【料理家・SHIORI】が行きついた育児と仕事のおいしい両立論「私自身、実はめちゃくちゃポンコツ…だから夫に頼るし完璧を求めない」

PR

料理家・フードコーディネーターとして、テレビや雑誌、広告などで活躍しているSHIORIさんは、3歳の男の子を育てるママ。自身初となるビジネス書「おいしい仕事術」(小学館)を発売を受け、ママやパパが気になる育児と仕事の両立について、お話を伺いました。

どんなに高い段取り力があっても打ちのめされる。それが育児

子どもが生まれて、理想と現実を思い知りました。料理で言うと、「このひと手間がおいしさに繋がるからぜひやって欲しい」というこだわりがありつつも、小さい子どもがいるママ目線だと、「その時間はかけられないよね」。そのせめぎ合いというか、葛藤が出てくるようになって、レシピにも柔軟さが加わった気がしますね。

とにかく時間がなくて、日々時間との闘いということを自分でも痛烈に感じているので、同じおいしさになるなら、ここはショートカットしようみたいな視点は母親になってから加わりましたね。

子どもが生まれる前から、効率よく仕事をする段取り力はある方だったんですが、そこにより磨きがかかった感じ。でも、その段取り力を持っても通用しないのが子育て。どんなに段取りよく予定を組んでも予定通りには進まない。どんなに完璧に準備をしても打ちのめされるから、ある程度、いい意味での諦めも出てきたんです。

80点取れれば上出来! 完璧は求めなくてOK

あれもこれもやる時間はないので、完璧は求めない、目指さないということが大事。育児は手が抜けない。家事も仕事もどれもちゃんとやらなきゃいけない!って思うことってあると思うんです。でも、育児だけでもものすごいエネルギーを要する。そこに別のこと(仕事や家事、SNSでの発信などどんなことでも)をしようと思うことは、すごいことだと思うんです。でも、そのチャレンジも諦めて欲しくない。そのためには80点くらいの合格点を目指すといいと思います。

というのも、私自身がめちゃくちゃポンコツなんですよ。料理をやってるってだけで、それはそれはしっかりした生活を送ってると思われがち。でも、そんなことは全然ありません(笑)。料理はすごく好きで仕事にするほどですけど、掃除や洗濯や片付けは本当にできなくて、漏れがありながらも自分でやったり、夫の力を借りたり、週一回くらいの頻度で、家事代行を取り入れたりしています。

できないことに後ろめたさとか苦手意識を感じながら頑張るより、好きなこと、やりたいことに向かうエネルギーの方が持続可能だと思うんですよね。だから、できないこととか、苦手なことは人に頼れることなら助けを求めて全然OK!

人にはできないことがあって当たり前。全部自分でできたら、一人で生きていけるじゃないですか?できないことや苦手なことがあるから、支え合って助け合って生きていく。それが社会の成り立ち。そう考えると、出来ないことがあるのは当たり前で、それが人としてのデフォルト。完璧にやるんじゃなくて、完璧じゃない自分を受け入れて、人に頼ること、助けを求めることのハードルを自分で下げることが大事なんじゃないかと思います。

あとは「やらないことを決める」ということも大事。「もう食器洗いはしない」と決めて食洗機を買う。「掃除機はかけない」と決めてルンバを導入する。初期投資は必要だけど、それは浪費じゃなくて投資なんですよね。それで空いた時間を子どもと遊ぶ時間にするとか、そこで仕事をするとか、そういうことの積み重ねの時間ってバカにできないと思うんです。

息子は生まれつきの難聴。仕事が続けられないかもしれないという葛藤

インスタライブの動画撮影は夫が担当

うちは息子が生まれつきの難聴で、仕事が続けられないかもってなった時、すごく落ち込んだんです。私にとって仕事は生きがいだったので、自分の居場所がなくなるかもしれないということが漠然と不安であり、悲しみでした。

