に取り組むことです。ですが、それはあくまでも理想であって、それができている子はほんの一握りです。だからこそ、末長く子どもの取り組む姿勢に目を向けなければならないと思っています。人生100年と想定すると、12歳なんてまだ10分の1ちょっと! 12歳の受験なんてちっぽけなものなんです。これを極端に重要視してはいけません。

12歳の受験で、人生が決まるわけではありません

『中受』がこんなにも大変に感じる理由としては、スポーツや音楽の世界では重要な山が高校生ぐらいに来るのに対し、『中受』だけが10歳から12歳。その時期を過度に盛り上げすぎてるから子どもが潰れてしまうのです。高校野球だと甲子園で18歳くらい。ピアノのコンクールも15歳から18歳くらいでしょうか。

冷静に考えてみるとわかる通り、10歳から12歳で、勉強・生活のすべてにおいて主体性を持てる子なんてほぼいません。だからこそ、その子のどこか一部分にでも主体性があったら、そこをほめてあげるべきなのです。

例えば「毎朝起きて勉強する!」と子どもが言ったとして、でも毎日はできていない。そうすると、「自分で言ったのにやらないってどういうこと?」などと叱ってしまう方が多いと思います。ですが、大人でも毎日決めたことを守ることは難しいものです。不完全でも子どもが前向きに動いていることをほめていかなければ、叱ることばかりになってしまうのです。

子どもを放置しすぎず、伴走しすぎず。バランスが重要

ただし、子どもが主体的に取り組む道筋を立ててあげることは大切です。『中受』をするご家庭の多くは、「あなたがやりたいって言ったんだからやりなさい!」と子どもに任せるご家庭と、100%伴走しすぎて自走の隙間も許さないご家庭と、2つのパターンに陥りやすいと思うのですが、その間を取ってほしいと思います

放任と伴走のバランスを取ることが大事

お子さんが小さい頃を思い出すと、トイレのトレーニングも少しずつ習慣をつけましたよね。昼間はおむつを外してみるけど、夜はつけて寝る、など。それが最初の訓練だと思うのです。それと同様に、自学自習ができるタイミングを、その子に応じてご家庭ごとに段階を経てやっていくことが重要です

なぜか勉強のことになるとゼロ100の理屈が多くなってしまう。失敗してもいいんです。そのやり方ではダメだったということだけです。

“嫌い”なことこそ、とにかく“ほめる”! 高い要求は子どもを潰す原因にも

僕の塾に通うお子さんで、極端に嫌いな教科や嫌なことがある場合は、9割が一度そのことで嫌な思いをした経験がある子です。例えば、記述や作文が嫌いなお子さんは、細かく採点されているとか、書いたものを全否定されたことがあるなど。

高学年になると通用しなくなることが多いですが、そういう子には、書いただけでもほめることが大事です。内容がめちゃくちゃでも、日本語になっていなくても、とにかく「書けてすごいね!」と花丸をあげることからスタート。そこから、「ここの表現は素敵だね」と部分的に認めてあげたり、1箇所だけ直してみたりしていきます。

要は、子どもに「自分は書くことが得意なんだ」「自分は大丈夫なんだ」と言う安心感を持ってもらうことが必要なんです。

書くことに対して少しずつ自信を持たせてあげましょう

親御さんが良かれと思って細いことを言い過ぎると、逆に子どもを潰してしまいます。会社でのパワハラは問題になりますが、意外に家庭内の子どもに対するハラスメントに対しては緩いのではないかと感じています。

真面目で消極的なお子さんほど、バツをもらうのが怖くて苦しんでいるパターンが多いので、自信を持たせてあげてください。減点方式でお子さんを見ないでくださいね。

受験勉強で学び疲れないことも大切です

『中受』は、子どもに過度な学習をしなければならない状況を作ってしまいがちです。そこで注意してほしいのが、受験勉強で子どもが学び疲れていないか、ということです。

過酷な『中受』の世界。お子さんが学ぶことに疲れていないか、気にかけて

特に最近の社会の試験では、総合的な問題を出題する学校が増えています。そういう問題は、年号を暗記したりするよりも、歴史の流れ、社会の動きなどを捉えることができていないと答えられません。また、資料を読み取り、自分なりに問題を抽出して、解決策を論じる問題も増えています。

こういう、いわゆる当日の現場力を求める問題では、お子さん自身が「自分はできるんだ」という気持ちを持てているかを、学校側が見ているような気がしています。「これは習ったことがない」、「知識が自分にはないからできない」と諦めたら終わりです。

