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夏休みの自由研究、親は決して手伝うべからず!
「毎年8月末に、親子バトルを繰り広げながら、ヘトヘトになってやり終えている…」
これ、“夏休みの自由研究あるある”な光景ではないでしょうか。子どものためによかれと思って、もしくは仕方なく?!手を差し伸べてしまう親たち。でも実は、これが子どもの“探究の火”を消してしまう要因になるのだと、森田先生は言います。
「親って、子どもの話をしていても、いつの間にか主語が自分になるんです。『宿題をやらずに学校に行ったら恥ずかしい』『こんな仕上がりで提出するのは恥ずかしい』と思っているのは、子どもではなく親の方ですよね。
一番ダメなのが、親が横から口や手を挟んで体裁を整えてしまうこと。『結局お母さんがやっている…』というオチはマンガやアニメでもよくありますが、あれをやってしまうと、子どもの発想が止まる=探究の火が消えるんです。
学校側は、子どもがどんなものを出してきても受け入れます。やらない、やりたくない子は、きちんと先生に説明すればいい。8月30日まで自由研究に手を付けなくても、どんなに雑な仕上がりでも、親はぐっととこらえて、放っておくべき。何か言いたくなる気持ちに、何重にもロックをかけておいてください」
ひと夏で結果を出さなくてもいい
さらにもう一つ、森田先生からは、子どもの夏休みの自由研究の“捉え方”についてアドバイスが。
「夏休みの自由研究を通じて、子どもが成功体験を得られるにこしたことはありませんが、夏休みの1か月は、長いようで短い。そこまで到達させることは、実際にはなかなか難しいと思います。十分な仕上がりにならなくても、後で振り返った時に、『これを始めたきっかけはあの時の自由研究だった』という風に、何かの起点になっていればいいのではないかと。ひと夏の自由研究で完成を求めなくてもいいと思えば、親の気持ちも少しは楽になるのではないでしょうか。」
目の前の宿題を終わらせること、完璧に仕上げることに固執せず、長い目、温かい目で、わが子を見守る。目から鱗な視点ではないでしょうか。
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親がすべきは子どもを仕掛けること。親も自由研究にチャレンジ!
では、子どもが自由研究のテーマ探しに悩んでいたり、なかなか手を付けない時に、親がとるべき対応は?どんな風に動機付けすればいい?森田先生に聞いてみました。
「まずは子どもとの対話を楽しんでください。とくに高学年の子どもの親にとっては、わが子が今何に興味を持っているのかを知る、いい機会になるはずです。
そして、取り組むテーマが見つかったら、子どもを手伝うのではなく、親もそれに挑戦してみてください。たとえ自分の門外漢の内容でも、面白がれるといいですね。そんな時こそ、子どもの心に火をつけるチャンスですから。
親だからといって、常に指導者にならなくてもいいんです。時には、知らない自分、できない自分を子どもに見せて、フラットな関係で競争する。重要なのは、手加減なしに本気でやること。すると、子どもは対抗意識を持って、自ら走り出します。高学年は結構手強いですよ。大人の何倍も成長が早いので、コツをつかむと抜きにかかってきますからね」
子どもの心に火をつけるため、探究学舎の授業や教材作りで大切にしていること
こうした “仕掛け”は、探究学舎の授業づくりにおいても重視していると森田先生。
「『誰でもできること』『手軽にできること』『競争性・攻略性があること』僕は、この3つの観点で、探究学舎の授業や、クエストと呼ばれる自宅で自由に取り組める教材企画をつくっています。この3要素がすべて当てはまると、必ずヒットします。しかも爆速で。
『誰でもできる』は必須条件です。小1でもできて、中1でも楽しめる内容を、常に目指しています。『手軽にできる』も不可欠。子どもの心の火はすぐに消えてしまうので、材料などがすぐに手に入って、火がついている間にすぐにできることは重要です。さらにそこに『競争性・戦略性』が加わると、子どもたちは自然に競い合いを始める。すると、それにハマる子が出てきて、とんでもないものを生み出すのです」
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森田先生おすすめの自由研究「チリメンモンスターハントチャレンジ」
「誰でもできる」「手軽にできる」「競争性・戦略性がある」これら3つの要素で、実際に探究学舎の子どもたちにヒットした企画を、森田先生から紹介していただきました。
「長期的にヒットし続けているのが『チリメンモンスターハントチャレンジ』。スーパーに売っているチリメンジャコのパックの中から、多種多様なモンスター、カニやエビ、タコ、イカなどのいきものを探してみよう!という企画です。モンスターそれぞれに点数が設定されていて、見つけたものに応じて得点できるというルール。いわしは1点、最も見つけにくいタツノオトシゴは300点、全部見つけたらコンプリート賞など、子どもを夢中にさせる仕掛けもいろいろ用意しました。
仲間がいると、探究はより楽しく、より深まる
参加者は、クローズドのSNSに投稿できる仕組みになっているのですが、高得点の珍しいいきものを見つけた子が投稿すると、盛り上がりは一気に加速。産地を教え合うなど、子どもたちは勝手に交流を始めます。さらには、見つけたいきものをレジンで固めてキーホルダーをつくる子、スノーボールをつくる子が出てきて、つくり方を教え合ったり。発想が発想を呼び、大人の想像を超えることがどんどん起こっています」
子どもの興味を広げること、深めることを目指している探究学舎の授業やクエストは、自由研究に通じるところが多くあります。『チリメンモンスターハントチャレンジ』も、そこから生まれたアイデアも、まさに夏休みの自由研究ネタにピッタリ!参考にしたいですね。
この夏は、森田先生のアドバイスをもとに、自由研究との向き合い方をちょっと変えて、わが子の心にも探究の火をつけちゃいましょう!
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お話を伺ったのは…
探究学舎 講師 森田太郎(もりたたろう)さん
1977年、東京生まれ。静岡県立大学国際関係学部国際関係学科卒業。幼い頃から遊びが大好き。小学生の頃は、“宿題はしない” “漢字ドリル、計算ドリルはずっと新品のまま”な生徒。その後、料理人を目指すも、ユーゴスラビア内戦を機に民族問題に関心を持ち、大学進学。1999年に第1回秋野豊賞を受賞。2000年にNGO「Sarajevo Football Project」を設立し、サッカーを通じた平和構築活動に従事。2006年より13年間、東京都公立小学校教諭を務め、主幹教諭を最後に退職。以降、探究学舎の講師として活躍中。著書は『サッカーが越えた民族の壁〜サラエヴォに灯る希望の光〜』(明石書店)。
取材・文/鈴木友紀