感覚過敏からトイレのお困りまで。特性に合わせた道具を【発達障害の子を道具で応援!】Vol.5

道具で発達を応援するネットのお店tobiracoの店主が、発達障害の子の「困り感」を解決する道具をご紹介します。

発達凸凹さんのために開発されたものではないけど、結果として感覚過敏の子どもたちに役立っている商品があります。

今回ご紹介する「らくらく服薬ゼリー」と「ベビー粘着綿棒」が、まさにそれ。メーカーの方にお伝えしたところ、想定外だけど、とてもうれしい使われ方だったようです。「勉強になりました」と言われて恐縮した次第。今後は発達障害の特性も視野に入れた商品開発をお願いしたいものです。

感覚過敏とは闘わずに折り合いをつける工夫を

「らくらく服薬ゼリー」は、薬をうまく飲めない高齢者や幼児のために開発されました。飲みにくい粉薬をゼリーに包めば、つるんと飲むことができます。

 

 

らくらく服薬ゼリー
原材料:エリストール、還元麦芽糖水飴、寒天、ゲル化剤(増粘多糖類)、酸味料、乳酸カルシウム、香料、甘味料(ステビア)、クチナシ色素 容量:パウチタイプ 200g

子ども用には、「おくすり飲めたね」 いちご味、ぶどう味、ピーチ、チョコレート味があります。

価格:オープン 発売元・問い合わせ (株)龍角散 https://www.ryukakusan.co.jp お客様相談室 03-3866-1326(土・日・祝日を除く)

 

この「つるん」が、味覚過敏の子にぴったりと口コミで広がりました。

薬は食べ物と違って、独特の匂いや苦味があります。感覚や味覚に過敏性がある子はとても嫌がります。無理やり、口をこじあけて薬を飲ませてしまうとトラウマとなって薬全般が嫌いになってしまいます。

「感覚過敏、味覚過敏とは闘わないことです。闘ってもいいことはひとつもありません」

こう話すのは、『発達障害の子のためのすごい道具』(小学館)の著者安部博志先生(筑波大学附属大塚特別支援学校支援部長)です。1万学級以上の子どもたちを見てきた先生の話には、説得力があります。

薬を飲ませるのに悪戦苦闘している保護者に、この「らくらく服薬ゼリー」をすすめたところ、すごく喜ばれたそうです。

味覚過敏の子だけではなく、飲みこむタイミングがつかめない子にもおすすめ。錠剤が舌にいつまでも残って飲み込めなかったり、違和感があって吐き出したり。そんな時にもゼリーに包めば、文字通りデザートのゼリーを食べる感覚でどうということなく薬を服用することができます。

「おくすり飲めたね」は、いちご味、ぶどう味、ピーチ味、チョコレート味があり、まさにおやつのゼリーそのもの。

使った人に聞くと、最初にゼリーだけを食べさせて、ゼリーの味に慣れてから薬をくるんだほうがいいようです。薬が飲めないというお子さんに、ぜひお試しください。

耳かきを嫌がる感覚過敏の子に粘着綿棒

小さい頃にされた耳かきが恐怖となって、耳掃除を絶対にさせなくなったという子がいます。安部先生が担任した生徒です。

その生徒が、指示を理解できないのは聞こえていないからではないかと考えた安部先生。耳鼻科に連れて行ったところ、耳垢がカチンコチンになって耳の穴を塞いでいました。耳垢をとってからは、よく聞こえるようになったそうです。

耳の穴に耳かきを入れられたり、耳かきで触られることを嫌がる子は、感覚過敏の子に多いようです。

ピンクの綿球が粘着性あり。白の綿球は通常の粘着なし。

 

 

ベビー粘着綿棒(細軸タイプ)50本入り

素材:綿球 綿100% 片側の綿球には粘着剤がついていない通常タイプ。

価格:オープン 発売元・問い合わせ:ピジョン株式会社 https://products.pigeon.co.jp/   0120-741-887

 