どこの学校もそうだと思いますが、「受験勉強で潰れていない子がほしい」、そういうメッセージが込められていると僕は解釈しています。本当に受験の努力量だけを見るなら、歴史の年号をひたすら覚えているかを聞いた方が簡単ですからね。

『中受』で得たものは一生もの! 伸び続けるために大切なのは“習慣化”

子どもにたくさんの勉強をさせ、時には潰れてしまうような子までが出てくる『中受』がこんなにも盛り上がっているのは、やはり『中受』をすることで得られる大きなメリットもあるからです。

『中受』では、長期間勉強をし続けるという経験をします。小6の段階で「自分なりに努力をし続けることができた」と思える子は、やはりその後の人生にも活きてきます。「あのときあれだけできたんだから、これができないわけがない」と自信につながっていくのです。

『中受』を経て得た自信が、その子の糧になります

また、一定の時間、机に向かう習慣を得ることもできます。そういう習慣さえあれば、偏差値の高い大学でも医学部でも、子ども自身が目標にすれば目指していけると思うのです。

『中受』をする子全員が勉強を楽しんでいるなんて思ったら大間違いです。僕は日頃から子どもたちに「自分は勉強を楽しめないからダメな子なのかな?」と思わせないようにしています。大抵の子にとって『中受』は修行。1科目でも“普通”、または“好き”があれば大成功!

勉強ができる子とできない子の違いは、勉強が習慣化できているかいないかだけの違いです。それは何も1日5時間の習慣ではなく、朝起きて「なんとなく顔洗わないと気持ちが悪いな」と感じる程度のことで、「1日30分くらい何かを勉強しておかないと気持ちが悪いな」「何か勉強しなくても大丈夫かな?」と子ども自身が思えればOK。

スポーツの世界でも、1日休むと戻すのに3日かかると言います。勉強も同じことです。毎日続けられる程度のことを続ければいいだけのことです。

短時間でいいので、勉強の習慣化を

子どもたちには「学生である以上、勉強から逃げることはできないのだから、死んでもやりたくない嫌いな教科があっても、それは我慢してやるしかないんだよ」と話をしています。結局は、社会に出て好きなことを仕事にしても、楽しい仕事ばかりじゃないですよね。苦手でも嫌でもやらなきゃいけない。

僕はいつも、その子なりの学習習慣だけはつけさせてあげたい、と思って日々子どもたちと接しています。それが常に学び続けるための方法、つまりは伸び続ける秘訣だと考えています。

教育が変化し、親の価値観も変化しつつある

特に御三家をはじめとした難関校では、授業がリベラルアーツ化してしまい、基礎の部分はそれぞれが自宅、あるいは塾で補習するしかない状況になってきています。

英語の授業もスピーキングとリスニングは学校でやるけど単語は家で、数学も授業では研究学習をやるけど最低限の方程式は自分で演習! という流れになってしまっています。無理をして、1ポイントでも偏差値の高い学校に入ろうとすると、このリベラルアーツの行間を埋められずに、ついていけなくなってしまうお子さんが出てきてしまうのです。

また、親御さんの世代によっても価値観が変わっており、「無理をさせても御三家に!」「東大か医学部じゃないと」と考えるご家庭も減ってきているように感じます。

教育も保護者も多様性の時代。色々な価値観があります。ご家庭ごとの方針を持って『中受』という経験が、お子さんが伸び続けることができるきっかけになるよう、ぜひフォローしてあげてください。

お話を伺ったのは

富永雄輔 進学塾VAMOS代表

進学塾VAMOS(バモス)代表。幼少期の10年を過ごしたスペインのマドリッドでサッカーに出合う。帰国後、日本の中学校・高校を経て京都大学経済学部に入学。大学卒業後、東京・吉祥寺で「進学塾VAMOS」を設立。現在は東京都内で5教室を展開。先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年首都圏トップクラスの、志望校への高い合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として「プレジデントファミリー」「週刊ダイヤモンド」などに登場。子どもの主体性や個性に着目した論理的な授業で生徒の成績を伸ばし、圧倒的な支持を集めている。また全国各地で教育や子育て等に関する講演を多数行っている。自身のサッカー経験を活かし、現在は塾経営と合わせて、サッカー選手を中心としたスポーツ選手のマネジメントも行っている。
主な著書『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』(文響社)、『「急激に伸びる子」「伸び続ける子」には共通点があった!』(朝日新聞出版)『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』(幻冬舎新書)など。

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取材・文/鬼石有紀

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