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学校のなかでことばの支援を受けられる「きこえとことばの教室」ってどんなところ?
公立小・中学校に設置されている「きこえとことばの教室」をご存じでしょうか。
「難聴・言語指導教室」「言語障害通級指導教室」などのことで、現在の設置校の数は2300校程度です(参照:全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会ホームページ )。
民間の児童発達支援事業所や放課後等デイサービス、塾、私設の相談支援施設が「ことばの教室」を名乗ることもありますが、公立の小中学校に併設されている「ことばの教室」の場合は公立施設なので、対象の児童生徒は自己負担なく利用できます。
「きこえとことばの教室」は「通級指導教室」、通称「通級」のひとつ
発達に関する困りごとを抱えている児童生徒が普段の授業を通常の学級で受けながら、別教室で困りごとに応じた個別の指導を受けることを、「通級による指導」といいます。その指導を受ける場所が、通級指導教室です。通級指導は通常学級(普通級)に在籍しているお子さんを対象としています。
発達に関する障害や困りごとを持つお子さんの、そのほかの選択肢には「特別支援学校」「特別支援学級」があり、それらに在籍しながら通級指導教室をさらに併用することは基本的にはできません。
年々需要が高まっている通級指導教室
文部科学省の「令和2年度 通級による指導実施状況調査結果(概要)」によれば、全国の国公私立の小・中・高等学校(※1)で164,697名の児童生徒が通級による指導を受けています。人数は毎年増加傾向であり、通級指導教室の需要が高まっていることが分かります。
(出典)文部科学省 令和2年度 通級による指導実施状況調査結果(概要)
(※1)平成29年度までと平成30年度以降で調査形式が変更されたため、高等学校の人数も含まれている。
相談できるのは、難聴(きこえ)・構音(発音)・吃音(きつおん)・ことばの発達・読み書き学習・場面かんもく
通級には、情緒や弱視などいくつかの種類があり、そのなかのひとつが「難聴・言語指導教室」、すなわち「きこえとことばの教室」です。
「きこえとことばの教室」の対象となるお悩みには以下のようなものが考えられます。
・きこえのお悩みや難聴に由来することばのお悩み
・サ行やカ行が言えないなどの構音障害
・ことばがつっかえるお悩みである吃音(きつおん)
・助詞が上手く使えない・ことばでの説明が苦手などのことばの発達のお悩み
・発達性読み書き障害や算数障害などの学習障害
・特定の場所・場面でお喋りができなくなる場面かんもく症
ただし、どのようなお悩みに対応可能かどうかは教室ごとにそれぞれであることも多いため、実際に通う教室に個別に問い合わせる必要があります。
どのくらい通うの?指導内容は?指導を担当しているのは?
指導時間は学校によりますが、週に1回45分〜60分程度が目安です。
指導の期間は必要に応じて決められ、年度や学期ごとの申請に基づく更新制が取られていることが多いです。
指導を担当している先生の多くは「きこえとことばの教室」に配属された学校教員の先生で、言語聴覚士ではありません。(※教員と言語聴覚士、両方の資格をお持ちの先生もいます。)担当教員との1対1~先生1人に対して生徒が2人などで指導が行われます。そのほか、グループ活動や制作・発表活動などに取り組むこともあります。
通っている学校に設置されていない場合には、近隣の学校のことばの教室に通います
「きこえとことばの教室」は、在籍級の授業を抜けて通います。すべての学校に設置されているわけではなく、数校に1校の割合で設置されていることが多いです。
自分が通う学校に「きこえとことばの教室」が無い場合には、保護者の送迎によって近隣学校に設置されている「きこえとことばの教室」に通います。
在籍学級・家庭・きこえとことばの教室は、相互の連携が大切
昨今の教育現場の人手不足、言語聴覚士など教員以外の専門職の配置不足、受け入れ枠が限られている、支援に繋がれない児童生徒がまだまだたくさん居るなどの課題はあれど、学校教育の制度のなかでことば・コミュニケーションの支援を行える「通級」の仕組みはとても素晴らしいものです。
利用を検討している保護者の方は、就学前相談や個別面談など、気になったタイミングでいつでも学校に問い合わせてみましょう。それから、在籍学級の担任の先生と「きこえとことばの教室」、ご家庭と「きこえとことばの教室」の連携がとても大切です。お子さんを中心に、どのような取り組み・関わりが必要なのか手を一緒に取り合って考えていきましょう。