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「長くつ下のピッピ」とは?
題名はあまりにも有名な『長くつ下のピッピ』ですが、本作がどの国で、どのような作者によって書かれたものかご存じですか? まずは、『長くつ下のピッピ』の作者や背景を簡単にご紹介していきます。
スウェーデン発の子ども向け小説
『長くつ下のピッピ』は、1945年にスウェーデンで発表された児童書です。作者は、アストリッド・リンドグレーン。スウェーデンを代表する児童文学作家で、児童書の編集者でもありました。
原題 :Pippi Långstrump
作者 :アストリッド・アンナ・エミリア・リンドグレーン(Astrid Anna Emilia Lindgren)
国 :スウェーデン
発表年:1945年
おすすめの年齢:小学校中学年〜
娘のために考えた即興ストーリーが元に
『長くつ下のピッピ』は、元々は作者のアストリッド・リンドグレーンが娘のために即興で考えたお話でした。毎晩、ピッピの活躍を話しているうちに、小説一冊分にもおよぶ物語ができたのだとか。
はじめのうちは多くの出版社から書籍化を断られていたものの、出版されるとたちまち大きな人気を博しました。現在では70以上もの言語に訳され、100以上の国々で出版。1億3000万部以上売れたといわれています。
作者のアストリッド・リンドグレーンってどんな人?
リンドグレーンは、1907年生まれ。幼少期をスウェーデン南東部に位置するヴィンメルビューの牧場で過ごし、この頃の記憶が本作に大きく反映されていると考えられています。
本作出版後も、『やかまし村の子どもたち』『さわぎや通りのロッタ』等、数々の人気作を執筆。『長くつ下のピッピ』をはじめとしたこれらの作品は映像化もされ、媒体を超えて世界中から愛されつづけています。
86歳まで創作を続け、2002年に94歳で死去すると、スウェーデン政府はその功績を記念して「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」を設立しました。
物語のあらすじ
では、『長くつ下のピッピ』はどのようなお話なのでしょうか。あらすじを押さえておきましょう。子どもにも説明しやすい簡潔バージョンのあらすじもあわせてお伝えします。
あらすじ
ある日、町外れの古い家「ごたごた荘」に、一風変わった女の子が引っ越してきました。赤毛で顔はそばかすだらけ、長いくつ下を履いた9歳のその少女は、ピッピ・ナガクツシタ。猿と馬を連れているものの、両親はなく、一人で暮らすといいます。
お母さんを幼少期に亡くし、船乗りだったお父さんも海で遭難して行方不明のまま。孤独ではありますが、馬を持ち上げられるほど力持ちで誰よりも強く、大人の常識にとらわれないピッピは、持ち前の自由奔放さと想像力の豊かさで、天真爛漫に振る舞い、暮らします。
お隣に住むトミーとアンニカは、やりたい放題のピッピに振り回されながらも、そんなピッピが大好きです。一緒に「もの発見家」になったり、サーカスに行ったり、遠足に行ったり……。周りのみんなをアッと驚かせるピッピを中心とした、ゆかいなエピソードが詰まった物語です。
あらすじを簡単にまとめると…
優等生きょうだいのトミーとアンニカの隣の家に、ピッピという9歳の女の子が引っ越してきました。両親がいなくても、馬を持ち上げられるほど力持ちなピッピは、誰よりも強い女の子です。予想できない行動で、周りのみんなをアッと驚かせるピッピ。そんな天真爛漫なピッピによるゆかいな日常の物語です。
主な登場人物
では、本作にはどのようなキャラクターが登場するのでしょうか。ここでは、『長くつ下のピッピ』の主な登場人物をご紹介します。
ピッピ
赤毛に顔中そばかすだらけで、長い靴下を履いている9歳の女の子。力持ちで天真爛漫。本名は「ピッピロッタ・タベルシナジナ・カーテンアケタ・ヤマノハッカ・エフライムノムスメ・ナガクツシタ」。
ニルソン氏
ピッピとともに暮らす猿。行方不明のお父さんからプレゼントとしてピッピに贈られた。
馬
ピッピとともに暮らす馬。
トミー
アンニカの兄。ごたごた荘の隣の家に住む子ども。
アンニカ
トミーの妹。ごたごた荘の隣の家に住む子ども。
ピッピの魅力は? 周囲の価値観にとらわれない前向きさに注目
作品の発表以降、世界中の子どもたちに長年読み継がれる『長くつ下のピッピ』。子どもたちを惹きつける本作の魅力とは?
