謎が謎を呼ぶ展開で熱狂を生んでいる日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』(TBS系)もいよいよ終盤へ。綾瀬はるかさん演じる警視庁捜査一課の刑事・望月彩子と、ベンチャー企業の社長で連続殺人の容疑者・日高陽斗(高橋一生)の魂が入れ替わり、物語は主に彩子の視点から語られてきました。今回は謎解きのために逆の立場になり、日高(体は彩子)のストーリーとして推理してみましょう。
目次
これまでに明らかになった日高のプロフィール
●日高陽斗(ひだか・はると)
●生年月日:1982年9月3日(38歳) ※パスポートではなぜか9月12日
●住所:東京都江東区有明のタワーマンション20階
●肩書き:バイオベンチャー企業「コ・アース」代表取締役社長
●学歴:福岡市東畑中小学校卒業、大学は文系の学部に入ったが途中で理系に転換し2016年までボストンのMIT(工科大学)に留学。2017年に帰国した。
●家族:父親は大手食品企業サンライズフーズの社長(日高の小学校卒業時にはラーメン屋を経営)、妹はサンライズフーズ東京支社・経営企画室勤務で8歳下
●その他:趣味は散歩で「MO WALK NO LIFE」という著書もある。ナッツアレルギー。
考察1)日高は殺人犯ではない!? 彩子と入れ替わった時点で別人だった!?
第6話で明らかになったのは、警備会社社長・久米正彦の殺人が未遂に終わり、その豪邸に侵入していた日高(体は彩子)は殺人を犯さなかったということ。誰かからの殺人指示であると見られる落書きの数字「9」を見て、日高は「来なかった。何かあった…」とつぶやきます。つまり日高は現場で殺人を実行しに来る誰かを待っていたということに。第5話では新月の夜を前に「今度こそ会えますかね…」とつぶやいていました。
ここで、第3話放送前に考察したとおり、日高は殺人者本人ではなく、殺人者を追っている、もしくは見張っている立場だということがほぼ明らかになりました。「今度こそ会えますかね…」と言っていたので、日高も殺人者が誰だか知らないのか、または知っている人だがしばらく会っていない状態ということに?
それではひとつ前の殺人が起こったとき、日高が逆さ吊りにした被害者の頭をゴルフパッドでめった打ちにしていたのはなんだったのかということになりますが、おそらく既に殺された状態のところから死体を損壊していたのでしょう。それよりも謎であるのは、第6話で日高がターゲットに薬のようなものをかがせて気絶させたこと。殺人にはならなかったものの、犯行をサポートしているとは考えられます。まだシロではなくグレーといったところ。
前回の記事でも触れましたが、日高が魂の入れ替わりを経験するのは今回が初めてではなく、彩子と入れ替わった時点で既に日高の中身は日高でなかった可能性があります。もともとの日高は犯人の体に“INして”殺人を実行。そして、日高の体にINした“犯人の体だった人”がそれを止めようとしているのではないでしょうか?
考察2)突然出てきた東朔也(あずま・さくや)とはいったい何者なのか?
