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音声AIをフル活用~「視覚支援」だけではなくデジタルでの「聴覚支援」も取り入れて
―お子さんの現在の学年、在籍クラス(支援級/普通級)と学校生活の様子を教えてください。
長男は小学5年生、次男は小学1年生になりました。長男はASDとADHDがあり、支援級に在籍しています。次男は普通級です。
―ご家庭で、紙の視覚支援だけでなく、デジタルツールも取り入れようと思ったきっかけは何でしたか?
紙の視覚支援も良いのですが、紙だと目に入るところにいないと意味がないので、別室にいると使えなくなってしまいます。ですから、親が何度も声かけしなくても本人が自発的に動ける環境を整えたいと思って、音声AI(クラウドベースのAI音声認識サービス)を取り入れました。
最初は私たち親が音楽を聴くために音声AIを使い始めたのですが、使ってみるといろいろな機能があることを知って、活用してみました。息子への一日のやるべきことの声かけも音声AIがやってくれますし、音声指示でテレビもつけられるので、リモコンをなくしても困りません。
リビングにはカメラ付きの音声AIを置いています

リビングにカメラ付きの音声AIを置いておくと、子どもだけで留守番していても外から家の様子がわかります。、通話機能もあるので、外出先から子どもに連絡することも、逆に子どもから連絡することもできるんですよ。これからの時代はデジタルによるスケジュール管理がどんどん進んでいくと思うので、子どものころからデジタル環境を整えて、早くから使い方を覚えていってほしいと思いました。我が家では現在、3台の音声AIを使って、スマホから指示を出して使っていますね。
視覚からの支援と聴覚からの支援。両方の活用でサポートが安定
―紙の視覚支援とデジタルの使い分けについて、どのように考えていますか?
紙はやっぱり気づいたときにパッと目に入ったら思い出せるじゃないですか。でも、その場にいないと支援にならないことが難点ですね。うちの子は自閉症なので、目に入る刺激の方が強いんです。だから視覚支援はもちろん必要です。
ただ、ADHDもあるので、見えなくなったら忘れるんですよ。なので、耳から入るデジタルの音声での支援も必要です。両方の困りごとを補うためにも、視覚からの支援と聴覚からの支援、両方あったほうが安定するのかなって考えています。
朝の支度・ゲーム・学校の準備などのリマインドに音声AIを活用しています

―音声AIはどのような場面で使っていますか?具体例を聞かせてください。
朝の支度、帰宅後、就寝前、ゲームをやっているとき、家事をしているとき、学校の準備をするときのリマインドに使っています。あと、ゲームをやっているときは、タイマーを30分かけています。そして、うちは洗濯物たたみを息子にやってもらっているのですが、こういうときはストップウォッチ機能を使っているんです。やりたくないことだと集中力が切れてしまうので、「何分で終わらせられるか」という挑戦形式にできるのでいいですよ。「何分以内に終わらせられたらゲームの時間を+5分にするよ」とか、「このお菓子を食べていいよ」とかのポイント制にしています。
ついつい見続けてしまうYouTubeは親と一緒のときのみの視聴にしています
―ゲームの話が出ましたが、他にもテレビやYouTubeなど、デジタルの誘惑も多いですよね。そのあたりも時間制限を決めたりしていますか?
うちはYouTubeは見せないようにしていて、他のテレビ番組や録画したもの、定額制動画配信サービスだけにしています。YouTubeは次から次に新たな動画が出てきてずっと見続けてしまうので、まだ1話ごとに区切られているもののほうがいいかなと思っています。折り紙の折り方動画や、調べものなどでYouTubeを使うこともありますが、そういうときは親と一緒に見るようにしていますね。

親だと「ウザイ!」となるけど、AI音声は子どもにフラットに受け入れられる
あと、テレビは「〇時間だけ」という時間制限ではなく、「8時になったら全部消す」というルールにしています。こういうルールにすることで、やらなきゃならないことをなるべく早く終わらせようという気持ちが働きます。8時まではテレビを見られるので、終わらせればテレビの時間を確保できるって思いますからね。
― 親の声かけを音声AIに置き換えたことで、お子さんの行動や反応はどう変わりましたか?
やっぱり親が言うと、「うるさい!」って感じる年齢じゃないですか。でも機械が決まった時間に言うことなのでフラットに受け取りやすく、スムーズに行動に移せる場面が増えました。親も怒らずに済むし、すっごく楽なんですよね。
決まった曲を嫌な場面で使うのはマイナス効果でした…

