植物図鑑できのこを見て以来、4歳から「きのこ一択」。

三神達義さんの作品は「HugKum」の編集者はもちろんのこと、長年図鑑を作ってきた「小学館の図鑑NEO」の図鑑の専門家にも大絶賛されました。達義さんの詳細な絵、わかりやすい言葉、そしてきのこキャラクターの語りや4コママンガで、小さい子にもわかりやすく解説されています。それでいて、きのこへの知識の深さは、まるで大人の研究者のようです。
――きのこに興味を持ったきっかけは?
達義さん:4歳の頃、植物図鑑をみていたときに、たまたまきのこのページがあって、そこにあったきのこの写真を見て「なんだこれは!」ってびっくりしました。今まで見たことがない色や形や大きさのきのこがいっぱいあって。
それで、いろんなきのこを見てみたいと家族に言ったら、近くのきのこがよくはえていそうな公園に連れて行ってくれたり、車で遠いところに一緒に探しに行ったりしてくれました。

達義さんのお母さん:もっと小さい頃は電車が好きで、国旗にも興味を持ちましたけれど、きのこ好きになったらきのこ一択になりました(笑)。好きなものには集中するタイプですね。とにかく自生しているきのこが見たいということなので、あちこち連れて行きました。最初はやみくもにきのこがはえていそうなところに足を運んでいましたが、何年もきのこを探していると、どういう場所にはえていそうか、わかってくるんですね。
同級生からは「きのこ博士」と呼ばれている

――きのこ好きの人たちは、同級生にもいるんですか?
達義さん:いないです、僕だけ。でも、学校では僕がきのこ好きなことはみんな知っていて、「きのこ博士」って呼ばれています。学校にきのこが生えていたら、真っ先に僕を呼んでくれます。
達義さんのお母さん:ただきのこを見るだけでなく、いろいろと調べるのが好きなので、きのこ関連の本を見つけると買うようにしています。少し難しい本も、よく読んでいます。
また、地域できのこの観察を行っている会を見つけて、会員になっています。森の中に入っていって、名前を調べたり、生態や形態の観察をしたりしているんですが、会員は長く観察を続けている年配の方々がほとんどで、そのなかに小学生はとても少ないです。家の近くの緑地の自然観察会に出かけて、そこできのこを見つけると、「今日はきのこ博士がいます。はい、三神くん説明して」と言ってくださって。達義が特徴とか毒とか名前の由来とかどんなところに生えやすいのかなどを説明すると、大人の方々がメモをしながら聞いてくださっています。そんな中で、ますます知識を増やし、きのこへの愛も深まっています。

――今回の図鑑はその「きのこ愛」の集大成ですね。きのこの分類や見分け方、はえかたなどの解説があって、そのあとにきのこを1種類ずつ、ていねいに絵で描いています。絵がとても上手ですけれど、習っているのですか?
達義さん:習ってはいないです。でも、よく描いているので、だんだんうまくなったのかもしれないです。この図鑑のなかで大変だったのはキヌガサタケの絵かな。白いレースの部分を描くのが難しかったです。
――難しい説明などは、きのこキャラクターの登場でわかりやすくなっていますし、4コママンガもおもしろいです。
達義さん:マンガは最近はちょっとはずかしくなってきました。
達義さんのお母さん:小学校2年生の頃はもっと長いきのこのマンガを描いていましたが、最近の自由研究は、生態などを中心とした研究寄りの内容になってきましたね。学校の自由研究も1年生の頃からずっときのこがテーマなのですが、1年生の頃は写真が多く、2年生では顕微鏡を買って胞子を観察することが中心、3年生は近くの街路樹が切り倒されて、その切り株にはえて腐食していく様子を観察したものを出しました。



子どもの「きのこ研究」を両親も一緒に楽しんでいる
――今回の研究ではうしろのほうにひとつひとつのきのこを1~2ページずつ詳しく説明してあって、まさに「図鑑」ですね。子どもでも大人でも勉強になります。
達義さん:本当はもっとたくさんのきのこを紹介したかったんです。50種類くらい書きたかった。夏休みが終わって学校に提出してからも、種類を足して書いていました。

――今回の作品は、コンクールのための作品というより、日頃から地道にしっかりとやっていたきのこ研究をまとめた、という感じです。このようにきのこの研究を極めるお子さんに育った秘訣は。
達義さんのお母さん:ひとつのことに興味をもってほしいな、と思っていたら、たまたまきのこにハマったという感じですね。親のほうからあれこれ提案するというわけではなくて、地元のきのこの会の方や、そこから出会った方々などとの交流の中で、どんどん経験や知識をつけていった、という感じです。
達義が楽しそうに取り組んでいるきのこ研究を、私たち両親も一緒になって楽しんでいます。旅行もきのこメインで、きのこの産地である長野県に行ったり、和歌山県に行ったり。和歌山県は南方熊楠という、きのこや藻類などの研究でも知られる生物学者の記念館に行くのが目的でした。また、シイノトモシビタケという光るきのこを守っている団体があって、その観察会に参加したり。

受賞の連絡を受けたときも、ちょうど家族で滋賀県にあるきのこを祭った菌神社(くさびらじんじゃ)に初詣に行っている最中でした。毎年初詣に行って、きのこの神様に「今年も珍しいきのこに出会えますように」とお願いしているのです。
達義さん:きのこの神様に会いに行っているときに連絡があったので、よけいにうれしかったです。
――達義さんはきのこの研究を通して将来はどんなことをしたいですか?
達義さん:きのこは胞子を飛ばして自分の種を増やしていくんです。僕も自分の知っていることをみんなに伝えていきたいです。それを僕は「胞子活動」と呼んでいます(笑)。みんながきのこについて興味を持ってくれるといいな、と思います。

――きのこ料理も好きですか?
達義さん:いえ、きのこは観察したいから、食べるのは、あんまり。森で珍しいきのこを見つけても、生態系を崩さないように、写真を撮るだけにすることが多いです。とにかくいろんなきのこを深く知って、研究していきたいです。
――大学や大学院などでさらに専門的に研究して、本当の「きのこ博士」になることは考えますか?
達義さん:はい。毎年国立科学博物館筑波実験植物園で開催されるきのこ展に、きのこを研究をしている先生がいるんですけれど、その先生と話していたら、「うちの研究室においで」って言ってくれました。すごくうれしいし、将来の目標です。
――コンクールのためだけでなく、きのこを深く知り、その知識を胞子のように飛ばして社会に役立てたいと思っている達義さん。取材中はちょっと緊張していましたが、いつもきのこの話になると、とても雄弁になるそうです。そして、将来はきのこ研究家に? 本当に楽しみです。
お母さんのお話では、「きのこが好きになるように親が誘導する」というよりも、「親が一緒にきのこを楽しむ」姿勢を大事にしている様子。これが一番の「好きを継続していく」応援ですよね。親御さんのさりげなく、そして力強い応援のありかたも勉強になるインタビューでした。
