道具で発達を応援するネットのお店tobiraco(トビラコ)の店主が、発達障害の子の「困り感」を解決する道具をご紹介します。第2回はストレスを解消するための道具です。
目次
行事が多くストレスにさらされる2学期
園や学校の行事が多い2学期は、発達凸凹の子にとってストレスが最も高まる季節です。
行事の練習は、慣れないことだらけ。時間割も変更されます。新しい場面や予定変更が苦手な子にとっては、これだけでも苦痛。心身ともにヘトヘトになったり、不安定になったりしてしまいます。
学芸会でたった一言のセリフを覚えるのに、家で何十回も練習につきあわされたという話をしてくれたのは、自閉症男子のお母さん。何十回も練習してしまうのは、失敗を極度に恐れるという特性からきているのでしょうね。
これからの季節、冬の寒さに体がうまく対応できない発達凸凹の子は、身体的なストレスを受け、風邪も引きやすくなります。
家庭でぜひケアをしてあげてください。
アロマオイルケアで、緊張をほぐしてあげましょう
強いストレスにさらされる原因のひとつは、自律神経のスイッチがうまく働かないことにあります
ちょっと専門的な話になりますが、自律神経は交感神経系と副交感神経系があり、シーソーのようにバランスをとりながら体のさまざまな働きを調節しています。
交感神経系の働きが優位になると、心拍数が上がったり気管支が拡張したりします。体は活動モードになるわけです。副交感神経系が優位になるとその逆。体は休憩モードに入ります。
この切り替えがうまくいかないと、交感神経優位の活動モードにスイッチが入りっぱなしになったり、休憩モードのまま活動モードにスイッチが入らなくなったりします。
活動モードに入りっぱなしの過集中になってしまうと、疲労困憊したり、睡眠が十分にとれなくなったりします。
ストレスを軽減するために自律神経にアプローチするのはひとつの方法です。
手軽にできる方法として、おすすめしたいのがアロマオイルによるケアです。療育の一環として、ある放課後等デイサービスで実践しているアロマオイルの活用法をいくつかご紹介します。
お湯を張った洗面器やバケツに、精油を数滴たらして、手浴や足浴。緊張の強い子や手足が冷たい子は、これだけですぐにホッとすることができます。15分くらいが目安です。
その放課後等デイサービスの子どもたちは、バケツで足浴しながら本を読んだり、教科書を読んだりしていましたね。足浴しながら宿題をしている子もいました。
精油(エッセンシャルオイル)は、100%芳香植物から抽出したものです。芳香植物の香りは鼻腔粘膜から脳にダイレクトに伝わり自律神経に働きかけます。芳香植物の種類によって神経をおだやかにしたり、元気づけたりします。
▲ブレンド精油 おだやか(オレンジ・ラベンダー・ティートリー)5ml 2,500円ブレンド精油 きりり(レモン・ユーカリ・ペパーミント) 5ml 2,500円(ともに税別)発売元・問い合わせ先 (株)tobiraco https://tobiraco.co.jp
tobiracoが昨年発売した「療育アロマ」は、発達障害の子のケアもしているアロマセラピスト兼薬剤師が、放課後等デイサービスの子どもたちに聞いて作った香りです。
香りは2種類。ひとつはオレンジ系のあたたかかくやや甘い香りの「おだやか」。緊張を緩和します。
もうひとつはペパーミント系のスッキリとした香りの「きりり」。ぼんやりしたときや気持ちを切り替えたいときに。子どもだけではなく、ママにもおすすめです。
触覚過敏の子にもおすすめできる、オイルでマッサージ
アロマの使い方で特におすすめしたいのは、マッサージです。
マッサージといってもそれほど本格的にしなくても、マッサージオイルを塗ってあげるだけでもいいのです。スキンシップすることで子どもがリラックスできます。
触覚過敏の子でもオイルを媒介すると、触れられることに抵抗がなくなるようです。アロマオイルがブレンドされたマッサージオイルなら、香りで親子ともに癒されます。
tobiracoの「アロママッサージオイル おだやか」には、「5歳の自閉症の子がマッサージして、と自分からリクエストします」というメールをいただきます。リクエストが4歳の子の場合もあります。
イライラを自分で解消できる「お守りグッズ」を携帯する
ストレスは、最終的には自分で解消できるようになることが望ましいですよね。イライラした感情が爆発しそうな時に、お守りのように携帯してほしいのが「ストレスリリーサー」です。
▲<ストレスリリーサー> サイズ:直径50×45㎜ 素材 中身:ファインレボ カバー:アクリル59%、レーヨン35%、ポリウレタン6% ※ファインレボとは樹脂とオイルの複合素材。柔らかな弾力性をもちマットレスなどに使われています。 発売元・問い合わせ先 アイシン精機株式会社 http://www.aisin-asleep.com 価格:480円(税別)
これは、発達障害の子のために作られたものではありません。大人用ですが、イライラして他の子を叩くなど手が出てしまう子にと、筑波大学附属大塚特別支援学校の安部博志先生が紹介してくれました。
使うタイミングを子どもに教えておくといいそうです。
まずイライラをレベル1~4の段階に分けて、自分のイライラはどの段階なのかを自覚できるようにします。イライラ度がどこに達したら、ストレスリリーサーが必要になるのかを子どもが自覚できるようにしておくわけです。
以下が、イライラの度合いを示したバロメーターです。
レベル1 平気、平気。
レベル2 ちょっとイライラ 不安 → 深呼吸、水を飲む
レベル3 かなりイライラ → ストレスリリーサーを持ってその場を離れる
レベル4 もうダメ、助けて → 先生やママに助けを求める
放課後等デイサービスの支援員さんからすすめられたのは、手遊びが多くて落ち着かない子のための「感覚刺激グッズ」です。「ストレス解消fidgetグッズ」として大手通販サイトなどで販売されています。
▲<ストレス解消fidgetグッズ>サイズ: W10×D3.5cm 、ボール直径:1.8cm 素材 BTA繊維で編みこまれた網とガラス セット内容:8個セット(ランダムで発送) 参考価格 1,598円
発売元 FATHER.SON 大手通販サイトで購入できます。
筆箱をバタバタを開けたり、閉めたりするなどして常に手を動かしていないと不安という子には、手に刺激を与えるものがいいそうです。ちょうど筆箱に入るサイズなので、イライラした時、手遊びしたくなった時に、筆箱から出して目立たないように触ることができます。
ストレスリリーサーや感覚刺激グッズは、子どもによって好みの感触が違います。ムッチリ系(先ほどご紹介した「ストレスリリーサー」は、これ)、イガイガ系(「ストレス解消fidgetグッズ」がこれに近いです)、フナフナ系、モフモフ系など種類はいろいろ。「感覚刺激グッズ」で検索してみてください。
本人に自覚がない場合もあるストレス疲労
発達凸凹の子のストレスは、案外意識されていないように思います。外から見ただけではわからないし、本人に疲労の自覚がない場合もあるからです。
帰宅していきなり寝込んだわが子を見て初めてストレスがたまっていたことに家族が気づく場合もあります。そうなる前にストレスも疲労も解消できるようにしておきましょう。
ここにいくつかご紹介したいくつかをお役に立てていただければ、うれしいです。
発達障害の「困った」、道具であっさり解決しましょう。
次回も素敵な道具たちをご紹介します。
『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集)小学館
トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。
写真/tobiraco