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指定された本を読むから感想文が書きにくい?
――読書感想文の宿題が出ると、原稿用紙を前に途方に暮れる小学生は多いものです。親が何かしてあげたくても、どう関わったらいいのかも難しいですね。
そうですね。実は読書感想文があることで、読書自体が嫌いになることは多いんです。学校によっては好きな本を読んでいい、というところもありますが、「課題図書の中から選んで書きましょう」と決められている場合はますます、そうなりますね。本をおもしろいと感じられず憂鬱になり、その憂鬱な気持ちで感想文を書かないといけないのは相当気が重いはずです。
たとえ話ですけれど、どんなにラーメンが好きでも、月曜日は味噌ラーメン、火曜日は塩ラーメンって「課題」として決まっていたら、楽しくないじゃないですか。「今日はどこの店のどのラーメンを食べようかな」って思うからワクワクするんです。
課題図書は大人が見た「健やかな子ども像」を描くものが多い傾向
――たしかにそうです。それに、課題図書ってひとつの傾向があるような気がします。教訓的であったり、「命を大事にしましょう」というような方向性であったり。
課題図書は「子どもが書きやすいから」とか「子どもにとっておもしろいから」という視点よりも、大人から見た「健やかな子ども像」を押しつけたと思うようなものが多いかもしれません。しかも、「思ったまま書きなさい」と言うのだけれど、ホンネで「つまらない本でした」と書いたらきっとNGでしょう。先生に受けそうなことを考えて書かないといけない、という無言のプレッシャーみたいなものも感じると思います。
ちなみに、「読書感想文を書きなさい」という宿題は日本だけで、海外にはないようです。海外ではレポートかエッセイですね。「私はこの本を読みました。作者のプロフィールはこうで、あらすじはこう。特に印象的だったのはここです」というような、感想というよりも事実を書く部分が大半、というような提出物が多いです。
「読書感想文おたすけシート」を活用して作文を書く
――そのように形が決まっているなら書けそうですが、現実問題として夏休みの宿題としての読書感想文は、どう書いたらいいのでしょうか……。
そうですね。学校の感想文は書き方のヒントを教えてくれることも少ないですね。では、私がヒントを出しましょう。「読書感想文おたすけシート」がこれです。この欄を順番に埋めていき、書き上がったら原稿用紙を前にして、シートの文章を順番につなげていけば、400字詰め原稿用紙2~3枚は書けるのではないでしょうか。
4段落目は、全部書き込まなくてもいいですよ。最初の5つの項目の中から書きやすいと思ったことを2~3項目選び、最後の「作者はこの本を通して何が伝えたかったか」をしっかり書けば、感想文としてまとまります。
読書感想文の型を覚えてしまえば楽になる
――これは本当に助かりますね!
このおたすけシートを読書感想文の「型」として使ってもらえればいいのではないかと思います。子どもはまず「型」を知らないと、真っ白な原稿用紙を埋めることができません。逆に「型」がわかっていれば、そこに自分の考えをあてはめていけばいいのです。
ただ、この全部をすべてすらすらと書けないかもしれません。お子さんが言葉が見つからず困っているようなら、パパママが質問をしてあげましょう。たとえばあらすじに詰まってしまったら、
「そのあとは主人公はどうしたの?」
「最後はどんなふうに決着したの?」
などと聞いてあげると、書きやすくなります。あまりにあらすじが長くなるようなら、
「要するに、こうでこうで、こうなのかな?」
などと、少しまとめてあげてもいいでしょう。
子どもは、大人が想像するほど深い読み方ができないので、イライラしたり、「そんな簡単にしか考えられないの?」などと言いたくなったりするかもしれません。が、そこはぐっとこらえてください。「そう思ったんだね」といったん肯定してあげます。「こう書きなさい」などと命令しないで、また少し質問して、心の中にある思いを引き出してあげましょう。
たとえば、3段落目の【特にどの場面が心に残っているか?】で、「風が吹き荒れるシーンがすごかった」とだけ答えたとします。
「風が吹き荒れたんだね。そうしたら主人公のおうちはどうなっちゃったの?」
「街はどんなふうになったの?」
などとまた質問をすると、具体的なシーンがどんどん出てきます。
子どもは語彙も少ないので、表現がどうしても紋切り型になりがちです。私が子どもの頃、本の感想文で、「動物の毛皮をとるっていうのがおもしろかった」と書いたんです。単純に毛皮をとる描写にはじめて触れて印象に残った、という意味で「おもしろかった」と書いたのだと思います。ところが母親は「毛皮をはぐことをおもしろがっている、これは恐ろしいことだ」と感じたのでしょうね。「私はあなたをそんなふうに育てた覚えはありません」と言われてしまいました。子どもながらに割り切れない思いでした。
こういう場合は子ども自身の言葉をすくい上げ、「おもしろいってどういうこと? びっくりしたのかな?」などと、「おもしろい」のもっと詳しい感情をひもといてあげられるといいですね。
読みやすい本を選んだほうが感想文が書きやすい。高学年なら自分を主人公にあてはめて書いても
高学年になったら、4段落目の4つめの項目【もし自分がこの本の登場人物だったら?】のところを深掘りするのもよいでしょう。10歳以上になると、本を読むときに「自分だったらどうするだろう」と考えながら読むことができます。そんな「自分だったら」の思いをしっかり書いた感想文は、なかなか読み応えがありますよ。
――最初から課題図書が決まっている場合はそれに準じますが、もし自由に本を選んでいいのであれば、どんな本を読むと感想文が書きやすいでしょうか。
まずは本人の興味をそそられるもの。好きなことが描かれているものは興味深く、結果的に感想文も書きやすいでしょう。たとえばサッカーが好きなら、サッカー選手の書いた本などもよいでしょう。食べることが好きなら、いろいろな料理が出てくる本は楽しめるのではないでしょうか。旅したことがある場所について書かれている本、自分が住んでいる地域について書いてある本なども、自分に引き寄せやすく、読みやすく書きやすいと思います。
平沼先生がおすすめする本を挙げてくださいました。もしお子さんが興味をひかれるようなら、夏休みに読んでみてくださいね。