何にも縛られないピッピの姿に、読者もひとつ自由に
『長くつ下のピッピ』の見どころは、なんといっても主人公・ピッピの常識外れの自由さ。猿や馬と住んだり、床いっぱいに絵を描いたり……。
親がいないという孤独な境遇にありながらも、悲観的にはならず、ピッピは誰よりも楽しそうに自由を謳歌します。何事にも前向きなピッピにとっては、親の不在も「ぐあいのいいこと」なのです。だって、あそんでいる最中に「もう寝なさい」といわれることもないから。
奔放でポジティブなピッピの姿勢は、優等生のトミーとアンニカ同様、物語を眺めている読者までをも、ひとつ自由にしてくれます。子どもが夢見るような「自由」を実現するピッピの痛快さこそが、本作の魅力ではないでしょうか。
作者が伝えたかったことは
赤毛で顔中そばかすだらけのピッピは、親がいないという境遇だけでなく、見た目においても周囲にからかわれがち。
けれども、ピッピにとっては、周りと違うことはなんの問題でもありません。人と違うことは、ピッピにとっては自らの個性であり魅力なのです。
本作の作者は、周囲の価値観や常識にとらわれない前向きな心を、ピッピを通して子どもたちに見せたかったのかもしれません。
「長くつ下のピッピ」を読むなら? おすすめ書籍3選
『長くつ下のピッピ』は、現在、さまざまな出版社からあらゆる形で発刊されています。ここには本作のおすすめ書籍を集めてみました。
こんにちは、長くつ下のピッピ(徳間書店)
スウェーデンでは60年もの間、愛され続けているオリジナル版の絵本。スウェーデンでは「ピッピといえばこの挿絵!」といわれるほど親しまれている、イングリッド・ヴァン・ニイマンによるイラストが目をひきます。ピッピの楽しい物語を、ユニークな挿絵とともに味わえる一冊。
新訳 長くつ下のピッピ (角川つばさ文庫)
可愛くポップなイラストが特徴的な新訳版。現代風の言い回しに加えて、88点もの挿絵付きが親しみやすい! 小説を読むのに不慣れなお子さんにもおすすめです。
長くつ下のピッピ(リンドグレーン・コレクション)
リンドグレーン作品に注力していることで、リンドグレーンのファンやピッピファンから絶大な信頼を寄せられている岩波書店版。挿絵もイングリッド・ヴァン・ニイマンによるものを採用しており、原作の雰囲気をより忠実に味わえます。ピッピシリーズをはじめて読む大人におすすめ。
【続編】ピッピシリーズもチェック!
ピッピの物語は、のちに挿絵付きで絵本として出版されたほか、長編続編が2作書かれました。この章では『長くつ下のピッピ』の続編2作を簡単にご紹介。
ピッピ 船に乗る
「ごたごた荘」に住んでいるピッピは、トミーやアンニカと毎日をゆかいに過ごしていました。しかしながら、ある日、行方不明になっていたはずの父・エフライム船長が帰ってきて……。ピッピとの別れを予感するトミーとアンニカ。3人は離れ離れになってしまうのでしょうか?
ピッピ 南の島へ
はしかの病み上がりで衰弱してしまったトミーとアンニカ。ピッピは、そんな2人の転地療養を思いつきます。猿や馬もいっしょに連れて、父・エフライム船長の船で大旅行に! 南の島を舞台に、子どもたちの冒険を描いた一作。
前向きなピッピの姿に勇気がもらえる物語
今回は『長くつ下のピッピ』のあらすじや魅力を中心にお伝えしてきました。
どんな境遇や状況も、楽しく愉快なものに変えてしまうピッピ。前向きなピッピの姿にちょっぴり勇気をもらえるのは、子どもだけではありません。ぜひ、親子の読書タイムに取り入れてみては。
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文・構成/羽吹理美