「ガチ中華」の「ガチ」って何?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

最近はやりの「ガチ中華」の「ガチ」。あるスポーツが語源です

「ガチ中華」ってご存じですか?「マチ中華」ではなく「ガチ」です。日本風の「町中華」ではなく、本場中国の味そのままの中華料理のことをいいます。

この「ガチ」なんですが、実はあるスポーツから生まれた語なんです!

 それは、相撲。「ガチ」は、「ガチンコ」から来ている語

 

 「ガチ」は、相撲で使われる「ガチンコ」という語の略なのです。

「ガチンコ」は、相撲の世界の隠語ですが、対戦する両者が手加減をせずに、真剣にぶつかり合って勝負することをいいます。立ち合いのとき、頭と頭がぶつかってガチンと音がすることから生まれた語だといわれています。

これが一般に広まって「ガチンコ勝負」のように使い、さらに「ガチ」の形で、「ガチで頭にきた」のように、本気でとか、本当にとかいった意味で使われるようになったのです。

「八百長」も相撲が語源

「ガチンコ」に対する語が、「八百長」です。「八百長」も相撲の世界から生まれた語です。

明治時代に、八百屋の長兵衛さん、通称「八百長」という人がいました。この長兵衛さんはある相撲の年寄とよく碁を打ち、勝てる腕前なのに、たくみにあしらって常に一勝一敗になるように手加減したというのです。

このことから、相撲で、前もって勝敗を打ち合わせておいて、真剣に勝負を争っているように見せかけることをいうようになりました。そして、これが相撲以外でも広く使われるようになったというわけです。

「待ったなし」「仕切り直し」も、相撲を語源とした言い回し

ちなみに、「ガチンコ(ガチ)」や「八百長」のように、相撲から生まれた語はけっこうあります。「いなす」「待ったなし」「仕切り直し」などがそうです。

相撲由来の語は、他のスポーツにくらべて圧倒的に多いのです。それだけ相撲が日本人に愛されてきたからなのでしょう。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)が好評発売中。

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