画数の多さからブームになった「ビャンビャン麺」自宅で作ってみた!
「ビャンビャン麺」をご存じですか。「ビャン」の字の56とも57とも58画ともいわれる総画数で話題となり、昨今の「ガチ中華」の流行とも相まって注目を集めています。ファミリーレストラン「バーミヤン」やコンビニエンスストア「セブン–イレブン」での季節・地域限定メニュー、あるいは輸入食材店「カルディ」の店頭等で見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
「ガチ中華」ってどんな料理?
人気番組「マツコの知らない世界」や「タモリ倶楽部」「孤独のグルメ」等でも取り上げられている「ガチ中華」ですが、「海を渡って日本に来た中国語圏の人たちが調理する本場の中国料理を、従来の『町中華』とは別物として近年『ガチ中華』と呼ぶようになったんですよ」と解説してくれたのは、ガチ中華の動向に詳しい東京ディープチャイナ研究会代表の中村正人さん。
「なかでも『ビャンビャン麺』は知名度もありますし、なにより漢字のインパクトがあるので、子どもの関心は引きやすいかもしれません」とのことで、今回は親子で、ガチ中華のなかでもガチ(?)な「ビャンビャン麺」を作ってみることにしました。
ガチ中華店の通販で“麺打ちセルフ”セットをお取り寄せ!
しかし、粉から作るのは大変! ということで、ビャンビャン麺の故郷、中国・西安出身の本場の麺職人とともに2018年にオープンしたビャンビャン麺専門店「秦唐記」のオンラインショップで、ピリ辛汁なしビャンビャン麺「ヨウポー麺」の“麺打ちセルフ”タイプを注文してみました。「ヨウポー麺」は、西安でも定番のビャンビャン麺なのだとか。
秦唐記のYouTubeチャンネル(※)で作り方を見ながら、我が家の小学3年生の双子と、早速チャレンジ!
※記事の最後で「ビャンビャン麺の打ち方」の動画をご紹介しています。以下はYouTube後半に登場する幅広の「ベルト麺」の作り方です。また我が家には大きなまな板がなく、キッチンペーパーを敷いて代用しています。
ビャンビャン麺、なんでそんな名前なの?
ところでビャンビャン麺がどうして「ビャンビャン」という名前なのかというと、麺を打つ時に「ビャン!ビャン!」と音がするから。ちなみに「ビャン」という漢字も発音(中国語の発音表記でbiang)も、中国語の標準語にはないもので辞書にも載っていないそうで、非常にローカル色が強い食べ物なんですね。
ではいよいよ本番です。果たしてその名のとおり「ビャン!ビャン!」と奏でることができるでしょうか!?
ビャン!ビャン!聞こえましたか?
打ち終えた麺は茹でられるのを待つだけ、のハズが、ここでひとつ問題が!
子どもたちはどうしても麺打ちに時間がかかり、せっかくベルト状に薄く延ばした麺が、重ねておいた部分についてはペッタリとくっついてしまうことに! スペースが許せば1本1本、打った状態のまま真っ直ぐに並べておいたほうがよさそうです。
そんなワケで我が家のビャンビャン麺は、極太ならぬ極厚麺に……。
ガチ中華店プロデュースだけあって「辛い油」はかなり辛いので、分量は加減したほうがよさそうですが、家族で「おいしい、おいしい」と、アッという間に完食しました♪
▼ビャンビャン麺専門店 西安麺荘 秦唐記
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ビャンビャン麺の故郷「西安」は、自由研究テーマの宝庫!
さてビャンビャン麺の故郷「西安」は、古くは「長安」と呼ばれ、周、秦、漢、隋、唐など13の王朝の都として栄えた中国きっての古都。
アニメ化・映画化もされている漫画『キングダム』で始皇帝が再び脚光を浴びていますが、世界文化遺産「秦始皇帝陵及び兵馬俑坑」も西安にあります。また『三国志』や『西遊記』の舞台でもあり、絶世の美女・楊貴妃や、詩人の李白や杜甫も活躍した世界有数の文化都市。
その歴史を知れば、ビャンビャン麺のような地方料理にまで西安オリジナルの漢字を作ってしまう心意気(!)にも納得してしまいますね。
古都「長安」は、日本の歴史とも深い関わりが!
さらに西安で特筆すべきは、日本とのつながり。
平城京や平安京のモデルになったのも長安で、世界的な交易路・シルクロードの中心都市として東西文化の橋渡し役も担い、その東の終着点は東大寺の正倉院ともいわれています。
また近代には日中戦争の前年に起こった「西安事件」もあり、この事件を糸口として中国国内で対立していた国民党と共産党が手を結び、日本との戦争にも大きな影響を与えました。
「世界の歴史は、身近に感じられなくて難しい」というお子さんも、日本の歴史を入口にすれば、ハードルが下がるのではないでしょうか。
旅育の専門家に聞いた「西安の学び方」
旅と異文化体験を通じて子どもを育む「旅育」の専門家で『海外旅行で子供は育つ!!~子供の人生を豊かにする”旅育”のヒミツ』の著者、株式会社たびえもん代表の木舟周作さんにも「親子で、西安について学ぶとすると?」と聞いてみました。
子どもの世界が狭くなっている今こそ、異文化体験を!
それにつけても木舟さんには「旅育」の専門家として、コロナ禍で「心配なこと」があるのだそう。
「子どもというのは大人が想像する以上に、ものすごく狭い世界で生きています。普段は家庭と学校、あとはせいぜい習い事くらい。いまはコロナ禍で旅に出る機会も激減していて、通常に輪をかけて、子どもの世界が狭~くなっているんですね。
もちろん外国から転校生が来たとか、なんらかの偶然で異文化に触れられることもあるでしょう。でも子どもは、自分からその環境をつくることはできないのです
だからこそ大人が、“違う世界”を見ておく経験をさせてあげてほしい。“違う世界”を見た経験があれば、問題にぶつかった時などに“違う見方”がしやすくなるのではないでしょうか。
いま『旅育』に、積極的になれない方もいらっしゃると思います。そんな時にはご家庭でできる異文化体験を通じて『食べ物でも言葉でも、それこそビャンビャン麺でも、あらゆるものが違っている文化が海外にはあるんだな』と、ぜひ感じてみてください。そして『落ち着いたら、西安へ行ってみよう! 直行便も意外に、あちこちから出ているんだね』なんて、家族で旅の計画を話し合ったりして、親子で目を、広~い世界へ向けるきっかけにしてもらいたいですね」(木舟さん)
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自由研究の表紙に「ビャンビャン麺」とタイトルを書くだけで、目を引きそうなこのテーマ。親子で手軽に楽しみ、かつ豊かに学べる異文化体験として、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
▼YouTubeチャンネル秦唐記–ビャンビャン麺/ビャンビャン麺の打ち方
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構成・文/ちかぞう