ASD(自閉スペクトラム症)の人と友達になるために。英国のベストセラー児童文学が教えてくれる自閉症のリアル

発達障害とは、脳の先天的な発生・発達の異常に基づく障害です。コミュニケーションや行動の障害、認知機能の偏りやゆがみがあらわれることで、周囲からは「気になる行動」や「困った行動」と思われてしまうことも。代表的な発達障害のASD(自閉スペクトラム症)の少女が自身を投影した物語を書き、イギリスで大きな話題となりました。その三部作の1冊が、この度、翻訳・発売されました。

自閉症スペクトラムの娘を持つ母のTwitterがきっかけで生まれた、少女タリーの物語

イギリスに住むリビー・スコットは自閉スペクトラム症の女の子。

2018年、当時10歳だったリビーが書いた、自身についての文章を母親がツイッターにあげたところ、大きな反響がありました。ツイートは出版社の目に留まり、翌年から、リビーは、児童文学作家のレベッカ・ウエストスコットと共同して、10歳の自閉スペクトラム症の女の子、タリーの物語を書き始めます。

その『わたしはスペクトラム』(小学館/原題「Ways to  be me」)が、翻訳され発売となりました。

自閉症への理解を深める児童文学として、本国、英国では大変な評判を呼び、現在、計3冊が刊行されシリーズ累計15万部を超えるまでになっています。

タリーはどんな女の子?

『わたしはスペクトラム』のタイトルにある「スペクトラム」とはどういった意味でしょうか。

「スペクトラム」というのは、境界のない連続体という意味で、「自閉スペクトラム症」においては、一人ひとりの自閉症の特性の幅のことを表現しています。

そう、一言で「自閉症」と言っても、一人ひとり抱えている症状や苦しさは違います。

主人公の10歳の女の子タリーは、ときどき感情がコントロールできなくなって爆発したり、場ちがいなことを言ってトラブルを起こしてしまいます。周りの人には「みんなと違ってる子」と見なされて、理解されないこともしばしば。

自閉スペクトラム症と診断され、みんなとちがっている自分を受け入れるように

みんなと同じ「ふつうの子」になりたいのに、それがどうしても「できない」毎日は苦しいばかりで、わたしがわたしじゃなかったらよかったのにと思っていました。

そんなタリーですが、やがて自分の中のどうにもできない衝動の原因が自閉スペクトラム症にあることを知り、自分らしさを受け入れて生きる道への一歩を踏みだしていきます。

自閉スペクトラム症と診断されていちばんよかったことは、自分のことをよく理解できるようになったことだ。いまはまだその言葉に慣れる必要があるけれど、きっとだいじょうぶ。わたしは自分がたったひとつの言葉では表せないことを知っている。わたしはたくさんの言葉からなるわたしであり、”自閉スペクトラム症”はそのひとつでしかないのだ。

『わたしはスペクトラム』より

作者のリビー・スコットからのメッセージ「自閉症の人と友だちになるには」

『わたしはスペクトラム』のあとがきには、「わたしたち自閉スペクトラム症の人と友だちになるには」という作者のビリーからのメッセージが綴られています。

・社会とかかわりたくないわけではないの。新しい環境にどう向かっていいかわからないだけ

・みんなとちょっと違った世界の見方をしているだけだから宇宙人みたいに扱わないで

・表面だけ見て判断しないで

・おしゃべりするときは、視線を外してみて。相手の顔を見て目を合わせないといけないというプレッシャーから解放されるから

・好きなところや得意なところをほめて。ポジティブに接してくれるとすごくいい変化が生まれるから

など、自閉スペクトラム症を抱えた子について、内面についての理解を促し、友だちになるための心得を説いています。

タリーはあなたの隣人。バリアフリーな共生社会へのガイドとして親子で読みたい

2012年に文科省が実施した調査によれば、通常学級の中で発達障害の可能性のある児童・生徒の数は約6.5%であるという報告があり、25人のクラスに1〜2人はいるという割合になります。2019年には日本の発達障害を抱えている児童は7万人を超えました。タリーは、きっとあなたやお子さんの身近にもいる存在です。

自閉スペクトラム症の子がどんな気持ちを抱えているか、そして、どんなふうに関わっていけばよいか。子どもたちばかりでなく、親としても学べる『わたしはスペクトラム』。

これからの共生社会を生きるためのガイドブックとも言える1冊。ぜひ、親子で読んでください。

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構成・文/HugKum編集部

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