そこで突然出てきたキーパーソンが東朔也。「(犯人が)来なかった。何かあった…」と焦った日高(体は彩子)は、警視庁に出勤するなり死亡届のデータベースでその名前を検索します。数日前にはターゲット宅の近くで薬を拾い、「時間がありませんね」とつぶやいていたので、犯人はがんなどの重い病気にかかっており、死亡したので殺人現場に来なかったということでしょうか。また、さらに前には日高が運転免許証のデータベースを検索している場面もあり、そのときは東の現住所などを突き止めようとしていたのかもしれません。
入れ替わりの伝説が残る奄美大島でも、数年前にそこを訪れた日高が東朔也と名乗っていたと判明。東は日高と入れ替わり、そのまま彩子と入れ替わってしまい、現在、彩子の中にいる東は、殺人を続ける日高の行方が分からないという状況なのでしょうか。
ネットの考察でも多くの人が指摘しているとおり、東朔也の正体として一番怪しいのは、日雇い労働者の湯浅和男(迫田孝也)。湯浅は、彩子の同居人・陸(柄本佑)の仕事仲間で“師匠”と呼ばれる男。これまでに「余命3ヶ月」「ろくでもない親父は死んだ」などの気になる言葉も口にしていますし、アパートには「三枝」という名前で入居しているので、日高が居どころを突き止められなくても仕方がありません。清掃の仕事をしている湯浅は、日高が保管していた手書き漫画「暗闇の清掃人Φ」の主人公とも合致します。また、第6話でターゲット宅の前まで来たものの彩子(体は日高)と八巻刑事(溝端淳平)が張っているのを見て引き返した男の後ろ姿も、湯浅に似ています。
「暗闇の清掃人Φ」には殺人を指示する“ミスターX”と実行する清掃人Φの2人が描かれており、湯浅はそのどちらかということなのでしょうか。ただ、これまでの湯浅の言動を見ると、貧しいながらも仲間に慕われ尊敬される人物で、猟奇殺人を犯す人とは思えません。
考察3)数字を含む殺人リストは「ABC殺人事件」のようなカムフラージュ?
そして、ついに彩子(体は日高)は日高が保管していた殺人リストを手に入れました。これまで殺された3人のうち2人、田所仁志(パチンコチェーン経営者)、四方忠良(ゴルフ場経営者)の名前があり、他に8人。落書きで「9」の予告があったので、彩子も日高も「キュウ」と読める久米正彦が次のターゲットだと思ったわけです。
しかし、このリストには矛盾があります。まず、「暗闇の掃人Φ」に書かれているとおり「法では裁けない悪人たちを始末する」ことが犯人の目的であるなら、なぜその候補に上がった全員がそろいもそろって数字を含む名前なのか? そして「Φ」の文字が遺体に残された最初の殺人、法務省官僚の一ノ瀬正造の名はリストに入っていないのです。
ここで、アガザ・クリスティの名作推理小説「ABC殺人事件」が思い浮かびます。この物語では同じように殺人予告が出て、A町に住むイニシャルA.A、B町に住むイニシャルB.Bと次々に人が殺されていくわけですが、それは犯人が本命のターゲットとその人物に恨みを抱く自分を特定させないためのトリックでした。同じように、彩子たちが追う真犯人はカムフラージュのためにリストを作り、本当に殺したい相手と自分が誰なのか分からないようにしているのかもしれません。そのために3年前の一ノ瀬殺人事件を利用してリストを作った可能性も…。そう仮定すると、犯人の意図に気づいた日高が「4」の落書きを見て「まだ終わっていなかったんですか」と驚いたり、「1、2、4と来て、次は誰でしょう」と推理していたことも、納得できます。
ここまでの考察と日高の経歴を照らし合わせてみると、最初の入れ替わりが起こったのは、日高が小学校時代にラブレターらしきものをもらったときではなく、大学在学中に理系に転科したときか、アメリカで殺人容疑をかけられてから帰国し、会社を立ち上げた後、奄美大島に旅行したときなのではないでしょうか。第7話(2/28放送)の予告では、日高の秘書が日高は誰かと一緒に奄美大島に行ったと証言しています。
一方、「Φ」をファイではなく「クウシュウゴウ」と読むことも明らかに。クウシュウゴウというハンドルネームを使っていた十和田元(田口浩正)は3年前、一ノ瀬の個人情報を入手した後に死亡しており、その遺品だった「暗闇の掃人Φ」は東が持ち帰っていました。十和田の死亡鑑定書に「双極性障害」という記述があったのも気になるところ。
果たして、日高は他人の体に入って罪を重ねるサイコな殺人者なのか。それとも、妹や社員が証言するように心優しい人物でそれゆえに真犯人を見逃すことができないのか。どちらにせよ、日高はかなり追い詰められており、第7話ではやりきれないように思いきり叫んでいる場面も。いよいよ突入する後半戦に期待が高まります。
ストーリーの進展が気になる第7話は2月28日(日)
日曜劇場『天国と地獄~サイコな2人~』 TBS系列 日曜夜9時から放送
(C)TBS
文/小田慶子