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「はしか」は空気感染。免疫を持っていないと感染した場合は、ほぼ100%発症します
――はしかの症状や感染経路について教えてください。
庄司先生 はしかは、麻しんウイルスに感染することによって発症します。
主な感染経路は空気感染で感染力は非常に強く、はしかの免疫のない人の集団では、はしかの患者さん1人で12~18人に感染させるとも言われています。潜伏期間は7~21日の範囲で、はしかの免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症します。

はしかの初期症状は、咳、鼻水、発熱などの風邪のような症状や目の充血、目やに、涙目です。数日すると38度以上の高熱が出て、下がりかけた熱が、ぶり返すころに赤い発疹がみられます。発疹は顔から出始めて、全身に広がっていきます。
はしかは特効薬がなく、基本的には対症療法です。
――初期症状では、はしかとはわからないものでしょうか。
庄司先生 初期症状は風邪と似ていて、発疹が出る前の初期段階で診断することはかなり難しいです。口の中の頬粘膜にできる白い斑点(コプリック斑)は特徴の一つですが、はしかの患者さん全員に認める所見というわけではなく、コプリック斑がないからといってはしかの可能性は否定できません。
はしかの流行の背景は、海外から麻しんウイルスを持ち込むこと
―-日本では、はしかの流行は以前もあったのでしょうか。
庄司先生 これまでも流行はありましたが、2015年にWHOにより日本は、はしかの排除状態にあると認定されています。これは国内での土着的な麻しんウイルスの持続的伝播が認められなくなったということですが、その後も海外からの麻しんウイルスの持ち込みを契機に、散発的な流行が起こっている状況です。最近だと2019年に大きめの流行があり、744名の感染が報告されました。
コロナ禍では、はしかの流行はみられなかったのですが、2025年は265人の感染が確認され、2026年はそれをすでに上回る感染者数となっています。
はしかの流行は、海外からウイルスを持ち込むことが背景にあります。2026年4月に日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会が発表した「2026年における麻疹患者数増加に関する注意喚起」によると、推定感染地域が国外である症例のうち、インドネシアからの帰国・入国者による報告が11例と最多を占めており、ニュージーランドからの流入も7例あります。そのほかフィリピンや大韓民国、インド、ベトナム、シンガポールなど近隣諸国からの流入も確認されています。
東京都新宿区の小学校では、児童・職員計47名が感染

――2026年4月、東京都新宿区の小学校ではしかの集団感染が発生し、児童41人と教職員6人の計47人の感染が確認されました(2026年4月24日時点)。報道では、ワクチン接種は7人が1回もしくは未接種、28人は2回接種していましたが感染。12人は調査中ということです。
庄司先生 はしかは主に空気感染でうつるので、はしかの感染者と同じ場所にいると感染する可能性があります。またMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を2回接種していない人がいたことも感染拡大につながったのだと思います。
――この集団感染では、ワクチンを2回接種していてもはしかに感染した人がいました。
庄司先生 MRワクチンを2回接種すると高い予防効果は得られますが、100%防ぐことはできません。しかし2回接種していれば、高い予防効果は得られますし、重症化も防げます。
重症化すると脳炎を発症したり、亡くなったりすることも。妊婦さんは、流産・死産・早産の危険性が
――はしかの重症化について教えてください。
庄司先生 はしかで亡くなるのは、1,000人に1~3人と言われています。また重症の肺炎を引き起こし呼吸困難になったり、脳炎を発症することもあります。けいれんや麻痺などの後遺症を残す人もいます。
――とくに、はしかに注意をしたほうがよい人はいますか。
庄司先生 大人も子どもも、全員注意してほしいのですが、とくに次の人は注意が必要です。
●5歳未満、20歳以上の方(合併症が起こりやすいです)
●免疫不全状態にある方(合併症が起こりやすいです)
●妊婦さん(合併症が起こりやすく、また流産・死産・早産などを引き起こすことがあります)
1歳の誕生日を迎えたら、早めにMRワクチンを

――定期接種のMRワクチンの1回目は1歳ですが、0歳児ははしかに感染しないのでしょうか。
庄司先生 0歳児でもはしかに感染する可能性はあります。MRワクチンの1回目の接種が1歳となっているのは、0歳児ははしかに感染しないからではなく、はしかの免疫を持つ母親から移行した抗体が、生後しばらくの間はMRワクチンの働きを阻害してしまい十分な免疫がつきにくいと考えられているためです。母親から移行した抗体が無くなり、ワクチン接種の効果が確実となる1歳で1回目のMRワクチンの定期接種をすることになっています。1歳の誕生日を迎えたら、すぐにMRワクチンを接種してください。
ママ・パパ世代は、麻しんワクチンを2回接種していない人も

――はしかのワクチン(麻しんワクチン)を接種していない年代もあります。
庄司先生 昭和47年(1972年)9月30日以前生まれの人は、1回も麻しんワクチンを接種していない可能性があります。また昭和47年(1972年)10月1日~平成2年(1990年)4月1日生まれの人は、定期接種としては1回しか接種していない年代です。平成2年(1990年)4月2日~平成12年(2000年)4月1日生まれの人は、接種率が低い年代です。
母子手帳を見て、2回麻しんワクチンを接種しているか確認しましょう。
麻しんワクチンを2回接種しているかわからないときは、内科で相談
――母子手帳が手元になかったり、麻しんワクチンを受けているかわからないときはどうしたらよいのでしょうか。
庄司先生 内科で相談してください。抗体検査で、はしかの抗体を十分に持っているか確認することもできます。
妊婦さんは、麻しんワクチンの接種はできません。そのため妊婦健診などで、十分なはしかの抗体を持っていないと言われた方は、家族のワクチン接種状況を確認し、もしこれまでに2回の接種を受けていなければ麻しんワクチンを合計で2回になるように接種して、家庭内感染を防ぐようにしましょう。任意で受ける麻しんワクチンの値段は施設によって異なりますが、麻しん単独ワクチンは1回5,000円~6,000円ぐらい。MRワクチンは10,000円前後ぐらいです。
庄司健介先生
この記事を書いたのは
子育てや子どもの病気、事故を中心に取材・執筆を行う。情報発信によって、病気の予防・早期発見、事故予防につながる記事作りを心がけています。2 人の子どもがいます。