ベビー粘着綿棒(細軸タイプ)50本入り

素材:綿球 綿100% 片側の綿球には粘着剤がついていない通常タイプ。

価格:オープン 発売元・問い合わせ:ピジョン株式会社 https://products.pigeon.co.jp/   0120-741-887

 

教えづらいトイレの手順を絵カードで見える化

トイレで用を足す一連の動作がうまくいかない子がいます。

一連の動作とは、女子の場合なら、便座の蓋を開ける→便座に座る→パンツを下ろす→用を足す→トイレットペーパーを適量(ここも大事)切る→お尻を拭く→紙を便器にすてる→パンツをあげる→水を流す→便座の蓋をする→手を洗う。

こうして書き出してみると、私たちは無意識に見通しを立てながら次から次へと動きを切り替えているんですよね。見通しを立てるのが苦手な子は、これができずに戸惑ってしまうわけです。

トイレは個室なので、子どもがどう困っているのかがわからないことがあります。水を流し忘れたり、トイレットペーパーの適量がわからずに全部引き出してトイレをつまらせたり。

トイレにいってみよう!

カードのサイズ:W90×D60mm セット内容:カード(ラミネート加工済)男の子用・・・33枚、女の子用・・・27枚、プラカードリング1個、説明書1冊 カードにはリング用の穴があいています。 価格:1,500円

おんなのこのひのおていれ〜生理時の処理手順カードセット

カードのサイズ:W90×D60mm セット内容:カード(ラミネート加工済、34枚)、プラカードリング1個、カードにはリング用の穴があいています。 価格:1,500円

発売元・お問い合わせ アドプラス http://www.addplus.jp

「トイレにいってみよう!」は、トイレの一連の動作が絵カードになっています。

最初のうちはトイレですることを絵カード見せながら言葉と行動で教えてあげましょう。慣れてきたら親に教えられなくても、ひとりで絵カードを見ながら用を足せるようにします。最終的には絵カードがなくてもトイレで用を足せるようにします。

トイレットペーパーを「適量」切るのが難しい子には、1回分ずつあらかじめ切って用意している家庭もあるようですね。適量がわからないのは、トイレットペーパーをいったん引き出すとどこで終わりにしていいか、その加減がわからないからです。ぐるぐると引っ張って切らせて「はい、そこまで」と切るタイミングを指示してあげるのもいいでしょう。「適量」がわからないと、学校のトイレも詰まらせてしまうかもしれません。

思春期に入るまえに教えたいこと

余談ですが、男子も高学年くらいになると母親が教えづらくなります。

安部博志先生から、こんな話を聞きました。

スキーの合宿に出かけた時のドライブインでの出来事です。高等部の男子生徒たちが、男性用の小用トイレでズボンを下までおろして(つまりお尻丸出し)、用を足していたというのです。幼児ならまだしも、高校生がそろいもそろってお尻丸出しで立って用を足す姿は他の人の目には奇異に映ります。この姿を目撃した安部先生は、学校に戻ってから「かっこよくトイレを使おうぜ」と題して、トイレでの用の足し方を絵カードにして男子トイレに貼りました。

ズボンを下ろさずに用を足すことを、早いうちから教えるといいと思います。

生理用ナプキンを堂々と机の上に置いてるいる女の子を見て、先生があわててポーチを入れてカバンにしまうように教えた例もあります。女の子にしてみれば、ティッシュを手近なところにおく感覚だったのかもしれません。でもやはり他の人には違和感があります。

こうしたことは、なかなか話題にしづらいですよね。だからこそ、子どもには具体的に伝えてほしいと思います。

 

発達障害の「困った」、道具であっさり解決しましょう。
次回も素敵な道具たちをご紹介します。

発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集)小学館

 

トビラコ店主

元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。

tobiraco春のイベントのお知らせ

筑波大学附属大塚特別支援学校の先生が考えたコミュニケーションゲーム

「えらんで きめて  つたえるゲーム すきなのどっち?」のセミナー&ワークショップを開催します。

講師はゲーム開発者の佐藤義竹先生(筑波大学附属大塚特別支援学校教諭)

詳細とお申し込みはこちらから。

 

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