“国宝級イケメン”の美貌に、幅広いジャンルをこなせる演技力を兼ね備え、いまや国民的人気俳優となった中川大志。この春、中川さんは、2本の主演映画によって、コロナ禍で気が滅入りがちな人々に勇気と希望を与えてくれるヒーローとなります。1本目は4⽉9⽇(金)より公開の『砕け散るところを見せてあげる』、もう1本は4月29日(木・祝)より映画館とauスマートパスプレミアムでの2ウエイ公開となる『FUNNY BUNNY』です。
映画はテレビドラマのように、撮影してすぐに封切られる作品もあれば、編集や映像処理の作業により何年後かにようやく完成したり、いろいろな理由により、かなりあとに公開される作品もあります。言うまでもなく、特にコロナ禍では、大幅な公開日の変更を余儀なくされました。
この2作については、『砕け散るところを見せてあげる』が2年半以上前に撮影した作品で、『FUNNY BUNNY』はそれと対象的に、なんと2020年の11月に企画が立ち上がり、1月にはクランクインしていたというハイスピードで制作された作品ですが、結果的には「今、まさに観てほしい映画」となった気がします。なぜなら、2作が扱っているテーマは、愛する人を守る勇気や命の尊さだから。
誰もがわかりきっているこのテーマを、非常に斬新かつ力強いアプローチで見せてくれるこの2作。両作とも、最初は物語の全貌が全くつかめず、少しずつヒントを解き明かしていくという絶妙なストーリーテリングの作品ですが、やがて大きなうねりを迎えた時、琴線と涙腺がダブルで刺激されます。
コロナ禍で子どもや家族を日々守るため、普段以上にいろいろなことを考えて日々を過ごしているであろうママたち。そんななかで、命の大切さを描く2本を、ぜひ観ていただきたいと思いました。
愛する者を守り抜くヒーローの定義に涙『砕け散るところを⾒せてあげる』
中川⼤志と⽯井杏奈がW主演を務めた『砕け散るところを⾒せてあげる』の原作は、⽵宮ゆゆこの同名⼩説で、『うさぎドロップ』のSABU監督がメガホンをとりました。ストレートにいえば純愛物語で、2人が織りなすティーンエージャーならではの純度の高い愛を見ていると、心が洗われます。ところが、そこに至るまでの展開が、一筋縄ではいきません。
中川さんが演じるのは、平凡な⽇々を送っていたごく普通の高校生・濱⽥清澄役。彼がある日、学年⼀の嫌われ者とされた孤独な少⼥・蔵本玻璃(石井杏奈)をいじめから救ったことで、互いに惹かれあっていきます。
本作ではいじめ問題を真っ向から扱っていますが、いじめに対して見て見ぬ振りする傍観者や、清澄を思う友人や家族の目線も丁寧に織り込んでいて、非常にリアル。清澄は勇気を出して玻璃を守ろうとしていきますが、その誠実さに、心を打たれます。
玻璃役を演じているのは、昨年末に解散したE−girlsのパフォーマー石井杏奈ですが、石井さんが、あのキラキラしたオーラを封印して、地味ないじめられっ子役に徹した点には脱帽しました。清澄と出会ったことで彼女も自分自身の弱さと向き合い、人生を切り開いていこうとします。ところが玻璃は、誰にも⾔えない家族の秘密を抱えていて、ここからが怒涛のような展開を迎え、おののきました。
ネタバレ厳禁の作品なので、多くは触れられませんが、私はタイトルの『砕け散るところを見せてあげる』が表現されたあるシーンに、感動と衝撃を覚えました。ある若者たちの純愛からスタートしますが、描かれていく愛のスケールは宇宙規模に広がっていきます。
そして提示される「ヒーローの定義」には涙・涙……。最終的には、父や母の大きな愛情へと派生していく点が実に深い作品に仕上がっています。ちなみに共演の北村匠海は「僕はこの映画を観て、同世代として、2人を誇りに思いました」と中川さんたちに心からの賛辞を送っていたのも大いに納得。映像が非常に美しい作品でもあるので、できれば映画館で観ていただきたいです。
監督:SABU 原作:⽵宮ゆゆこ「砕け散るところを⾒せてあげる」(新潮⽂庫 nex)
出演:中川⼤志、⽯井杏奈/井之脇海、清原果耶、松井愛莉/北村匠海、⽮⽥亜希⼦、⽊野花/原⽥知世/堤真⼀…ほか
公式HP: https://kudakechiru.jp/
©2020 映画『砕け散るところを⾒せてあげる』製作委員会
想像することで人は世界を救える!『FUNNY BUNNY』
『FUNNY BUNNY』は、監督・脚本・編集を手掛けた飯塚健監督の舞台と小説をベースにした作品ですが、こちらも非常にエッジがきいた快作となっています。
中川さんが演じるのは、「世界を救うのはいつだって想像力だ!」という持論を声高に述べる小説家志望の大学生・剣持聡役。ある日彼は、親友の漆原聡(岡山天音)と2人で閉館間近の区立図書館を襲撃。剣持たちは「絶対に借りられない本を、借りに来た」と宣言しますが、果たして彼らが本を探す理由とは?また、その本を見つけ出すことはできるのでしょうか?
