自閉スペクトラム症の小二の息子。負けることが極端に嫌いで、これからの友だち関係が不安です【発達障害の子育てサポート】

発達障害の子の中には、我慢が難しい、約束やルールが守れない等お子さんの行動に頭を悩ませている親御さんは多いと思います。療育を目的とした「放課後デイサービスLuce」を運営し、発達障害児のサポートに関わる藤原美保さんに、具体的な支援について伺いました。

ゲームで負けるとかんしゃくを起こして、物を投げるなど乱暴に。そのせいで友だちが離れていくのが心配で。。

小学校2年生の息子。自閉スペクトラム症の診断を受けています。幼少期から負ける事を極端に嫌がります。ゲームでも負けたりすると、かんしゃくをおこしてしまいます。カッとなると飛び出したり、物を投げたりすることもあります。最近は、周囲の子が引いてしまい、遊びに誘ってもらう事も少なくなってきてお友達がいなくなってしまうのではないかと心配です。

 

 

自閉症スペクトラム症では、不快な部分の多くが「怒り」として表出する傾向があります。「負ける」ことがイメージできずに、かんしゃくを起こしていることも。

自閉スペクトラム症のお子さんのには結構多い相談です。

つい、大人はわがままだ、自分勝手だと決めつけてしまいがちですが、実は「負ける」という事がイメージできない為に癇癪をおこしている場合があります。


歌のうたい文句ではありませんが、自分の人生は誰も自分が主人公です。主人公は必ず勝ちます。どんな事でも望みが叶います。例えば、幼い頃は誰も自分のなりたいもの、例えばスーパーマンや架空の人物にもなれると思っています。つまり、勝負事でも無敵だと思っているという事です。

彼もそう思っているので自分が「負ける」とは想像しにくいのです。
しかし、現実は勝つことがあれば負ける事もあるのですが、まだ自分の中でイメージできないのです。

自分ができない事や失敗する事があるという事が冷静に理解できるようになることも、成長する過程の一つです。

自閉スペクトラム症の診断があるお子さんでも、経験を積んでいくことで理解できるようになっていくことは珍しくありません。

家庭で「負ける」練習をして、「くやしい」気持ちをラベリングし、相手の気持ちの理解にもつなげる

では、どのように経験をさせればよいのでしょうか?

それは、ご自宅でご家族と一緒にゲームで「負ける」練習をしていただく事です。

まずは、そのゲームをする前にどんな人でも「勝つこともあれば負ける事もある」という事を話しましょう。そして、負けた時は「悔しい気持ちになる」という事も伝えてください。
相手の気持ちも想像ができないので、負けると多くの人は悔しい気持ちになるという事も教えましょう。

 自閉スペクトラム症の子は感情の細分化がゆっくりな場合があります。
その場合は不快な部分の多くが怒りとして表現されます。

なので、かんしゃくをおこした後、クールダウンし落ち着いたときに「悔しかったのね」と気持ちを代弁し、感情にラベリングをして教えてあげてください。そのうちにゲームで負けるたときのこの気持ちが「悔しい」というものなのだと理解できるようになります。
そして「悔しいという気持ちになったらどうするか?」を本人と一緒に考えましょう。


幼くても本人自らどのように行動するかを決める事で、自ら取り組もうという気になります。
しかし、前述したようにイメージ力が弱いので、いくら自分が決めたとはいえすぐには上手くいかない事もあります。なので、最初から上手くいかない場合もある事を伝え「上手くいかなくてもまた次の方法を考えればいい」のだと話してあげてください。

 わざと負けて本人を勝たせるのはNGです

避けていただきたいのは、かんしゃくを起こされるのは面倒だからと、わざとこちらが負けたり、本人を勝たせることです。
これを繰り返すと「勝つ」ことにこだわりを持った場合、ズルをしても勝とうとするようになるケースが多く見られます。

かんしゃくがひどい時は何を言っても耳には入りません。機嫌を取るなどの行為は決してしないでください。火に油を注ぐような物です。気持ちの切り替えに時間がかかりますが、クールダウンをさせて気持ちが落ち着いた後に話しましょう。

 

教えていただいたのは

藤原美保|健康運動指導士、介護福祉士、保育士 株式会社スプレンドーレ代表

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

イラスト/本田 亮

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