11歳で小児1型糖尿病と診断された、糖尿病専門医・市原由美江先生。最初に感じた違和感は、とにかく喉が渇くことだった

糖尿病内科「eatLIFEクリニック」(神奈川県横浜市)の院長を務める、内科・糖尿病専門医・市原由美江先生。市原先生は、11歳(小学6年生)のときに小児1型糖尿病と診断されました。市原先生が、最初に感じた違和感や1型糖尿病、2型糖尿病の違い、注意点についてうかがいました。全2回のインタビューの前編です。

1型糖尿病は若年に多く、年間約10万人に2人程度が発症

――市原先生が小児1型糖尿病と診断されたのは11歳とのことですが、そもそも1型糖尿病とはどのような病気でしょうか。

市原先生 糖尿病は、体内のインスリン(ホルモンの1種)が十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)の数値が高くなる病気です。

糖尿病には1型と2型があります。

1型糖尿病の主な原因は自己免疫の異常です。膵臓でインスリンを作るβ細胞が自己免疫反応によって壊れることで、インスリンが分泌されなくなります。その結果、血糖値が高い状態になります。高度にインスリンが不足すると生命に関わるため、継続的にインスリンを補う必要があります。

1型糖尿病は若年での発症が多く、年間約10万人に2人程度が発症するといわれています。小児期に発症する1型糖尿病を、小児1型糖尿病といいます。

水分補給してものどが渇き、気がつけば5kg体重が減っていた

――市原先生が最初に感じた違和感を教えてください。

市原先生 糖尿病には、のどが渇きやすいという症状がありますが、私も小学校の健康診断の2~3か月ぐらい前からのどが渇くようになり、すごく水分を摂っていました。水分補給をしてものどが渇くので、氷も食べていました。また糖尿病は、体重が減る特徴もあるのですが、私も気づいたら5kg減っていました。

――小学生のとき、市原先生はどのような体形でしたか?

市原先生 やせ型でした。1型糖尿病は、やせ型の人が多いです。

糖尿病専門医の市原由美江先生

健康な子どもだったので、母も父も病気とは思わなかった

――頻繁に水分補給をする姿を見て、家族は違和感を覚えなかったのでしょうか。 

市原先生 1型糖尿病は遺伝でないことが多く、家族に糖尿病の人はいなかったので、頻繁に水分補給をする娘の姿を見ても、すぐにピンとこなかったようです。また私は、小学校から帰ってくると友だちと遊びにいく元気な子どもだったので、母も父もまさか病気とは思わなかったのでしょう。

家族で「なんでそんなに喉が渇くんだろうね?」と話した記憶があります。

――11歳のときに小児1型糖尿病とわかったのは、なぜでしょうか?

市原先生 小学校の尿検査がきっかけです。受診するように言われて、母に連れられて総合病院に行き、1型糖尿病とわかりすぐに入院しました。

小児1型糖尿病を発症した、11歳頃。 写真:市原先生ご提供

小児2型糖尿病は、肥満気味の子は注意。中学生になると発症率が上がる

――小児2型糖尿病について教えてください。1型と2型は異なる糖尿病なのでしょうか?

市原先生 小児2型糖尿病は、子どもにみられる2型糖尿病です。2型糖尿病は、遺伝や生活習慣が主な原因です。糖尿病の家族歴があったり、肥満気味の子どもはとくに注意が必要です。

――令和8年2月、文部科学省が発表した「令和7年度学校保健統計(学校保健統計調査の結果)」によると、肥満傾向がみられる子どもは、とくに9歳~15歳の男の子に多いようです。

市原先生 小児2型糖尿病は、中学生になると発症率が上がります。外食が多い、カロリーのとり過ぎなど食習慣が背景にあると思います。

そのため先ほども話しましたが、

・喉が渇いて、頻繁に水分補給をする
トイレが近い(夜中でもトイレに行く)
体重が減ってきた

という様子がみられたら、すぐに小児科で相談してください。

小児2型糖尿病の予防は、おやつの見直しから!

――小児2型糖尿病を防ぐには、どうしたらよいのでしょうか?

市原先生 育ち盛りの子どもだと、食事のコントロールは難しいと思うのですが、まずはおやつを見直すことから始めましょう。例えば、ジュースとおやつを一緒に食べているならば、ジュース類をやめて水やお茶に替えてください。

おやつも、スナック菓子やアイスクリーム、ケーキなど、カロリーや脂質が多いものは控えめに。子どもの食事のコントロールは、家族の協力が不可欠です。スモールステップで、まずはジュース類をやめるところから始めてみてください。

医師から「将来、目が見えなくなります」と言われたことも

――糖尿病は、合併症が怖いと思うのですが…。

市原先生 私も子どものとき、最初に診察した医師が「将来、目が見えなくなりますよ」と当然のように言い放ったんです。当時は子ども心に本当に悲しくて、ショックで…。もちろん母もすごく悲しんでいて、あのときのことは今でも忘れることができません。

――ショッキングな言葉ですね…。ほかに、子ども心に傷ついたことはありますか。

市原先生 高校受験の面接で病気のことを伝えたら、面接官に「糖尿病?」と鼻で笑われたこともありました。糖尿病への誤った思い込みから、理解を示さず、寄り添おうとしない大人もいます。私は、そういう大人に会うたびに悔しい思いをし、なかなか病気を受け入れることができませんでした。

糖尿病になると、子どもは生活が一変します。保護者の方には、ぜひ予防と早期発見の大切さを知ってほしいと思います。

――インタビューの後半は、11歳で小児1型糖尿病と診断されて生活が一変したこと、糖尿病専門医を目指した理由についてうかがいます。

小児1型糖尿病の患者から医師の道へ。「インスリンを打てば普通に生活できる」と教えてくれた医師と出会い、専門医を目指すように
2週間の入院中、インスリン注射の打ち方などを教わった ――11歳で小児1型糖尿病とわかり、すぐに入院されたとのことですが、どのぐらい...

お話を聞いたのは

市原由美江 医学博士

医学博士。日本糖尿病学会専門医。日本糖尿病協会療養指導医。山口大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学糖尿病センター、横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニックを経て、2024年、神奈川県横浜市にeatLIFEクリニック開業。院長を務める。自身の経験から、1型糖尿病の正しい知識の普及・啓発のためにテレビやラジオなどに出演。著書は「血糖値を自力で下げるやり方大全」(フォレスト出版)。

この記事を書いたのは

麻生珠恵 ライター

子育てや子どもの病気、事故を中心に取材・執筆を行う。情報発信によって、病気の予防・早期発見、事故予防につながる記事作りを心がけています。2 人の子どもがいます。

撮影/五十嵐美弥

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