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中学受験では算数の配点が高い傾向。算数1教科入試も増えている
――中学受験では算数が重視される傾向があると思います。それはなぜでしょうか。
私立中高一貫校の入試問題では、算数と国語の配点が高い場合が目立ちます。国語・算数・理科・社会の4 教科の場合、120/ 120 / 80 / 80 だったり、中には100 / 100 / 50 / 50 点の学校もあります。4 教科受験でも算数の配点は30〜33% です。
関西の中学校では、社会がなく、国語・算数・理科の3 教科で受験が行われる場合があります。また、4 教科と3 教科が選べる学校も多いです。灘中学校や甲陽学院の場合、試験は2 日間に渡り、3 教科受験のみとなりますが、2 日間の合計で国語・算数・理科の配点は200 / 200 / 100 なので、算数の配点が40%と高くなります。
ただ、算数の配点が高いといっても入試は合計点で決まりますので算数だけでは勝てません。算数以外でも得点できるようバランスよく勉強していくことは大切です。
――最近は算数1 教科だけの受験もあります。女子校でも東京の品川女子、田園調布学園などは午後受験で算数1 教科のみ、という受験ができます。
そうですね、募集人数は少なめではありますが、そういう受験が増えていることは事実です。大学入試で理系を選ぶ場合は、数学と英語をきちんと勉強しておくと戦略が立てやすいですし、理系受験なのに数学が苦手だったりすると厳しいです。それを見据えて、中学受験をするなら算数はしっかりと勉強しておく必要はあります。

算数は文章題を1問間違えると痛い……?
――算数単体で見ても、中学受験の場合はできる・できないがはっきりした問題が多い気がします。
算数は1問あたりの配点が大きく、間違えるとマイナスが大きいでしょう。国語なら漢字ができれば1つ2点など細かく点数を取っていける場合が多いのですが。
――答えが合っていなくても、途中点をもらえることもあるのでは?
もらえることもありますが、そこは学校によりますから、しっかりと完答をすることが原則です。ちょっとした読み間違いや計算ミスが合否に影響を及ぼすことだってありえます。
中学受験の算数は難しくなっている? そんなことはありません!
―最近の中学受験の算数は難しいと言われます。難しい問題の対策をしないと受からないとも言われますね。
難しく⾒えるものが多いといわれています。そのため常に新しい問題に次々に取り組んで、難問を追いかけなければ受からない、という空気感がありますけど、求められているのは「基礎知識の活用」なんです。昔から変わっていないのです。
―ひらめきとかセンスとか、キラキラしたものを求めて難しい問題をやらなければと思われがちですがそうではない、ということでしょうか?
その通り。感覚に頼るのではなく、正しい基礎知識とそれを使って筋道を立てて考えることが大切なんです。
浜学園の算数の授業⾃体も、あたかもひらめきとか思考⼒とか、キラキラしたものを求めて難しい問題をやっているように思われてしまいますが、実はそうじゃない。基本に⽴ち返り、基本をどう使うのかという視点で中学受験に取り組んでもらえるといいですし、そのための勉強の仕⽅を提供しているつもりなんですよ。
未就学児のときにほめられた経験が「算数好き」「算数得意」につながる

――関⻄では「算数の得意な子が集まる」ことで有名な浜学園ですが、実は基本を押さえて使いこなせば解けると⾔うのですね。ただ、「算数が好き」と言い切るほどに自信を持つためには、やはりそれなりの方法が必要なのでは?
そうですね、それには受験などがあまり関係のない未就学の時期や、小学校低学年のときに「算数が楽しい」と思えるような体験を重ねることが大切だと思います。算数に限らず、「やったら親にほめられる」というのが一番の原動力です。粘り強くやったことを親がちゃんと見ていてほめてあげる、それがその子の学習動機につながっていきます。
受験期になると、どうしても偏差値などが大事になってきて、人と比べる要素が出てきますよね。そうなる前の段階では、ほかの子とは比べない。その子がその子としてできていることを親がほめる、これがポイントです。
その子に合った内容をその子にちょうどいい時間、勉強することがポイント

――たとえば算数なら、どれくらいのレベルのことをどれくらいの時間、やればいいのでしょうか。
「適時に適度」というのが大事なんです。ただ。子どもによって適時も適度もまったく違うので、ひとことでは言えないですね。そこは親御さんが一番わかっているのではないでしょうか。「こんなに簡単なことしかできないの?」「どうしてすぐ飽きてしまうの?」なんて批判的にならずに、その子が気持ちよくがんばっていける量と内容を見極めてください。だいたいわかりますよね、飽きてくる感じや、わからなくて困っている感じって。
幼児期に先取りしていろいろな難しい問題を無理して解かなければいけないことなんてないです。10まで数えられるのか、100までなのか。その子に合わせて一緒に数えて楽しんでください。10まで数えてもっと先を知りたそうにしていたら教えてあげて20、30とやればいいけれど、やりたくなくてふてくされたりどこかにいってしまうのに無理矢理やらせなくていいです。「ちゃんと100%できること」をやってください。繰り返しやっているうちに、身についてきます。
数のことが少しわかってきたら、あめ玉を前にして、「3個のあめ玉と4個のあめ玉を両方あげるよ。7個になったね」と目で見てわかるような簡単な一桁の計算をやっていてください。未就学児なら、生活の中で一桁の足し算や引き算の準備ができる程度で十分です。
「難しくないことをとにかく反復」できるようになるコツ
――教材は必要ですか?
あってもなくてもいいです。幼児向けの市販の教材を使ってもいいです。でも、それがおもしろくなさそうなら、親御さんとの会話の中で、10数えたり、お店でりんごを買うときに「うちは4人家族だよね、りんごいくついるかな」みたいな感じで算数らしきことをやればいい。
大事なのは、がんばってやってほめられる体験をすること。だから、もっと言ってしまえば水泳とかピアノでもいいんです。たとえばピアノは「粘り強くがんばってやって達成する」最たるものです。正しく指を動かして単純反復したら弾けるようになります。それは算数と同じで、その成功体験は、計算をたくさん粘り強くやって、間違えずに解答することにつながるんじゃないでしょうか。
――なるほど! 「ちゃんと算数ができるようになる」の基本は、「あまり難しくないことを反復練習できる粘り強さを養うこと」なのですね! ではその粘り強さを、小学生になったらどう生かせばいいのでしょうか。後編でじっくり伝えていただきます。
後編「これやったら算数がキライになる!」小学生の親がついやってしまうNGな勉強サポートとは」はこちら

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記事監修

関西の大手塾・浜学園副学園長。算数が専門で浜学園の算数の作問や小学館の算数ドリルなどの監修を行う。
取材・文/三輪 泉