ストーリーのさわりだけを読むと、なんのこっちゃ?と思いませんか(笑)。全くどんなジャンルのストーリーなのか、予想すらつきません。いわば伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨のコインロッカー』のように、“本”が1つの手がかりにはなっていますが、やがてそこに隠された悲しくも切ない現実が明かされます。
こちらの映画でもいじめ問題が出てきますが、一番、問題提起をしているのは「自殺」にまつわるものです。厚生労働省は3月16日に、警察庁の統計に基づく2020年の自殺者数(確定値)が、2万1081人だったと発表しました。言うまでもなく、コロナ禍での外出自粛や生活環境の変化が影響したと思いますが、自殺者が増えたのは11年ぶりでした。
「自殺はダメです」と言い切ることはいとも簡単ですが、実際に人生のドン底に落ちた人がそう言われて、踏みとどまることはできるのでしょうか?また、混沌として世の中で、希望を失っている人たちに、生きる意味をどう伝えればいいのでしょうか。本作を手掛けた飯塚監督もそこに疑問を抱いたそうです。
その答えのヒントは、中川さん演じる剣持の名台詞「想像力が世界を救う」にあります。自分のことだけではなく、他人の痛みや苦しみも想像すること。それを身を持って体現した剱持は、まさに今の時代に求められている等身大のヒーローです。でも、裏を返せば、誰もが誰かのヒーローになれる、ということも教えてくれる気がします。
観終わったあと、爽やかな希望を感じられるエンターテイメント作品である『FUNNY BUNNY』。こちらも多くの方に観ていただきたいイチオシ映画です。
監督・脚本・編集:飯塚健 原作:舞台「FUNNY BUNNY -鳥獣と寂寞の空-」(演出・脚本 飯塚健/青山円形劇場、 2012)、小説「FUNNY BUNNY」(飯塚健/朝日新聞出版)
出演:中川大志、岡山天音/関めぐみ、森田想、レイニ、ゆうたろう/田中俊介、佐野弘樹、山中聡、落合モトキ/角田晃広、菅原大吉…ほか
公式HP:https://funnybunny-movie.jp
©2021「FUNNY BUNNY」製作委員会
命の大切さがテーマの『犬部!』も待機中
中川大志出演のおすすめ映画として、もう1本待機中なのが、青森県北里大学に実在した動物愛護サークル「犬部」をモデルにした林遣都主演映画『犬部!』です。
林さん演じる主人公は「犬のためなら死ねる」というほどの“犬バカ”な男・花井颯太。中川さんはその親友・柴崎涼介役を演じますが、本作では『FUNNY BUNNY』とは逆の構図で、今度は中川さんが、信念を曲げずに突き進む主人公に振り回されるという受け手の役となりそうです。
本作では、「犬部」を設立した獣医学部の主人公が、仲間たちと共に動物を守ろうと奮闘した過去と、獣医師となってから新たな問題に向き合っていくという現代という2つの時制で描かれます。笑いあり涙ありの青春映画とされていますが、こちらも命の大切さを扱った作品となりそうです。
いずれにしても3作とも見応えありの感動作で、きっと2021年、中川さんはさらにお株を上げそうな予感。こちらの公開はもうしばらくお待ちくださいね!
©2021「犬部!」製作委員会
文/山崎伸子