そんな時に、コロナのステイホームがあって、今だからこそ、自分が培ってきた料理の経験、知識をみんなにシェアしたら役に立てるかもしれないという思いで、インスタライブを繰り返しやっていたんです。誰かの役に立ちたいという気持ちでやっていたんですけど、結果、みなさんからいただく声に私自身が救われたんです。それで、自分の居場所はまだここにあるんだと感じました。人って何かを求められたり、役割があったりすると、生きがいややりがいを見出すことができる。その瞬間に人生が輝くという気づきを得て。だからこそ、人を助けることも大事だけど、人に頼ることって新たに誰かに仕事を生むんですよね。それが生きがいとかやりがいにつながる可能性だってあるから、もっと助けてもらってもいいと思う。

人って頼り頼られの関係が実は一番心地がいいんですよね。頼ってばかりだと悪いなって思ったりするんだけど、たまに頼ってもらうと自分も役立ててるていう承認欲求が満たされるみたいな感覚を感じることができるんです。

現代人の中でも特に日本人は、自然といろんなことを背負い込んでいる人が多いと思います。ワンオペ育児っていうのもその一つですよね。知らず知らずのうちに背負い込んで、どんどん辛くなってしまう。だから、SNSでもなんでも、日ごろから社会と繋がっておくことで、「辛い」とか「助けて」とか、困った時に声が挙げやすくなると思うんですよね。勇気を持って一歩繋がってみる。その一歩がすごく大事だと思うんです。

スマホ一台で書いた初のビジネス書。ママやパパにも読んで欲しい

昔の私は「仕事のやりがい=幸せ」と考えていたし、大きな目標を立てて、それを実現するためにがむしゃらに突っ走る。その渦中にいる時も幸せだし、達成しても幸せ、そういう価値観の中で生きていました。そんな中、息子が生まれて難聴がわかり、コロナもあって制限される生活を送る中で、考えがだんだん変わってきました。家族がいて一緒に食卓を囲むことができる。もうそれだけで幸せ! そう考えられるようになったのは、母親になってからの私の一番の変化。

そんな私がスマホのメモ機能を使ってこの本を書きました。私はパソコンが使えないので、レシピや考え方、普段から自分の気づきをなんでもスマホにメモしているんです。

書いたメモはまとめることもあれば、そのまま流れていくこともあるんですけど、スマホはいつも持ち歩いているので気軽に仕事ができていいですよね。どこに書いてあるのかわからなくなっても、検索機能を使ってキーワード検索することもできるので。ちょこちょこ書いていたんですけど、本を書くときは夫に協力してもらって、一人でホテルに宿泊して集中して書きました。日常の中で書いていると、もうちょっと書きたいというところでお迎えの時間がきてしまったりもするので。私と同じように子育て中のママやパパにも読んで欲しい内容になっているので、ぜひ、読んでみてくださいね。

おいしい仕事術

レシピ本累計400万冊超えの実績を持つ料理家として、生徒数1万人のオンライン料理教室『L’atelier de SHIORI Online』の経営者として、3歳の息子の母として、様々な顔を持つSHIORIだからこその考え方や、仕事のノウハウが詰まった一冊。

お話を伺ったのは…

料理家・フードコーディネーター

SHIORI(しおり)さん

1984年8月16日生まれ。2007年8月「作ってあげたい彼ごはん」(宝島社)を出版し、それ以来、たくさんのレシピ本を出版。ヨーロッパやアジアでの短期料理留学もし、テレビ、広告、企業コラボなど、さまざまなシーンでパワフルに活躍している。世界30ヶ国から約1万人が参加するオンライン料理教室『L’atelier de SHIORI online』は、継続率97%超え。プライベートでは2011年に結婚し、2019年に長男を出産。

SHIORI ホームページ

 

撮影/廣江雅美、Daiki Nakagawa(レッスン風景) 取材・文/本間綾

編集部おすすめ

関連記事