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幼稚園の発表会ではみんなと違う動きを一人でする息子
−お子さんがHSCだと感じたきっかけはなんでしたか?
息子が幼稚園に行っていた時、発表会や運動会のダンスとかでは、みんなが同じ動きをしますよね。そんな中、息子はクルクル回って一人で違う動きをしていたり、並んでいる列から一人はみ出していたり、とにかく集団行動が苦手。みんながひとつのことをして遊んでいる時も、部屋の隅のほうで一人で遊んでいるところも多く、少し気にはなっていました。
でも、小学校に入学すると、以前から気になっていた息子の行動がより顕著になってきて、姉に相談したんです。姉は自分がHSPだと言っていたのですが、息子のことを「間違いなくHSCだと思う」と断言していました。私自身もHSCについて調べるようになり、息子はもちろん、私自身も娘もHSPとHSCなのでは?と思うようになりました。
そして、近所の発達専門のクリニックの療育に通い始め、専門家の方に診ていただくようになりました。
- −療育では実際にどのようなことをするのですか?
ボルダリングや縄跳びなど、体を動かす運動療法や、先生とお話やゲームをする心理療法など、子どもからしたらちょっとした習い事のような感覚だと思うので、楽しんで通っていました。
−実際にやってみて効果を感じることはできましたか?
正直なところ、私は目に見えて変化を感じた!というわけではなかったのですが、通うたびに先生や心理士さんに「どんどんよくなっていますね」と声をかけていただいていたし、息子は年齢が上がるにつれて学校への行き渋りも減って来て、療育を卒業することができました。
1年生の7月ごろから突然始まった娘の“行き渋り”
−小学2年生の娘さんはどうですか?
娘は今も療育に通っているのですが、毎日学校に行き渋っています。入学して1学期の間は普通に登校していたのですが、突然「学校に行きたくない」という日がポツポツとあって、だんだん毎日そう言うようになってきたんです。それまで私は会社員だったので、子ども達と一緒に家を出て出社する日々でしたが、仕事を辞めたことで「今日はママが家にいるから休んでも大丈夫」と感じ取るところもあったのかもしれません。
行き渋りが始まって約1年。ほとんど毎日のように私か夫が一緒に学校に行き、送るだけで帰れる日はほとんどありません。特に月曜日は100%の確率で教室には入れず、保健室に行くことがほとんど。他の曜日は教室には行けても、「ママも一緒にいて」と言われるので、娘の横にいすを置いてもらい、一緒に授業を受けています。
−Mさんはお仕事をされているんですよね?
そうなんです。毎朝9時出社のような仕事は難しいので、自分で仕事時間を決めることができる自営業の仕事に最近転職したばかりです。それにしても、毎朝付き添うのは大変で……。イライラして、学校で声を荒げてしまったこともあります。娘の友だちに「〇〇ちゃんのお母さんはなんでいつも学校にいるの?」と聞かれることや、「この人は?」という感じでジロジロ見られることも多々。時間ぎりぎりまで娘に付き合い、急いで仕事に行くため、お昼抜きなんてこともしょっちゅうあります。
−学校に行きたくないという娘さんを無理に行かせるのも、付き合うのも、どちらにしても大変ですね。
なんでもかんでも娘の言う通りにするというのもどうかな?と思うんです。これはただのワガママなのでは?と思うこともあるし。私が子どもの頃は「ちょっとくらい体調が悪くても学校には行きなさい」と言われることもあったし、そことのギャップも感じています。少し前は「週に何回は行かないと」「何時には行ったほうが」みたいなボーダーラインみたいなものを設けていたんですが、それがあるとたちまち苦しくなってしまって……。最近では「そんなにつらいなら無理しなくていいんじゃない?」というスタンスにしています。そうい続けることは意外と難しいんですけどね。
個人面談で先生から聞いた息子と娘が別人のようだった!
−Mさんが一緒にいない時、息子さんと娘さんはどんな様子なんですか?
息子の面談では『クラスの人気者でいつもみんなを笑わせています』と言われたり、娘の面談では『すごくしっかりしていて、困っているお友達のことをいつも助けてくれます』と言われたり、「それってうちの子どものことですか?」と聞き返したくなるくらいです。家ではワガママ放題と言った感じでも外ではがんばっているんだなぁと感じましたね。
–ママが見ている顔と外向きの顔は違うということなんですね。
家と外ではキャラクターを使い分けているようですね。そもそもHSCというのは、一番の特徴が敏感ということなんですが、息子も娘も人の気持ちにもとても敏感なタイプ。空気を読むので、友達とトラブルになったり、ケンカをしたりすることはありません。
−HSCならでは!と思われる行動は他にありますか?
息子は髪を洗ったあとにタオルで髪を拭く時や爪切りをする時に「痛い」と言うことがあります。普通は「痛い」と感じないような何気ないことでも、感覚が敏感な息子は気になってしまうことがあります。娘は聴覚が敏感なので、ガヤガヤしている中では集中することができず、落ち着かない様子。あとは、例えば学校で先生が誰かのことを注意したとして、自分に言われたわけではないけど、言われたように感じてしまって落ち込む、なんてこともあります。
子どもの気持ちを認める。それは難しいけど大切なこと
−大変なことも多いと思いますが、子ども達と接する中で感じていることはありますか?
学校に行きたくないとか、集団行動が苦手とか、いつまで続くんだろうというモヤモヤ感は正直あります。
でも、子ども達に対して「これは普通じゃない」「なんかおかしい」みたいな考え方でいると、前に進めないような気がして。「学校に行きたくないと思うんだ」「へぇ、これを痛いって感じるんだ」「そんなことが気になるんだ」という風に、思っていることや言っていることをまずは認めること。小学生の6年間1日も学校に行けないわけではないし、一歩進んで二歩下がる日もあるけど、少しずつは成長していると考えることを大切にしています。
そして、子ども達が大人になった時、「小学生のあの時期、めちゃめちゃ大変だったんだよ~」と笑って言えたらいいなと思っています。
HSPやHSCは身近なものになってきているかも
自分と子どもがHSP、HSCであるMさんのお話はいかがでしたか? 「もしかしたらうちの子も?」と思った方もいるのではないでしょうか? 自分の子どもがそうでなくても、Mさんのような方がいると知ることは、子育てをする中で大切なことと言えます。不登校の子どもが年々増加していると言われている昨今、HSPやHSCはより身近なものになってきているのかもしれません。
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文/本間綾