難しい問題にチャレンジできないと保護者は焦ってしまう!?
――関⻄ではとびきりの「算数好き」が集まり、クラス分けの上位クラスではひらめきや数多くの解法を駆使する⼦たちがしのぎを削ると⾔われる浜学園ですが、実は基本を押さえて使いこなせば、浜学園のような難関校向けの塾の問題も解けると⾔うのですね。
とにかく基本が大事です。それをないがしろにして難しい問題にチャレンジしても結果が出ません。
――では、実際に浜学園ではどんな指導をしているのですか?
まず、浜学園では入塾テストがありまして、これをクリアしていただく必要があります。そして、入塾が決まったお子さんを対象に、算数では2 つのコース「マスターコース」と「特訓コース」が用意されています。
「マスターコース」は受験指導の中核になるコースで、全ての入塾者を対象にしたものになります。それに対して「特訓コース」は内容も難易度も特定されたもので、マスターコースにプラスして受講するコースになります。浜学園で上位の学校の受験を考えている生徒さんは、「マスターコース」で基礎知識とその活用を学び、この活用をより磨くために「特訓コース」を受講します。
特訓コースを受講できるかどうかは、公開模試などの成績によります。そして、この「特訓コース」の1つが「最高レベル特訓(最レ)」になります。
――すると、マスターコースだけの受講だと、保護者のみなさんは「うちの子は特訓コースに至らない」とちょっとモヤモヤしてしまうのでしょうか…。
前編でもお伝えしたように、学びは「適時に適度」が基本中の基本です。成功体験や楽しいという感情さえあれば、遅れはいつでも解消できますよ。算数に関しての成功体験や楽しさを犠牲にして得られるものって少ないのではないでしょうかね。ただ、計算だけは100%にしておきたいですけどね。
「わかる」というのは「だいたいわかる」のではなくて、「100%わかる」、「なにも考えなくても即座に答えが出る」ということです。
「脳にたたき込まれ無意識に出てくる」ことが「100%わかる」ということ

――「100%わかる」というのは、どういう状態でしょうか。
たとえば「3+2」と聞かれたら、3に1,2と足していったり、おはじきを5個思い浮かべたりしないですよね? 何も考えずに「5」と出てくる。そういう状態です。
――それには、かなり何度も計算して、自分の脳にたたき込むということなんでしょうか?
そうですね、前編でもお伝えしたように、単純反復をするということです。
――単純反復に時間をかけたら、難しい文章題にたどり着くのが遅くなり、受験に間に合わなくならないですか?
そんなことはないですよ。小学校3年生ぐらいまでは、計算ができれば算数ができます。いや、4、5年生でも同様かもしれません。塾に来て難関校を目指す子でも、計算の基礎がきっちりと100%できて体にしみこんでいない子がけっこう多いんです。そこが空白になっている。実はその空白を埋めるだけでも成果が出てくるんですよ。
市販の計算ドリルや100マス計算を繰り返すのがよい
――そうなんですね! では焦って難しい問題に取り組む前に、計算問題をどんどんこなして瞬発力で解けて100点が取れるようになることが重要なんですね?
そのとおりです。もちろんそれを塾でやってもいいですけれど、計算だけですから、ご自宅でもできますよね? 市販の計算ドリルや100マス計算みたいなものでもいいんです。どんどん手を動かして解いてください。粘り強くがんばって体に数字がしみこんだら、たくさんほめてあげてください。
六本木の算数「最レ」クラスは算数の応用を楽しむ場

――2025年春から、関西中心の浜学園が小1~小5を対象に、「最高レベル特訓・算数(通称最レ)」だけの六本木教室を作ったと話題です。めちゃめちゃ難しい問題を楽しそうに解く子だけが入れる教室でしょうか?
浜学園の「最レ(最高レベル特訓コース)」に所属するような子は、基礎が十分にできている子ですね。
ちなみに、浜学園の低学年の最レでは、「デジタル浜ノート」を使用しています。

タブレット上で生徒さんが計算問題を解けるようになっており、自動採点・自動計測はもちろん、他の生徒さんとの比較もできるので、他の子と競い合うように計算を楽しめるようになっています。また管理画面を通して生徒さんの学習履歴を塾側が確認できますので、家庭と塾という垣根を取り除いてお子さんの学習をサポートする体制を作っています。
というのも、低学年で大切なのは「何ができて何ができないか」ということより「どんな姿勢で学習に取り組んでいるか」ということだからです。今まで見えなかった家庭での課題や計算に取り組む姿勢を可視化することで、より効果的な低学年指導を目指しています。
――しかも、「最レ」のお子さんは、単純反復が完璧にできるようになる時間も短いのでしょうね。
そうかもしれません。でも、比べても意味がありません。「適時、適度」という言葉を思い出し、我が子が完璧に計算ができるような環境を作ってあげましょう。小学校1年生から始めれば、大学受験まで12年もあります。苦手意識を持って算数から遠ざかってしまわないように、時間をかけて計算に取り組む。これこそが、算数を好きになるコツだと思いますね。
そうして基礎力がついてきたら、算数が楽しくなってきます。
こうした楽しさの土台の上に、筋道立てて物事を考える力をのせて、問題を解いていくことが、我々が考える理想です。「ひらめかないから無理」とか思わなくていい。
実直にノートをとってやり方をきちんと身につけてきちんと守ってやっていくような子のほうが、あとあと伸びていきます。とにかくその子にあった時間と量で、その子らしく算数を好きになってもらいたいですね。
――「算数が好きになる」とは、難しい問題が解けるようになることだと思っていた方は多いのではないでしょうか。それよりも、基本的な計算問題が完璧にできるよう、その子にふさわしい時間をかけて仕上げることが重要なんですね。お子さんがまだ未就学、あるいは小学校低学年、中学年であればなおさら、今日から計算力を高めていきたいですね。
前編「中学受験は算数がキメ手!では、どう攻略する? 」はこちら

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記事監修

関西の大手塾・浜学園副学園長。算数が専門で浜学園の算数の作問や小学館の算数ドリルなどの監修を行う。
取材・文/三輪 泉