―音声AIの、うまくいった使い方と、うまくいかなかった使い方があれば教えてください。
運動会のときによく流れる「天国と地獄」っていう曲があるじゃないですか。以前、片付けのときに「天国と地獄」が流れるようにしていたんです。そうしたら、息子はあの曲が大嫌いになってしまって、運動会で聞くたびにうんざりすると言われてしまいました。決まった曲を嫌な場面で使うのは、あまりよくないのかもしれません。
あとは、英語をしゃべらせたくて、朝に英語のニュースを流していたこともありました。でもそれも嫌われてしまいましたね。「うるさい」って言われました。
それと、リマインドについても反省点があります。同じ内容を何回かリマインドしていたら、リマインドに慣れてスルーされるようになってしまったので、同じ内容を複数回くりかえしはしないほうがおすすめです。
我が家では少し急げば間に合うくらいの、5分前に鳴るようにしています。朝起きるときはめざましではなく、自動でカーテンが開く機械を使って、太陽の光で起きるようにしています。
音声AIに慣れるまでは、遊びながらおもちゃ感覚で
―音声AIの利用を習慣化し、生活に定着させるまでに工夫したことはありますか?
とにかく音声AIが嫌いになったらもう言うこと聞かないと思ったので、まずはおもちゃ感覚で使ってもらうようにしました。遊べるアプリもいろいろ入っているので、遊びながらおもちゃだと思って苦手意識をなくし、それから、「実はこういうリマインド機能とかがあるんだよ」と教えていきました。そして時間内にやることをやったらとにかく褒めて、お菓子とかアイスとか、ゲームの時間を増やしたりとごほうびも大事にして、定着させていきました。
学習もデジタルツールを活用。タブレットはあくまで親のを子どもに貸すという前提で
―家庭学習でデジタルツール(タブレットやアプリなど)を使っている場合、効果があったものがあったら教えてください。

家庭学習でよく使っているのは、「NHK ONE for School」というアプリです。NHKが制作した教育向けのアプリで、国語、算数、理科、社会とソーシャルスキルなど、何でも入っているのでよく視聴しています。
長男だけではなく次男も今小一なので、アプリに入っている交通安全の動画などを見せています。そして、アプリはタブレットに入れて見ているのですが、タブレットは「子どもたちのもの」とするのではなく、あくまで子どもたちが「親から借りているもの」という認識でいてもらっています。子どもが「自分のもの」って思っちゃうと、「僕のなのになんで自由にできないの?」となってしまうので、使うときも、必ず私のところに「借りていい?」って聞きに来るようにしています。
あとは、家庭学習だとタブレット学習の「チャレンジタッチ」を使っています。教科の学習以外にも、長男はプログラミングやネットリテラシーも学んでいて、次男は小学校生活に向けた、廊下の歩き方やトイレの使い方なども学べて、よかったです。
―スケジュール管理や見通しのサポートなどには、デジタルをどう活用していますか?
スケジュール管理については、音声AIで、朝は持ち物についてのリマインド、家を出る5分前にリマインドをしてもらっています。夜はお風呂や歯磨きの時間をリマインドしてもらっていますね。見通しのサポートは、旅行に行くときなど、事前に行く場所の動画を見せてイメージしやすいようにしています。
子育て全般でAIをうまく活用。そのためには、リテラシーも必要です
―最近ではChatGPTやGeminiなどのAIも、子育てに活用していたりしますか?
はい、私も使っていますが、子どもたちにも使わせています。例えば作りたい工作があるけど、どう作ったらいいかわからないときなど、子どもがAIに聞いて教えてもらったりしていますね。AIも子どもとの普段のやりとりを学習しているので、普段のやりとりから、子どもが好きそうなちょうどいい提案をしてくれていて、正直「親より賢いかも」って思いますね。
親だと、「もう好きなものを作ればいいじゃない」って言いがちなので、 AIの方がケアがうまいなって思う時もあります。子どもとAIのやりとりを聞きながら、「こんなふうに子どもと接したらいいんだな」などと親も学びになります。AIも今後、どんどん浸透していくと思うので、小さいうちからAIに親しんでいくのも大事かもしれないですね。
ただ、AIは全部自分に合わせてくれるので、その心地よさゆえにAI漬けにはならないように意識付けはしています。「あくまでAIだから、人間とは違うからね、人間とのやりとりも大事にしてね」という話はしています。
性的なコンテンツの広告をブロックする検索アプリを入れています

―ご長男は小学5年生になりましたが、低学年の頃と比べて、高学年になってから困りごとや課題はどのように変化しましたか?
低学年の頃は、先生にも親にも何でもお話ししていたんですよ。でも年齢が上がってきて、「親とか先生には話したくないな」っていう雰囲気が少しずつ出てきたなと思います。もう子どもたちだけの世界ができているので、そこに大人がズケズケ入っていくのもすごく難しいなと思いますし、遠くから見守るぐらいにしなきゃいけないなってすごく感じますね。
だから、無理に話を聞き出そうとするのではなく、親の体験談を話しています。私や旦那の、例えば「小学生とか中学生のときにこういういじめがあった」とか、「自分はこういうことをされて嫌だったよ」みたいな体験談を話して、「もしあなたにもそういうことがあったら、大人に話していいからね」と伝えています。「恥ずかしいことじゃないし、誰にでもあることだから、親でも先生でも誰でもいいから話してね」と伝えていますね。
長男としては、弟には聞かれたくないという兄としてのプライドもあるみたいなので、兄弟一人一人と過ごす時間を作り、何かおいしいものを食べながら学校でのことなど、聞いたりしています。
―お子さんの成長や変化に合わせて、デジタル機器との付き合い方も変わっていきましたか?

音声AIについては、低学年のうちは親がセッティングして、親の言うことを聞いてやっていたのが、自分で考えてスケジューリングしてセッティングする年齢になってきたなと思います。あとは、最近キッズ携帯を持たせ始めました。機能が限られているものですが、これもタブレットと同じように、「親のものを貸している」という体で使っています。
―デジタル機器の扱いでうまくいかなかった失敗談があれば教えてください。
宿題でパソコンを使った自主学習があるのですが、調べものをするときに、性的なコンテンツの広告が出ることがあるんです。子どもの調べ物の内容だったら出てこないだろうと思っていたら、植物とか動物とかを調べていても出てきてしまったのでびっくりしました。
そこで、性的コンテンツが出てこない検索アプリの「Brave」を使用するようにしました。他の検索エンジンはすべて消して、「調べものをするときは『Brave』を使って」と言っています。あとは、「デジタル機器を使用するときは親の目があるリビングで」とルールも決めています。
デジタル機器全般、子どもが使うときは必ず親の目があるところで

―これから成長に伴い、お子さんはスマホなど、どんどんデジタル機器を使う機会が増えていくと思いますが、どのように親がルール作りをしていこうと思っていますか。
スマホについては、今はキッズ携帯ですが、カメラ機能については、「人も人の家も勝手に撮ってはいけないんだよ」という話はしています。「風景とかを撮るときは、周りに気をつけて人が入らないように」とか、友だちを撮るときも、「勝手に撮るのはもちろんダメだし、映りが嫌で人に見せたくないこともあるから勝手に人に見せるのもやめようね」ということも説明しないといけないと思っています。そして、スマホやゲームも含めたデジタル機器は、利用時間と場所を明確に決めて、必ず親の目があるところで使うようにします。
デジタル機器とは頼りつつも任せきりにしない距離感を
―これから子どもの教育や生活環境を整えるためにデジタルを取り入れたい保護者に向けて、アドバイスがあればお願いします。
デジタルって楽なんですが、親が見ていないと悪用したり、子どもも親もサボりがちになるので、頼りつつも任せきりにせず、しっかり親の目を光らせておくことが大事だと思いますね。かと言って、親が毎日がんばって同じ声かけをするのもすごくストレスだと思うので、子どもと対話しながら、良い具合に生活の中にデジタルを取り入れていってほしいなと思います。
取材・構成/べっこうあめアマミ
ツキヨタケさんの支援級に通うための準備の記事はこちら
教えてくれたのは
ASDとADHDの特性を持ち、支援級に通う小学校5年生の長男と小学校1年生の次男の2児の母。自閉症協会会員。SNSやnoteで、我が子への発達支援の工夫やおすすめのサポート商品を紹介している。
この記事を書いたのは
子どもの発達、学校生活、大人の発達障害などをテーマに有識者や当事者に取材し、子育てに役立つ記事を執筆します。個性豊かな男の子と女の子の兄妹を育てながら、現役の子育て世代に寄り添ったわかりやすい文章でお届けします。